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序章「最悪の出会い」
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学校帰りの少女――須田あかりは、やくざ同士の抗争を目撃してしまった。確かに、ここは一般人とやくざが引いている境界線ということもあり、危険な場所でもあった。あかりにとって学校からも近く、慣れているから抗争に巻き込まれたこともないから大丈夫と通っていたのである。
「おい! 見られていたぞ!」
背後から男たちの声がした。
(見つかった!)
運悪く男たちに見つかってしまい追いかけられる。あかりは全族力で逃げた。だが、男たちの体力に勝てるわけがなく簡単に壁際へと追い詰められてしまう。
「悪いな。お嬢さん。見られたからには簡単に返すわけにはいかねぇよ」
「なぁ」
「ああ」
男たちが顔を見合わせた。あかりの制服を乱暴に破く。濃紺の瞳にうっすらと涙が浮かぶ。こんな男たちに抱かれるなんて悔しかった。せめてもの抵抗に、あかりは口を塞いでいる男の手を思いっきりかむ。
「この女!」
男たちが一斉に、手を振り上げた。あかりは目を閉じる。いつまでたっても、衝撃がこない。恐る恐る閉じていた瞳を開いた。あかりの目の前には、一人の青年が立っている年齢としては二十五・六だろう。
凛とした空気を身に纏っている。
「お前、本橋澪か?」
「ちょうどいい。お前を倒す!」
本橋澪と呼ばれた青年は、男たちを簡単に倒していく。数分もしないうちに男たちの山ができていた。殺されないだけましだと思えと、無機質な声で吐き捨てる。
その声に温かさはなかった。
「よく生きていたな」
澪はあかりの体に、上着をかけた。冷たいダークブラウンの瞳が見下ろしてくる。見てしまったら凍ってしまいそうで、あかりは視線を逸らす。澪はあかりの顎を指で支えると、無理やり視線を合わせた。
「私は――」
「最近、警備(パトロール)で部下が君の姿を何回か目撃している」
「ごめんなさい」
「謝るぐらいなら最初から通らないことだ」
「あの……私は普通の生活を送れるのでしょうか?」
「見たからには難しいだろうな」
「――そんな」
あかりの顔が青ざめていく。全身から血の気が引いていくのが分かる。情けないほど体が震えていた。日常が壊されようとしている。
奪われようとしている。
あかりにとって恐怖でしかなかった。
「まさか、あなたも?」
澪はあかりに名刺を渡す。
白蘭会(しろらんかい)組長――本橋澪
「やっぱり……やくざ」
自分の予想が当たってしまったことを知る。嫌なことはよく当たってしまう方だった。現実になってしまったことが数えきれないほどある。
「分かりきっていることだろう? 須田あかりさん」
「どうして、私の名前を?」
「領域(テリトリー)を荒らす人物を調べていないわけないだろう?」
「やくざはそこまでするのね」
目の前の人物は常識がないのだと実感をする。
一般人とは違うのだと自覚をした。
「それも、仕事のうちだ」
「最低」
「最低なのはどちらだろうな? 最初、私たちの領域を荒らしたのはそっちだろう? 好き勝手していたのは君の方だろう?」
「話にならないわ。あなたは私の生活を壊そうとしている。警察を呼ぶ」
「どうぞ? 呼ぶなら好きにすればいい」
「後悔しても知らないわよ?」
「後悔をするのは須田さんの方だと思うが」
「何が言いたいの?」
「意味が分かるから、かけてみればいい」
あかりは携帯を取り出して一一〇にかける。
「はい。どうしました? 事件ですか? 事故ですか?」
「やくざに絡まれてどうしようもなくて、助けてください」
「相手の服装は?」
「黒のスーツに――」
携帯を澪に取り上げられた。
「仕事の邪魔をされているのは、こちらなのだが」
「あなたは誰ですか?」
「私は本橋澪。 白蘭会の組長だ」
「し……失礼しました」
「私が言いたいことは分かるだろう?」
「ちょっ……どういうことですか!」
あかりは思わず横から話に割り込んできて叫ぶ。
「その方の言うことを聞いていれば大丈夫ですから」
スピーカーに設定を変えたらしく、警官の慌てた声が聞こえてくる。
「だ、そうだ」
携帯を切りあかりに携帯を突き返す。
警察も使えないなんて、信じられない。
市民を守れなくて何のための警察なのだろうか?
そんな言葉があかりの脳裏をよぎる。
「特別に教えてやろう。事件全般の指揮権、捜査権は持っていないが、警備は我々白蘭会が受け持っている」
それは、代々本橋家の者が築き上げてきた信頼関係でもあった。
「警察と癒着しているということですか?」
「癒着とは言い方が悪い。提携と言ってくれ」
一台の高級車が音もなく止まった。運転席から降りてきた青年がドアを開ける。その仕草はとても、綺麗なものだった。
まるで、映画やドラマに出てくる執事のように見えた。
「送っていく」
「結構です」
あかりは差し出された澪の手をはじいて歩き出す。下手な注目を浴びたくなかった。澪は興味をなくしたといわんばかりに車に乗り込む。
澪を乗せた車は滑らかに走り出した。
「おい! 見られていたぞ!」
背後から男たちの声がした。
(見つかった!)
