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7 身体強化と防錆薬
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「私の大剣術は防御ではなく、あくまでも攻撃に重点を置いたものです」
錬金術をしながらの座学から始まった大剣術講義は第一声がそれだった。
「はぁ、なるほど。前線で戦い味方を守る盾持ちや斧術とは違うのですね」
「そうです。だからこそ一閃の重さにこそ全てを置き、一撃で何もかもを薙ぎ払う為に、元素による身体強化が重要なのです」
「元素による身体強化ですか?」
まるで聞いたことがなかった。
「エルミナーゼ。いきなり身体強化の勉強なんて初心者のセーヌさんに大丈夫なのですか?」
ミサオさんが心配そうに声を上げる。
「教え子として優秀なのであれば効率の良い教え方となるはずです」
エルミナーゼさんはそう言うだけで、ミサオさんは尚も心配そうな顔をしていた。
「私は魔法もまるで使えません。ですから元素による身体強化と言われても……」
「魔法が全く使えないのですか?」
「はい。元素感知と元素操作のスキルは持っているのですが……」
そうエルミナーゼさんに言いながら、私はミサオさんに教えてもらった手順通りに、試験管から草原スライムの分泌液を大量に大鍋に移している。
「ちなみにスキルランクを伺っても?」
エルミナーゼさんが私に問う。
「Sランクです」
私の答えを聞いて、ミサオさんが驚いたように「Sランクですか!?」と声を上げた。
よほどびっくりしたのか、唖然とした口元を隠す為に右手が添えられている。
「はい、Sランクですが……なにか問題がありますでしょうか?」
もしかしたら、余り高いランクだと魔法の習得が困難を極めるとかそういう面倒事があるのかもしれない。私は心配になって二人の様子を見た。
「いえ……別に問題があるというわけでは……」
ミサオさんが苦笑しながら口元から手を退けた。
「問題はありません。なるほど、セーヌさんをミサオが認めた理由が分かりました……」
エルミナーゼが納得したかのような表情となり、
「ちょっと待ってエルミナーゼ。私は別にそういうつもりじゃ……」
ミサオさんは困ったようにエルミナーゼさんの肩をぽんぽんと叩いた。
ちょうど大鍋にスライムの分泌液を移し終わり、続けて防錆薬の作成手順をミサオさんに教わる。
「ちなみに色は何色がいいですか?」
「色ですか……それでは使いやすい黒でお願いします」
「黒ですね、ではこの灰を混ぜてください」
ミサオさんが灰を持ち出してきた。
普通の灰に見えたが、等級値があまり高いアイテムを譲って貰うわけには行かない。
一応鑑定してみることにした。
【カエデの灰】。
カエデの木を燃やして得られた灰。
等級値3。
鑑定結果にほっと胸を撫で下ろし、私は、「分かりました」と灰を受け取って混ぜた。
それから普通に木材で火を起こして、大量の水を加えてから大鍋を火にかけた。
それからぐつぐつと煮え立って来たところで火を止めて、ミサオさんの次の指示を待った。
「それではこの樹液を加えてください」
またも私は鑑定を使用。
【白樺の樹液】。
白樺から得られた樹液。
等級値15。
これも等級値が低かったので私は有り難く受け取って使うことにした。
樹液を加える前に、火加減を弱火に元素操作すると、
「初心者にしては素晴らしい手順ですね……」
と元素操作に関して、エルミナーゼさんからお墨付きがもらえた。
「錬金術補助の仕事をした際に丁寧に教えていただきましたから……」
私がそうかしこまると、エルミナーゼさんは不審そうな目線を私へと向けた。
「たった一度教えてもらっただけでしょう?」
「はい。ですが私には研修生スキルがありますので……」
「研修生ですか……そんなスキルは聞いたこともありませんね」
「そうですね、昔から父母には、『貴方に神から与えられた祝福よ』なんて言われていましたが……」
「ふむ……まぁいいでしょう」
エルミナーゼさんは納得しきっていない様子だ。
「さぁセーヌさん、ここからが大仕事なんですよ」
ミサオさんが弱火にして鍋の温度が下がったところで、樹液を加えるよう指示した。
私が言われたとおりに樹液を加えると、
「さぁ、急いでかき混ぜてください!」
と、ミサオさんが急かすように大きなへらを渡してきた。
私は驚きつつも、慎重にへらを鍋へと差し込んでかき混ぜようとする。
「お、重いですね……」
「そうなんです。それがこの防錆薬を作る際に一番しんどい作業なんですよ」
「……ここで私の出番というわけですね」
私が一生懸命に鍋をかき混ぜている横にエルミナーゼがついた。
そうして、背負っていた大剣を手に取ると、鞘毎どかんと床に突き立てた。
「いいですか、セーヌさん。私はこの大剣をへらのようなものとして扱います。まずは周囲の元素を感知します」
エルミナーゼさんの言うように私は元素を感知した。
先程までかなり強火で火を起こしていたからだろう。
炎元素が少し多く部屋に満ちているようだった。
それに草スライムの分泌液を煮ていたからか、気化して得られたであろう草元素も多い。
「草と炎が多いのがわかれば、草ならば太く力強い幹を、炎ならば青い部分をイメージしてください。そうして元素操作で自らの身体の強化したい部分に元素を注ぎ込むのです」
エルミナーゼはそう言いながら大剣を床から少しだけ持ち上げると、初めはゆっくりとへらのように回し始めた。しかしその速度は身体強化の影響かみるみるうちに高速になっていく。
最終的に、凄まじい速度でエルミナーゼが大剣を鞘ごと回し始めたので、ミサオさんが止めに入った。
「エルミナーゼ、加減をして頂戴!」
周囲に置いてあった薬草類が少し散乱してしまっている。
「す、すみません、つい……。セーヌさんこのようにしてみてください」
「なるほど……やってみます!」
私はエルミナーゼの手本を頼りに、大鍋を木べらで掻き回し始めた。
エルミナーゼのお手本通りに初めはゆっくりと元素を両腕に注いでいく。
すると、どうだろう。手に入れる力がまるで少なくても良いように感じてきた。
どんどんと鍋をかき混ぜる速度を上げていく。
「セーヌさん! 溢さないように! やりすぎはよくありませんよ。へらが折れます……!」
ミサオさんが私を窘める。
なので、私は身体強化に使っていた元素量を調節して速度を緩めた。
そうして暫くかき混ぜて、防錆薬が完成した。
錬金術をしながらの座学から始まった大剣術講義は第一声がそれだった。
「はぁ、なるほど。前線で戦い味方を守る盾持ちや斧術とは違うのですね」
「そうです。だからこそ一閃の重さにこそ全てを置き、一撃で何もかもを薙ぎ払う為に、元素による身体強化が重要なのです」
「元素による身体強化ですか?」
まるで聞いたことがなかった。
「エルミナーゼ。いきなり身体強化の勉強なんて初心者のセーヌさんに大丈夫なのですか?」
ミサオさんが心配そうに声を上げる。
「教え子として優秀なのであれば効率の良い教え方となるはずです」
エルミナーゼさんはそう言うだけで、ミサオさんは尚も心配そうな顔をしていた。
「私は魔法もまるで使えません。ですから元素による身体強化と言われても……」
「魔法が全く使えないのですか?」
「はい。元素感知と元素操作のスキルは持っているのですが……」
そうエルミナーゼさんに言いながら、私はミサオさんに教えてもらった手順通りに、試験管から草原スライムの分泌液を大量に大鍋に移している。
「ちなみにスキルランクを伺っても?」
エルミナーゼさんが私に問う。
「Sランクです」
私の答えを聞いて、ミサオさんが驚いたように「Sランクですか!?」と声を上げた。
よほどびっくりしたのか、唖然とした口元を隠す為に右手が添えられている。
「はい、Sランクですが……なにか問題がありますでしょうか?」
もしかしたら、余り高いランクだと魔法の習得が困難を極めるとかそういう面倒事があるのかもしれない。私は心配になって二人の様子を見た。
「いえ……別に問題があるというわけでは……」
ミサオさんが苦笑しながら口元から手を退けた。
「問題はありません。なるほど、セーヌさんをミサオが認めた理由が分かりました……」
エルミナーゼが納得したかのような表情となり、
「ちょっと待ってエルミナーゼ。私は別にそういうつもりじゃ……」
ミサオさんは困ったようにエルミナーゼさんの肩をぽんぽんと叩いた。
