存在しているのに、私だけ会えない同僚

Wataru

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存在しているのに、私だけ会えない同僚

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 最初に名前を聞いたのは、先月だった。

「来週から田中さん入るから」

 課長が朝礼で言った。

 私は何気なく頷いた。

 だが、その日から一度も会っていない。



「昨日、田中さんと一緒だったよね?」

 同僚に言われ、首をかしげる。

「誰?」

「え?」

 逆に驚かれる。

「昨日、遅番一緒だったじゃん」

 勤務表を見る。

 確かに名前がある。

 私の隣に。

 だが、覚えがない。



 それから何度も同じことが起きた。

「田中さんに伝えといて」

「さっき一緒にいたよね?」

「二人で残業だったでしょ?」

 全部、覚えがない。

 なのに勤務記録には、
 毎回、同じ名前が並んでいる。



 ある日、席替えがあった。

「田中さん、ここね」

 課長が言い、私の隣の席を指す。

 そこには誰も座っていない。

 椅子も、机も、空いている。

 でも周りは普通に会話している。

「田中さん、よろしく」

「また同じ班ですね」

 空席に向かって。



 仕事中、何度か気配を感じた。

 誰かが横に立つ気配。

 視線。

 でも、振り向いても誰もいない。



 帰り際、机を片付けていると、
 自分のデスクにメモが置かれていた。

 見覚えのない字。

 

『どうして』

 

 それだけ。

 気味が悪くて、丸めて捨てようとした。

 裏返す。

 

『どうして、あなただけ見えないんですか?』

 

 背後で、椅子が引かれる音がした。

 すぐ隣で。

 誰かが立ち上がる気配。

 でも。

 振り向いても、
 そこには誰もいなかった。
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