運悪く男たちに見つかってしまい追いかけられる。あかりは全族力で逃げた。だが、男たちの体力に勝てるわけがなく簡単に壁際へと追い詰められてしまう。
「悪いな。お嬢さん。見られたからには簡単に返すわけにはいかねぇよ」
「なぁ」
「ああ」
男たちが顔を見合わせた。あかりの制服を乱暴に破く。濃紺の瞳にうっすらと涙が浮かぶ。こんな男たちに抱かれるなんて悔しかった。せめてもの抵抗に、あかりは口を塞いでいる男の手を思いっきりかむ。
「この女!」
男たちが一斉に、手を振り上げた。あかりは目を閉じる。いつまでたっても、衝撃がこない。恐る恐る閉じていた瞳を開いた。あかりの目の前には、一人の青年が立っている年齢としては二十五・六だろう。
凛とした空気を身に纏っている。
「お前、本橋澪か?」
「ちょうどいい。お前を倒す!」
本橋澪と呼ばれた青年は、男たちを簡単に倒していく。数分もしないうちに男たちの山ができていた。殺されないだけましだと思えと、無機質な声で吐き捨てる。
その声に温かさはなかった。
「よく生きていたな」
澪はあかりの体に、上着をかけた。冷たいダークブラウンの瞳が見下ろしてくる。見てしまったら凍ってしまいそうで、あかりは視線を逸らす。澪はあかりの顎を指で支えると、無理やり視線を合わせた。
「私は――」
「最近、警備(パトロール)で部下が君の姿を何回か目撃している」
「ごめんなさい」
「謝るぐらいなら最初から通らないことだ」
「あの……私は普通の生活を送れるのでしょうか?」
「見たからには難しいだろうな」
「――そんな」
あかりの顔が青ざめていく。全身から血の気が引いていくのが分かる。情けないほど体が震えていた。日常が壊されようとしている。
奪われようとしている。
あかりにとって恐怖でしかなかった。
「まさか、あなたも?」
澪はあかりに名刺を渡す。
白蘭会(しろらんかい)組長――本橋澪
「やっぱり……やくざ」
自分の予想が当たってしまったことを知る。嫌なことはよく当たってしまう方だった。現実になってしまったことが数えきれないほどある。
「分かりきっていることだろう? 須田あかりさん」
「どうして、私の名前を?」
「領域(テリトリー)を荒らす人物を調べていないわけないだろう?」
「やくざはそこまでするのね」
目の前の人物は常識がないのだと実感をする。
一般人とは違うのだと自覚をした。
「それも、仕事のうちだ」
「最低」
「最低なのはどちらだろうな? 最初、私たちの領域を荒らしたのはそっちだろう? 好き勝手していたのは君の方だろう?」
「話にならないわ。あなたは私の生活を壊そうとしている。警察を呼ぶ」
「どうぞ? 呼ぶなら好きにすればいい」
「後悔しても知らないわよ?」
「後悔をするのは須田さんの方だと思うが」
「何が言いたいの?」
「意味が分かるから、かけてみればいい」
あかりは携帯を取り出して一一〇にかける。
「はい。どうしました? 事件ですか? 事故ですか?」
「やくざに絡まれてどうしようもなくて、助けてください」
「相手の服装は?」
「黒のスーツに――」
携帯を澪に取り上げられた。
「仕事の邪魔をされているのは、こちらなのだが」
「あなたは誰ですか?」
「私は本橋澪。 白蘭会の組長だ」
「し……失礼しました」
「私が言いたいことは分かるだろう?」
「ちょっ……どういうことですか!」
あかりは思わず横から話に割り込んできて叫ぶ。
「その方の言うことを聞いていれば大丈夫ですから」
スピーカーに設定を変えたらしく、警官の慌てた声が聞こえてくる。
「だ、そうだ」
携帯を切りあかりに携帯を突き返す。
警察も使えないなんて、信じられない。
市民を守れなくて何のための警察なのだろうか?
そんな言葉があかりの脳裏をよぎる。
「特別に教えてやろう。事件全般の指揮権、捜査権は持っていないが、警備は我々白蘭会が受け持っている」
それは、代々本橋家の者が築き上げてきた信頼関係でもあった。
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「癒着とは言い方が悪い。提携と言ってくれ」
一台の高級車が音もなく止まった。運転席から降りてきた青年がドアを開ける。その仕草はとても、綺麗なものだった。
まるで、映画やドラマに出てくる執事のように見えた。
「送っていく」
「結構です」
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