心の隙間に入り込むホラー短編集

Wataru

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身に覚えのないカード請求が、毎晩届く

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 最初は、三千円だった。

 カード会社のアプリに表示された請求履歴。

 知らない決済サービス名。

(……何これ)

 でも金額も小さいし、どこかで使ったのを忘れているのかもしれない。

 そう思って、そのままにした。



 翌月。

 今度は八千円。

 同じ名前の請求。

 記憶にない。

 履歴を確認する。

 通販も使っていないし、サブスク登録もしていない。

 不安になってカード会社に電話する。

「不正利用の可能性がありますので、カードを停止しますね」

 そう言われ、新しいカードが送られてきた。

 これで終わると思った。



 だが翌月。

 新しいカードにも、同じ請求が来た。

 背筋が冷える。

 カード番号は変わっている。

 なのに、同じ名前。

 同じ金額。

 カード会社に再び電話する。

「カード情報は漏れていません」

「加盟店側の問題でもありません」

「お客様のアカウント決済では?」

 言われて、気づく。

 その請求は、カード番号ではなく、
 私のメールアドレスで登録された
 アカウント決済だった。



 慌ててログインを試みる。

 心当たりのないサービス。

 パスワード再発行。

 メールが届く。

 ログイン成功。

 そこに表示されたアカウント名。

 

 利用者:家族

 

 登録住所は、私の部屋。

 利用端末履歴。

 全部、自宅のWi-Fi。

 深夜の時間帯。

 私が寝ている間の記録。



 震える手で、利用履歴を開く。

 購入履歴。

 動画配信。

 ゲーム課金。

 電子書籍。

 毎日、何かが利用されている。

 毎晩。

 私が寝ている時間に。



 その瞬間。

 部屋の奥で、

 床がきしむ音がした。



 スマホに、新しい通知が届く。

 

『決済が完了しました』

 

 利用時間。

 今、この瞬間。



 寝室のドアの向こうで、

 誰かが、

 ゆっくり歩く音がした。
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