君のぬくもりは僕の勇気

天渡清華

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その六

♪♪♪♪♪

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「……静也?」
「痛いだろ、無理はさせらんないよ」
 隣に横になろうとする俺に、晴輝は当てずっぽうに手を伸ばす。
「俺なら大丈夫だよ」
  全然大丈夫じゃない。たぶん初めての身体に、無理はさせたくない。俺は答えの代わりに、晴輝の髪を撫でて抱き寄せた。
「やめないで。俺なら大丈夫だから……。ちゃんと静也と最後までしたいんだ」
「焦ることないよ、なんかこれっきりみたいじゃんか」
 晴輝の様子に少し不安を感じて、思わず言う。猫のように、晴輝は俺の肩に頭を押しつけてきた。
「……ごめん。でもやっぱり、静也と早く繋がりたい」
 これも、晴輝が抱える傷がさせることなんだろうか。俺はゆっくり晴輝の髪を撫でながら、少し考えた。
「分かったよ」
 ちゅっと音を立ててキス。俺は晴輝の脚を大きく開かせて、晴輝のそれを扱きながら、後ろに顔を埋めてそこをさらに唾液で濡らした。
 前への刺激で気をそらせるようにしても、ちょっとそこに指を入れた途端、びくりと晴輝の身体が跳ねる。漏らす声も、あえぎというよりは苦痛の声だ。それでも晴輝の手は、やめるなというように俺の頭を押さえつけている。
 少しずつそこをほぐすうち、晴輝の反応が変わり始めた。時々ぴくっ、ぴくっ、と腰が小さく跳ねるのは、感じてくれてるらしい。
「うあっ、は……あっ、あ……」
 苦い快楽に眉をしかめていても、唇には恍惚が乗っていたりする。快感だけを感じていて欲しい。でも、晴輝の希望もかなえたい。
「晴輝、もう大丈夫?」
 髪を撫でて訊くと、晴輝は少しの間の後、本当に恥ずかしそうにうなずいた。
「そんなに固くならないで」
 なだめるように優しくキスしてから、ゆっくりゆっくり晴輝の中に入る。抱きしめてあちこちにキスしながら、少しずつ晴輝と肌を密着させていく。
 つらそうな、くぐもった声が晴輝の唇からこぼれる。俺の首に回った腕に力がこもる。
「大丈夫? 痛い?」
「平気……もっと、大丈夫……」
 うるんだ瞳と吐息で、晴輝は俺の背中をしっかりと抱く。耳にかかるあえぎ混じりの吐息に、背中が興奮と快感にざわめく。最高に気持ちいい。
「う……あ、ああっ、んうっ……」
 きつく閉じられた晴輝の瞳から、涙が一粒こぼれる。そっと舌ですくい取って、求められるままに奪いあうようなキス。
「静也、静也っ……、いいから、もっと……」
 荒い息遣いで苦しそうにしてるのに、晴輝はぎこちなく腰を揺らし、俺とさらに深く繋がろうとする。
 愛しい。たまらなく愛しい。
「は、あっ……、ねえ、今俺達ちゃんと繋がってるよね?」
「うん、繋がってるよ」
 俺を半分ぐらいまで受け入れ、隙間なく密着した晴輝と俺。俺達はしばらく黙って抱きあい、互いを感じあった。動かずにいるから、晴輝の表情からも苦しさが消え、とろけている。それが、とても幸せだ。
 俺にもその時々で抱きあう相手はいたけど、こうしてお互いのぬくもりをじかに感じあうだけで、こんなにも満たされるなんて、知らなかった。
 だけど。
「ごめん、俺もう我慢できない……」
「うん……」
 俺の吐情を受け入れようとしてくれる晴輝をしっかりと抱きしめ直し、なるべく晴輝の負担にならないように腰を揺らし、俺はギリギリのタイミングでそれを抜いて晴輝の腹の上に吐情した。
「なんかすげえ、うれしい……」
 晴輝のかすかな声。俺の胸に顔を埋めて、表情は見えないけど、泣いてるようにも見えた。もっと抱き寄せて、汗ばんだ肌を何度も撫でる。
 深くふれあう肌のぬくもりや柔らかな髪の感触が、まろやかなまどろみへと俺を誘う。
「眠くなってきたね」
 晴輝の甘い声に、閉じかかった目を薄く開ける。満たされた、ふんわりした微笑みが、俺の幸せをより深くする。
 どうかいつまでも、こんな時間が続きますように。
 いや、願うんじゃない、俺がこの手で、晴輝とこの時を守ろう。
 君のぬくもりは僕の勇気。それは俺も同じだから。


                             END
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