166 / 1,771
第八話 炎の化身
炎の化身
しおりを挟むバシッ! シャキン! ボォォォォッ!
その後も戦いは続き、少しずつサラマンダーを追い詰めていった。
「くらえっ、牛魔壊!」
バシィッ!
「グエェェェッ!」
ナガレの必殺技がサラマンダーの後ろ足を直撃、衝撃で炎が掻き消えた!
「ゲーッ! ゲゲーッ!」
まるでカエルのように呻いたサラマンダー。すると体中から炎が消えてしまい、ただの黒いトカゲになってしまった。
「チャンスだ! ジョー、やっちまえ!」
タネツの声に合わせて、ジョーは高く跳躍。ダガーに真っ赤なオーラを纏わせる。狙いはふらつくサラマンダーの首筋だ!
「……ネックスラッシュ!」
「グエッ!?」
しかしサラマンダーはジョーに気づいて、突然上を向いた。しかしジョーの体は止まらない。
バシュッッッ……シャキィン!
「グッ!? ……グェェェェェェェーーーーッ!」
ジョーが打ち出した極大の『飛ぶ斬撃』は、サラマンダーの右目に炸裂した! 血しぶきが舞い、あまりの激痛にサラマンダーが苦しげに咆哮する。
「やったなジョー!」
「……ちぃっ、まだだ。仕留めそこなった……!」
しかしジョーは舌打ちする。今の攻撃で完全に首を切断するつもりだったが、急に上を向かれたせいで狙えなかったようだ。
とはいえ片目を潰されてはたまらず悶絶するサラマンダー。これは勝負あったか……と、ここで突然体勢を立て直す!
「ガァァァッ! ガァッ! ガァッ! グォォォォォォーーーーッ!」
耳をつん裂くような大咆哮を上げ、ギラついた目でナガレたちを睨みつける。潰れた右目からドクドク血を流していようと、その眼差しは闘志に燃えている……いや、比喩的な話では無い。消えたはずの紫炎が再び体中から噴き出す……。
「まずいっ、サラマンダーの奴、完全に怒ったぞ……!」
ジョーが苦しげに呟いた。あのジョーがこんなに緊張するとは、ナガレも怖くなってくる。
「ガアアォォォォーーーーッ!」
シューーッ……ボォォォォッ!
一際大きく咆哮すると、なんとサラマンダーの手足首だけでなく、体中から紫の炎が勢いよく吹き出した!
「うわーっ!」
「あちっ⁉︎」
「きゃあぁぁぁ!」
凄まじい熱風に冒険者たちは吹き飛ばされる。悲鳴を上げながらゴロゴロ転がるナガレを他所に受け身を取るジョー。
「ガァァァーーッ!」
「く……!」
そこにいたのは、体中を紫色の業火に包まれたサラマンダーだった。唯一燃えていない眼球で、こちらへ殺気を放っている。
「な……なんて奴だ! まるで炎の塊が意思を持って動いてるみたいだ……!」
「あれが正しく『炎の化身』って訳か……クソッ、見たくもねえ姿だぜチキショウ」
絶句するナガレと、苦しげな表情で舌打ちするタネツ。サラマンダーは「グググ……」と唸りながら、じりじりこちらへ近づいてくる。
「あ、熱ッ⁉︎ どうするんだ、こんな熱気を振りまかれちゃ、近づいただけでヤケドしちゃうぞ!」
ナガレの言う通り、少し離れたところでも炎の熱気が届いてくる。これではナガレたちは近づくのがやっと、攻撃なんてしたら燃え移ってしまう。
「ナガレ! タネツさん! 二人は尻尾を狙うんだ。あそこは火がついていない! だが尻尾は硬く、大したダメージにはならない……」
そう言ってジョーは、サラマンダーの後ろでゆらゆら揺れている、垂れ下がった尻尾を指差した。大きな頭でよく見えなかったが、よく見ると尻尾だけは、黒い素肌が見えている。あそこならなんとか近づけるかもしれない……。
「……あ、待ったタネツさん。そもそも近づかなかったらいいんだ!」
「なるほどその手があったぜ! それじゃあ……」
ナガレとタネツは笑顔で振り向くが……そこにいるのはヒズマとケンガである。
「「… … … … … …」」
そしてすぐタネツは、苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。
「なっ、何よ! タネツなんてそんなカオして! ふんっ、どうせ私は決定打無しのザコ女ですよ……」
ヒズマは顔を真っ赤にして、プイッとそっぽを向いてしまった。……こんな状況で完全にヘソを曲げたようだ。一方ケンガは慌ててナガレに詰め寄った。
「ナガレ、こんなの無理だ! 早く逃げよう! みんなでバラバラに逃げれば、きっと無事で帰れる!」
「……俺様に任せろみたいなこと、言ってなかったか?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ! このまま戦っても勝ち目なんてないだろ、な!」
ケンガは必死でナガレを説得しようとする。もはや見せかけのプライドすら捨ててしまうほど逃げ腰のようだ。
1
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
俺だけ“使えないスキル”を大量に入手できる世界
小林一咲
ファンタジー
戦う気なし。出世欲なし。
あるのは「まぁいっか」とゴミスキルだけ。
過労死した社畜ゲーマー・晴日 條(はるひ しょう)は、異世界でとんでもないユニークスキルを授かる。
――使えないスキルしか出ないガチャ。
誰も欲しがらない。
単体では意味不明。
説明文を読んだだけで溜め息が出る。
だが、條は集める。
強くなりたいからじゃない。
ゴミを眺めるのが、ちょっと楽しいから。
逃げ回るうちに勘違いされ、過剰に評価され、なぜか世界は救われていく。
これは――
「役に立たなかった人生」を否定しない物語。
ゴミスキル万歳。
俺は今日も、何もしない。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる