猫になった女とクズ男の恋攻防

五織心十

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めくるめく共同生活(♡)

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 カレンが猫になって数日が経った。人間に戻る兆候は、今のところない。
 カレンは順調に猫ライフを送っていた。

 
「レ~ン~~ただいま~~!」
 
 グレンのその声に、カレンは一目散に玄関へと向かう。そして床に寝そべり腹を見せ、目一杯撫でてとアピールする。
 このポーズはグレンが留守の間に、鏡を見て習得したものだ。その甲斐あってか、グレンはとろけた笑みを浮かべ、たくさん撫でてくれた。お出迎えは成功したようだ。
 その後は抱き上げてくれて、一緒に部屋の中へ。風呂の時間以外はここぞとばかりにべったり引っ付いて過ごすのが、日課になりつつある今日この頃。
 グレンもそんなカレン(猫)に、ご満悦のようだった。

 カレンが思うに、どうやらグレンは仕事が終わったら真っ直ぐ帰宅しているようだ。女の子と遊んでいる形跡は見られない。なので顏も腫れていない。
 今だけは、間違いなく自分がグレンを独り占めしている。その事実が嬉し過ぎて、目の前の大好きな顏を思いっきり舐め回す。

「ちょ、レン~~」

 グレンが本気で拒まないのをいいことに、カレンの欲求はどんどんエスカレートしていった。
 このままカレン(猫)がいないとダメな身体になるまで、とことん愛嬌を振りまいて、骨抜きにさせるのが今のカレンの目標である。
(メロメロにさせてやるんだから見てなさい…!)
 人間に戻ることはすっかり二の次になっていた。



「そういえば、レンって、オスだったりする?」

 唐突に、グレンがカレン(猫)のお尻を覗いて来た。それに驚いたカレンは、ほぼ無意識にしっぽでグレンの顔を攻撃してしまう。
 「いたっ」と呻き声を上げたグレンは、顔を擦りながらカレン(猫)を見やる。

「ごめん、もしかしてメスだったか? 怒った?」

 猫であるカレンにひどく申し訳なさそうな顔をするグレン。その表情を見て、カレンはカルチャーショックを受けた。
(女泣かせで反省を知らないあの男が、動物相手にはこんな顏をするの…!?)
 初めて知る一面だった。

「もしオスだったら嫌だなって、ちょっと思っちゃったんだよ…。だって、カレンの飼い猫だろ? こんな風に四六時中、カレンとベッタリなのか~と思ったらちょっと…」

 グレンは拗ねたような、これまたカレンの見たことのない表情をする。
 カレンは頭を抱えたくなった。さっきから心臓が痛くて仕方がない。
 自惚れていいのだろうか。それが俗に言う、ヤキモチだって。

 とりあえず、カレン(猫)はグレンの胸に飛び付くことにした。


 
 


 
 深夜、カレンは微かな物音で目が覚めた。
 隣を見ればそこにいるはずのグレンがいない。どこに行ったのだろうか。
 ベッドを降り、物音のする方へと向かう。
 暗闇の中、何かが擦れる音と、苦しそうな声が聞こえた。

「ぁ……はっ……ぁ……ふっ……ぅ……」

 カレンは目を疑った。だけど猫である今のカレンは、夜目が効いている。見間違えるはずがなかった。

 グレンは、二人掛けのソファに座って、___自慰行為をしていた。

 カレンはその場から動くことができなくなってしまった。グレンは夢中になっていて、こちらの気配に気づいていない。
 カレンはグレンの手元に釘付けになった。

 ズボンを寛げ露わになった男根を掴み、ひたすら上下にしごく姿。時折零れる苦しそうな声や息が、快楽に酔い痴れていることを裏付ける。
 刺激が強すぎる光景なのに、なぜか目が反らせない。瞬きすることすらカレンは忘れていた。

 ピストン運動を繰り返すその場所を直立不動で凝視していると、男根と手のひらの間に、布のようなナニかが挟まれているのが分かった。どうやらそのナニかを自身のソレに擦りつけて、快感を貪っているようだ。
 布のようなナニかは、ここからだと見えにくい。でも、カレンはなぜかそれに既視感を覚えた。
(あれってどこかで見たような……?)

「っぁ…カレンっ……」

 突然名前を呼ばれて、カレンは全身の毛が逆立った。危うく物音を立てるところだった。
 見ていることがバレたのかと思ったが、そんなわけがなかった。だって今のカレンは猫なのだから。

 聞き間違えたのかもしれない。そう聞こえただけで、本当は違う女の子の名前を呼んでいたり___
(それはそれで複雑すぎる……)
 この場合、見つかっておくべきだったのかどうか、カレンには正解が分からなかった。
 グレンは未だこちらに気付いておらず、一生懸命自身のソレを慰めていた。

「っ……はっ…ぁっ……カレン……カレンっ……」

 グレンが何度も何度も同じ単語を繰り返す。それはまごうことなきカレンの名だった。
 カレンはわけが分からなくなった。

 グレンは自慰行為をしながら、ひたすらにカレンを呼んでいる。カレンと呼ぶ声には熱がこもっていて、手の動きはさらに速さが増す。明らかに性的興奮が高まっている様子。

(グレンは私のことが好きなの…?)
 まさか同姓同名の他のカレンを呼んでいるだなんて、考えたくない。グレンを興奮させている相手が、自分だったらいいと思ってしまう。
 
 その時、布のようなナニかの切れ端が、カレンの目にばっちりと映る。
 それは、非常に見覚えのあるハンカチだった。

(あ、あ、あ、あれ、私のハンカチ…!?)

 凝った刺繍で縁取られたそのハンカチを見間違うわけがなかった。だってそれはカレンが自分で編んだ、この世にたった一つしかない代物だったからだ。
 随分前に失くしたと思い込んでいたハンカチが、まさかグレンの元にあったとは。それもあろうことか自慰行為のオカズにされていたとは、夢にも思わない。

 これはどう考えても、グレンが呼ぶカレンは、自分以外ありえない状況だった。
 
(ねぇ、私が好きなの?? それとも猫の世話で女の子と遊べてないから溜まってたわけ? ただの欲求不満解消に利用されてる…? ___最悪そうだったとしても、グレンは私で抜けるのね? オカズになる=私のことを女として見ているってことよね? なのに女の私より、私のハンカチの方がいいってこと…!?)

 情報過多により、カレンの怒りの矛先はグレンに向いた。

「ニャァァァァ!!!」
「うわっ!!?」

 カレン(猫)はグレンの顏目がけて思いっきり猫パンチをお見舞いしてやった。
 突然の乱入者に当然驚いたグレンはそのまま横に倒れ、ソファの上で仰向けになる。
 カレンはグレンの胸の上に立ち、見つめ(睨み)合う。
 しばらく沈黙が続いた。
 
「なぁ……そんな目で見ないでくれよ……」

 グレンは泣き言のようにそう呟いた。
 
「いつになったらお前のご主人様は帰って来るんだよ…」

 声に、恋しさが混じって聞こえた。

「カレン…会いたい…」

 空耳じゃない。グレンは確かに、そう言った。
 
「どうしたら俺を、男として見てくれる?」

 一匹の猫に自慰行為を邪魔され、中途半端に勃った性器を丸出しに、挙句情けないことを言う男がここにいる。
 本当に、どうしようもない男だった。

(だけど、そんな男を愛してしまったのが、私)

 完全に脱力してしまったグレンの上に乗ったまま、カレンは目の前の唇をペロッと舐めた。
 すると___不思議なことに、次の瞬間には、カレンは人間の姿に戻っていた。

「は、え、カレン!? え!?」

 驚愕するグレン。カレンも戻れたことに驚いていたが、今はそれよりも重要なことがあった。

「意気地なし」

 ソファの上に倒れているグレン。その上に馬乗りする形でカレンがいる。カレンは猫から人間に戻ったわけだから、当然服を着ていなかった。
 グレンからすれば、何の前触れもなく突然裸のカレンが自分を押し倒している、という状況。パニックにならない方が可笑しい。
 
 傍から見れば、性器丸出し男に跨る裸女の図。
 だけどそんなことはお構いなしに、カレンはグレンに迫った。

「グレンがその辺の女やただのハンカチで満足できる男だったとは、私知らなかったわ」

 カレンは腰をくねらせた。

「本物はいらないの…?」

 大胆にも、カレンはグレンの顏の前に陰部を突き出し、襞を自ら掻き分け、ナカが見えるように促す。
 するとヒクつく秘部からはとろりと蜜が垂れ落ち、グレンの胸を伝った。

「い、いるっ!!」
「んにぁあぁっ」

 グレンはまだ何が起こっているのか理解が追いついていないはず。だけど本能のままに、目の前に差し出された据え膳に食らいつく。
 グレンの熱い舌が、カレンのナカを縦横無尽に舐め回り、熱い息がダイレクトにかかる。その度に蜜がどんどん溢れて来て、じゅるじゅると音を立て始める。

 カレンは完全にグレンの頭の上に乗っていて、その頭をカレンの柔らかい太ももで挟み込む。
 カレンは腰をくねらせながら、陰部を押し付けるように動いた。

「ねぇ、ここ、ここもぉ」
「んんっ」
「ああぁぁぁ」
 
 上に隠された秘芽も弄って欲しいとねだれば、グレンはそれに応えてくれた。濡れそぼった唇で挟まれ、甘噛み、そして舌を巧みに使い、カレンの快感をどんどん引き出す。

「グレンっ、私、イっちゃ、イッちゃうぅ…!」
「イッて、カレン、俺ので、イッて…!」

 器用に舌で剥かれた敏感な秘芽を押し潰され、カレンはあっという間にイッてしまった。


 
「……グレンの舌、なんかやだ」
「え…」
「よすぎていや…」

 カレンは後方に下がった。グレンのちょうど、腰辺りまで。そして固さを保っている熱い肉棒に滑らかなお尻を擦り付ける。

「あ、カレン…!」
「今まで何人の女の子をイかせてきたの? ムカつくんだけど」

 グレンのソレを、カレンのナカにゆっくりと沈めていく。

「動いちゃだめだからね…? 動いたら、許さないから…」
「そんなっ…カレン…!」

 カレンはグレンの上で必死に腰を揺らした。いわゆる騎乗位である。
 何度も何度も、熱い棒をカレンのナカに沈めては抜く。さっき散々見せられていた、グレンの自慰行為に負けないぐらいのスピードで、激しくナカを擦る。
 抜き差しに夢中になっていたカレンは気付いていない。グレンから見たカレンが、どれほど淫乱な光景だったかを。
 上下に動く度に揺れる乳房、いやらしい腰つき、吸い付くようなナカの収縮。全てが卑猥だった。
 これで動くなとは、グレンからすればもう拷問にしか思えない。

「だめっ、ん、動いたらっ…」
「ごめんっ…俺、我慢できないっ…!」

 下からグレンが突きつける。カレンが下に降りたタイミングで突いて来たため、さらに奥まで肉棒が突き刺さる。
 
「あっ、あっ、動いた、ら、許さな…って、イッたぁぁ」

 カレンの体がビクビクと痙攣する。二度目の絶頂だった。
 
 力が抜けたカレンはそのままグレンの胸へと倒れ込む。二人のお腹の辺りは互いの液でぐちゃぐちゃだ。

「ひどい…だめっていった…」
「ごめん、カレン、ごめん」

 人間の姿で、今までで一番近い距離に互いの顏がある。グレンはカレンの額にいくつものキスを降らせた。

「謝ればいいと思ってる…?」
「……ごめん」
「え、あっ!」

 今度はグレンがカレンの上に乗った。だけどカレンの体はグレンに背中を向けている。
 グレンの胸板が、カレンの背中とぴったり重なる。熱い吐息が、カレンの耳にかかった。

「カレンが、欲しい」
「あ、あぁぁん!」

 カレンは後ろから、ガンガンに突かれた。さっきとはまた違った箇所に肉棒が擦れて、気持ちいいが止まらない。
 グレンのカタチを知ったカレンのナカは、肉棒を離すまいと吸い付きを強める。

「くっ…カレン、締めすぎっ…!」
「そんなの、知らなっ…あ!」

 カレンは四つん這いになっていたはずなのに、いつの間にか腰だけを突き出す形で突っ伏していた。快楽に呑まれて、腕に力が入らなくなっていた。

「カレン、こっち」
「んっ!」

 そんなカレンを、グレンは抱き起こす。そして後ろから、深いキスを唇に落とす。
 それは、ぐちゃぐちゃになった二人の初めてのキスだった。

「はは……夢みたいだ…」

 グレンは自嘲するかのように笑った。___かと思えば、またカレンを快楽の海へと引き摺り込んでいく。

「あっ、んっ、や、ぁ!」

 カレンのうなじに舌が這う。汗を舐め取るような動きに気を取られれば、今度は揺れる乳房を両手で揉まれ、時折尖った先を刺激される。
 しこり立ったそこを指先でぎゅううっと摘ままれたら、甲高い声を上げずにはいられない。すり潰すような指の動きと連動して、腰の動きが再開する。

 カレンは今、自分が人間だったか猫だったか、分からなくなっていた。ただ本能のままに互いを求め、交わう行為はまるで獣のよう。
 
「カレン、イって…!」
「ん、んにゃぁぁあ♡♡♡」

 二人は夜が明けるまで快楽を貪り合った。互いの想いを伝える暇もなく、ただひたすらに体を重ね合った。

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