ちょうど大鍋にスライムの分泌液を移し終わり、続けて防錆薬の作成手順をミサオさんに教わる。
「ちなみに色は何色がいいですか?」
「色ですか……それでは使いやすい黒でお願いします」
「黒ですね、ではこの灰を混ぜてください」
ミサオさんが灰を持ち出してきた。
普通の灰に見えたが、等級値があまり高いアイテムを譲って貰うわけには行かない。
一応鑑定してみることにした。
【カエデの灰】。
カエデの木を燃やして得られた灰。
等級値3。
鑑定結果にほっと胸を撫で下ろし、私は、「分かりました」と灰を受け取って混ぜた。
それから普通に木材で火を起こして、大量の水を加えてから大鍋を火にかけた。
それからぐつぐつと煮え立って来たところで火を止めて、ミサオさんの次の指示を待った。
「それではこの樹液を加えてください」
またも私は鑑定を使用。
【白樺の樹液】。
白樺から得られた樹液。
等級値15。
これも等級値が低かったので私は有り難く受け取って使うことにした。
樹液を加える前に、火加減を弱火に元素操作すると、
「初心者にしては素晴らしい手順ですね……」
と元素操作に関して、エルミナーゼさんからお墨付きがもらえた。
「錬金術補助の仕事をした際に丁寧に教えていただきましたから……」
私がそうかしこまると、エルミナーゼさんは不審そうな目線を私へと向けた。
「たった一度教えてもらっただけでしょう?」
「はい。ですが私には研修生スキルがありますので……」
「研修生ですか……そんなスキルは聞いたこともありませんね」
「そうですね、昔から父母には、『貴方に神から与えられた祝福よ』なんて言われていましたが……」
「ふむ……まぁいいでしょう」
エルミナーゼさんは納得しきっていない様子だ。
「さぁセーヌさん、ここからが大仕事なんですよ」
ミサオさんが弱火にして鍋の温度が下がったところで、樹液を加えるよう指示した。
私が言われたとおりに樹液を加えると、
「さぁ、急いでかき混ぜてください!」
と、ミサオさんが急かすように大きなへらを渡してきた。
私は驚きつつも、慎重にへらを鍋へと差し込んでかき混ぜようとする。
「お、重いですね……」
「そうなんです。それがこの防錆薬を作る際に一番しんどい作業なんですよ」
「……ここで私の出番というわけですね」
私が一生懸命に鍋をかき混ぜている横にエルミナーゼがついた。
そうして、背負っていた大剣を手に取ると、鞘毎どかんと床に突き立てた。
「いいですか、セーヌさん。私はこの大剣をへらのようなものとして扱います。まずは周囲の元素を感知します」
エルミナーゼさんの言うように私は元素を感知した。
先程までかなり強火で火を起こしていたからだろう。
炎元素が少し多く部屋に満ちているようだった。
それに草スライムの分泌液を煮ていたからか、気化して得られたであろう草元素も多い。
「草と炎が多いのがわかれば、草ならば太く力強い幹を、炎ならば青い部分をイメージしてください。そうして元素操作で自らの身体の強化したい部分に元素を注ぎ込むのです」
エルミナーゼはそう言いながら大剣を床から少しだけ持ち上げると、初めはゆっくりとへらのように回し始めた。しかしその速度は身体強化の影響かみるみるうちに高速になっていく。
最終的に、凄まじい速度でエルミナーゼが大剣を鞘ごと回し始めたので、ミサオさんが止めに入った。
「エルミナーゼ、加減をして頂戴!」
周囲に置いてあった薬草類が少し散乱してしまっている。
「す、すみません、つい……。セーヌさんこのようにしてみてください」
「なるほど……やってみます!」
私はエルミナーゼの手本を頼りに、大鍋を木べらで掻き回し始めた。
エルミナーゼのお手本通りに初めはゆっくりと元素を両腕に注いでいく。
すると、どうだろう。手に入れる力がまるで少なくても良いように感じてきた。
どんどんと鍋をかき混ぜる速度を上げていく。
「セーヌさん! 溢さないように! やりすぎはよくありませんよ。へらが折れます……!」
ミサオさんが私を窘める。
なので、私は身体強化に使っていた元素量を調節して速度を緩めた。
そうして暫くかき混ぜて、防錆薬が完成した。
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