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3章:青年期

閑話 アーサーの憂い

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久しぶりにギースと会話した日。
僕も、久しぶりに時間ができた。

「僕は、間違ったかもしれない」と黒い手帳に手記を書きながら独り言だ。
「陛下、誰でも間違いはあるものです。」って言ってくれるのは、僕の愛する人サラリナだ。 
「ありがとう。 でも、僕の自己保身のために1人の少年の人生を縛り、今やこの国のために犠牲になっている。 早いうちに法律を変えてでも貴族にするべきだったかもな」って愚痴だな。

「ウルハ殿の事ですね。 彼は、貴族にも成りたくないのでは? せめて、婚約を解消させてあげたほうがよろしいのでは?」

「まったくだ。 宰相にはやられたよ。 僕が調停赴いている間、ギースが帝国にいる間に、テレサ使ってマックレイ家の次女と婚約させてるしな。 お陰で、ギースの戦争功績はマックレイ家になった。 レイナ嬢じゃ、ギースをおとせないのにな。 わかってないな。」

「レイナ嬢は、可愛らしいお嬢さんですよ。 ウルハ殿は見向きもしていないという噂ですが、本当なんですね。」

「当たり前だ。 僕は会ったことないけど、前魔王が心底ギースに惚れてたらしいよ。 
 それでも落とせなかったってね。 僕より器が違う。 
 彼みたいのが本来であれば王になったほうが良いのかもね。 男から見ても嫉妬してしまうぐらいだ。 
 解消も難しい。 僕との契約があるといっても、ギースのもつ戦力は、どこの国も欲しいからね。 
 万が一の保険のつもりだろう。 
 魔王領にも行かせないのも万が一、魔王側についてしまった場合を危惧してのことだ。 
 そんなことないっと言ってるけど、みな臆病なんだ。 僕も同じか。」

「なるようにしか、なりませんわ陛下。」

「今日同じ事をギースに言われたよ。」そいうとサラリナも笑っていた。
本当なるようにしかならないな。 そう思いつつ、手記を閉じて、サラリナの寝所で彼女を愛でて寝よう。

久しぶりにまともに寝れそうだ。
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