27 / 28
それでも、確かめたかった
しおりを挟む
戦いが終わってから、
しばらくが過ぎていた。
街には日常が戻っている。
市場の喧騒。
子どもたちの笑い声。
酒場で騒ぐ兵士たち。
守った世界だった。
城では、
聖は英雄として扱われていた。
広い部屋。
上等な服。
誰もが頭を下げる。
だが。
窓の外を見ながら、
聖は小さく息を吐く。
胸の奥に、
ぽっかり穴が空いたような感覚だけが残っていた。
戦いは終わった。
仲間も生きている。
それで、
十分なはずなのに。
「浮かない顔してんな」
背後から声がした。
振り向くと、
光一が立っていた。
「祝いの席、抜けてきた」
壁にもたれながら言う。
「英雄様がいないって、
皆探してたぞ」
聖は苦笑する。
「騒がれるの、苦手なんだよ」
沈黙。
光一は、短く聞く。
「で?」
聖は窓の外を見る。
しばらくして、言った。
「ずっと考えてた」
「何を」
少し間。
「現世に、
あのまま残ってたら」
声が落ちる。
「どうなってたのかって」
図書室の光。
並んで歩いた帰り道。
思い出すのは、
戦場じゃない時間ばかりだった。
光一は黙る。
そして言った。
「行ってこいよ」
聖は振り向く。
光一は続ける。
「ただし」
少し間。
「戻れなくても、文句言うなよ」
空気が変わる。
「女神の力で行けても、
戻れる保証なんかねぇだろ」
戦いのために呼ばれた存在。
用が終われば、
繋がりは消えてもおかしくない。
光一は肩をすくめる。
「世界、選べってことだろ」
沈黙。
聖は、ゆっくり息を吐いた。
この世界には、
仲間がいる。
守った街がある。
自分の居場所も、ある。
それでも。
胸の奥に残る引っかかりだけは、
消えない。
「……それでも」
小さく呟く。
「一回、確かめたい」
光一は、小さく笑う。
「やっとお前らしい顔したな」
そして言う。
「こっちは任せとけ」
静かな声だった。
聖は、ゆっくり頷く。
⸻
その夜。
静かな部屋で目を閉じる。
「……女神」
白い光が広がる。
女神が現れる。
『願いは』
聖は迷わなかった。
「現世に戻りたい」
沈黙。
女神は言う。
『戻れない可能性が高い』
短い宣告だった。
それでも。
聖は、頷く。
「……構わない」
光が、世界を包み込んだ。
しばらくが過ぎていた。
街には日常が戻っている。
市場の喧騒。
子どもたちの笑い声。
酒場で騒ぐ兵士たち。
守った世界だった。
城では、
聖は英雄として扱われていた。
広い部屋。
上等な服。
誰もが頭を下げる。
だが。
窓の外を見ながら、
聖は小さく息を吐く。
胸の奥に、
ぽっかり穴が空いたような感覚だけが残っていた。
戦いは終わった。
仲間も生きている。
それで、
十分なはずなのに。
「浮かない顔してんな」
背後から声がした。
振り向くと、
光一が立っていた。
「祝いの席、抜けてきた」
壁にもたれながら言う。
「英雄様がいないって、
皆探してたぞ」
聖は苦笑する。
「騒がれるの、苦手なんだよ」
沈黙。
光一は、短く聞く。
「で?」
聖は窓の外を見る。
しばらくして、言った。
「ずっと考えてた」
「何を」
少し間。
「現世に、
あのまま残ってたら」
声が落ちる。
「どうなってたのかって」
図書室の光。
並んで歩いた帰り道。
思い出すのは、
戦場じゃない時間ばかりだった。
光一は黙る。
そして言った。
「行ってこいよ」
聖は振り向く。
光一は続ける。
「ただし」
少し間。
「戻れなくても、文句言うなよ」
空気が変わる。
「女神の力で行けても、
戻れる保証なんかねぇだろ」
戦いのために呼ばれた存在。
用が終われば、
繋がりは消えてもおかしくない。
光一は肩をすくめる。
「世界、選べってことだろ」
沈黙。
聖は、ゆっくり息を吐いた。
この世界には、
仲間がいる。
守った街がある。
自分の居場所も、ある。
それでも。
胸の奥に残る引っかかりだけは、
消えない。
「……それでも」
小さく呟く。
「一回、確かめたい」
光一は、小さく笑う。
「やっとお前らしい顔したな」
そして言う。
「こっちは任せとけ」
静かな声だった。
聖は、ゆっくり頷く。
⸻
その夜。
静かな部屋で目を閉じる。
「……女神」
白い光が広がる。
女神が現れる。
『願いは』
聖は迷わなかった。
「現世に戻りたい」
沈黙。
女神は言う。
『戻れない可能性が高い』
短い宣告だった。
それでも。
聖は、頷く。
「……構わない」
光が、世界を包み込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる