統合失調症の俺が確かに世界を救った話

成葉弐なる

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第1章 救世篇

5 内閣総理大臣と寒冷化理論

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『!? なんだ一体……!?』

 熊新造総理は困惑した様子で声を上げる。

『初めまして熊総理。小日向拓也と言います。いま貴方の頭に直接語りかけています』
『頭に直接……!? 一体どういうことかな』

 熊総理は未だ混乱しているようだ。
 俺が亜翠さん達に『うーん熊総理にも通じたみたい?』と言うと、『じゃあ私達が説明するから私達も熊総理との会話に参加できるようにして』と亜翠さんが言ったのでそうすることにした。

『熊総理、いまから声優さんたちもこの会話に加わります』
『声優さん達が……?』

 熊総理は考え込むように疑問を返す。
 そうしてすぐに亜翠さん達が話し始めた。

『初めまして熊総理。声優をやっている亜翠みずきと申します』
『あぁ……亜翠さんと言えば、TVで一度だけ見たことがあるよ。熊新造です』
『そうなんですね! あぁTVって言えばあの番組かな。恥ずかしいな……』

 亜翠さんがそう言って照れているようだ。

『それはともかく、これはドッキリかなにかかい?』

 と熊総理が質問してきた。
 俺は苦笑いしながら、現実で「そうだったなら俺の部屋にもマイクやスピーカーが仕掛けられているはずなんですけどね……」と呟く。
 だがそんなことは恐らくないだろう。これはただの幻聴なのだから。

『熊総理、実は私達も最初そう思ってたんですけど、どうもドッキリではないみたいです』

 亜翠さんが熊総理の質問にそう答える。

『そうなのかい? じゃあなにか特別なことに巻き込まれたってわけかい?』
『それが私達にもよく分かってないんですけど、革命のレヴォルディオンっていうネット小説みたいになるんじゃないかって私達は話してます』

 亜翠さんが見解を述べる。
 え? 革命のレヴォルディオンみたいになるってどういうことだろう。

『革命のレヴォルディオン……?』

 と熊総理は全く知らないようだ。当然だろう。
 革命のレヴォルディオンは大手ネット小説サイトで総合ポイントたった18ポイントで僅か5000pv程度の底辺小説だ。知らないのも無理はない。

『えーっと熊総理、私も声優の香月伊緒奈って言います』
『あぁ……複数人いるのか……さっきの小日向拓也くんだったかな? 彼は……?』
『彼はその革命のレヴォルディオンの著者なんですけど……』

 と亜翠さんが困った様子だ。
 それを見てか香月さんが助け舟を出す。

『革命のレヴォルディオンっていうのはロボットSF小説なんですけど、2051年が舞台なんです。それでとても予言めいている作品でもあるんですね』

 香月さんが説明を始める。

『まず第一に、2020年代に地球の気候環境が温暖化ではなく寒冷化に向かうってのが一つ。そして第二に同じく2020年代に【超震災】と呼ばれる南海トラフ相模トラフ連動巨大地震みたいなのが起きるっていうのが二つ目。この二つ以外にも細かな予言的な要素が散りばめられてるSF作品になってるんです』

 香月さんが説明を終える。香月さん、良くレヴォルディオン読み込んでるなぁ。さすがは声優さんだ。台本を読むのに慣れているからネット小説を読むなんて造作もないことなんだろう。

『地球寒冷化だって……? そんなことが起きるわけ無いだろう。地球は温暖化しているって良く聞くじゃないか』
『それはそうなんですけど、たっくんどういうことなの?』

 香月さんが俺に聞く。
 そうか、レヴォルディオンでは説明ばかりになるとなんだからまだ深く理由を説明していなかったっけ。

『それは……みんなは東王工業大学の山丸茂樹教授って知ってるかな?』

 返事がない。誰も知らないようだ。

『俺の地球寒冷化理論は、その山丸茂樹教授の理論に似ているものなんだけど……。まずよく言われるのがCO2温暖化原因説ね、これは間違っているっていうのが山丸教授の言い分なんだ』
『え? そうなの?』と香月さん。
『ほう……?』と熊総理が物珍しそうにする。
『それで、じゃあ一体何が正しいんだ? って考えた時に出てくるのが雲なんだ』
『雲?』

 亜翠さんが俺に聞く。

『うん。この雲の量こそが地球の気候環境を決めているってことらしい。つまり雲が増えることによって地球が白くなって、太陽光を反射しやすくなることで地球が寒冷化するってわけ』
『でもどうやって雲が増えるの?』

 香月さんが俺に問う。

『いい質問だね。山丸教授はそれをスベンスマルク効果で説明できるって言ってるね』
『すべんすまるく効果??』
『うん。スベンスマルク効果とは、宇宙空間から飛来する銀河宇宙線が地球の雲の形成を誘起しているという仮説なんだ。つまり山丸教授はこの銀河宇宙線量が多いことを指摘してるんだ』
『そうなの?』と香月さんが再び問う。
『うん。観測ではそうらしいね。それでここからは俺の持論で科学的には解明されてないことなんだけど……』

 俺はそう前置きした上で説明を続ける。

『銀河宇宙線の増加は地震や火山活動を活発化させるって思ってるんだ。無論、これもよく言われていることではあるんだよ。でも科学的には解明されているわけではないことなんだ。とにかく地震や火山活動が活発化するとどうなると思う?』
『どうなるって……噴火したり地層がずれたり?』

 香月さんは現象を説明する。

『うん。そうなんだ。そして大規模な噴火が起きた場合には、この火山灰が成層圏にまで到達する。火山灰は大まかに言えば白いから地球の反射率を上げて寒冷化に寄与する。でもこれだけじゃないんだ。そこまで高く舞い上がらなかった火山灰は海に降り注ぐよね?』
『うん……まぁそうじゃないかな?』

 香月さんは必死に理解しようとしている。

『これは海洋にとっては様々なミネラルを含むから栄養として作用するんだ。つまりどうなるか? って言うと海洋植物プランクトンが爆発的に大増殖するわけ。これは別に地表火山だけにとどまらない。海底火山が噴火した場合も、海洋には爆発的に栄養となるミネラルが供給されることになって、やはり海洋植物プランクトンが大増殖する』
『えっと……海洋植物プランクトンは光合成するから……だからCO2である二酸化炭素を消費するってこと?』

 亜翠さんが分析して俺に聞く。

『はい。でもそれだけじゃないんです。光合成しているから酸素も生成しますよね。そして光合成活動の副産物として海には余った熱も捨てられる。こうすることで海洋植物プランクトンが大増殖した該当海域では、上昇気流が生じるんだ。これによって高層大気には酸素が大量に供給されることになる。同時に、海水温の上昇によって発生した大量の水蒸気がプランクトン由来の微細な有機物を含んだ状態で、酸素と共に高層大気に供給されることになります』
『へぇ……それたっくん自分で考えたの?』

 亜翠さんが感心するように言う。

『まぁそれなりに、色々調べながらですけど……ともかく、これによって二酸化炭素は消費され、酸素が増えて高層大気に供給されることから放射で寒冷化に寄与することになります。それと先程一緒に高層大気に供給された微細な有機物は雲の核となることで、雲が増加してスベンスマルク効果のように地球の反射率を上昇させて寒冷化に寄与するってわけです。
 こういうダブル、トリプルの寒冷化効果が地球に飛来する銀河宇宙線量の増加で起きてくるってわけ……だから地球は特に高層大気から順に寒冷化するってのが俺の寒冷化理論です』
『へー凄い! 確かに聞いた感じ、すっごい寒冷化しそう。たっくん一人でそこまで考えたの凄いね!』

 香月さんが俺を褒めちぎる。
 しかし、熊総理がツッコミを入れる。

『しかし、地表付近では温暖化しているのだろう? 科学的観測データはあるのかい?』
『はい。地表付近では海洋に捨てられた熱の影響や、高層大気に供給された水蒸気の影響で温暖化が起きます。それと観測データというには心許ないですが、高層大気は寒冷化しているデータがよく知られていますし、近年海洋植物プランクトンの大発生であるブルームと呼ばれる花が咲いたかのような海洋植物プランクトンの大発生が多数報告されています。また現時点の衛星によるデータではこの植物プランクトンによる海洋の色の変化は観測できないので、近年ではそれを観測可能にする新たな衛星の打ち上げ計画なんかもあります。それくらい海洋の植物プランクトンの気候への影響は注目されているんです』
『ふむ……そうか……君の言っていることが事実ならば、どうなると?』
『劇的な寒冷化が起きます。特に寒冷化した高層大気は極で降りてきますから、極渦きょくかの動きに支配される形で寒冷化が起きると言えるでしょう。またこの極渦の強化によって偏西風は大きく蛇行することが予測できます。高速道路でスピードを出しすぎると正常に曲がりきれずに蛇行してしまうことがこの現象の良い例ですね』

 俺は冷静に持論を説明した。

『それと第二にこれと多少関連してもいるんですけど、それらの説明は避けます。ただ最初に指摘したように銀河宇宙線量の増加は大規模地震を誘発しやすくなると考えています。これが第二の南海トラフ相模トラフ超連動地震が起きるという予測の理由です』

 そして第二の予言についても説明し終えると、熊総理が見解を述べる。

『にわかには信じ難いが……しかし今こうして念話が出来ていることを考えると、君の理論は合っていて、これが救世に関わる事象かもしれないということだね……?』
『はい。もしかしたら……ですが』
『ふむ……亜翠さん。僕の携帯電話番号を教えるからそれに掛けて貰うことはできるかい? 僕も今起きているのが統合失調症による幻聴なのかそうでないのかをはっきりさせたい』

 熊新造総理はそう言って、これが真実なのかを確かめたいようだった。

『はい。出来るかどうか分かりませんが、やってみます』

 亜翠さんが答え、熊総理が携帯電話番号を教える。
 そうしてすぐに、亜翠さんは『では掛けますね』と宣言して、熊総理の携帯電話に電話を掛け始めた。

「通じないんだろうなぁ」

 と漠然とした感想を現実で述べる俺。
 長々と説明はしてみたものの俺の地球寒冷化理論だって、妄想の産物である可能性が多々あるのだ。
 本当に事実かどうかなんてわかりっこないし、俺に掛けた時同様に電話は通じないのではないか?
 俺はそう思っていた。

『たっくん。熊総理、電話に出たよ』

 亜翠さんがそう報告する。

『どうやら、ドッキリではないようだね……? 電話のほうで状況を詳しく説明してもらえるかい?』

 と熊総理が真剣な声色で言った。
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