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0話目!チュートリアル①
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僕と桜は家具の置かれた店に来ていた。いざじっくり店の中を見渡すと、意外とそこは親近感の溢れる物も多かった。
「え、これテレビ!?」
「そうよ、この世界だってテレビくらいあるっつーの」
姿形は違えど、それは正しく紛れもないテレビだった。僕のいた時代と違って、それはかなり近未来的で、液晶ではなく何か丸い装置から、映像が映し出されるというもので、白さんが僕に見せてくれた時の映像のようなものだった。
しかも、そこに映し出されていた映像は、僕もよくテレビで見かけていたよくな映像で、アイドルらしき5人組の女の子たちが、煌びやかな舞台で歌いながら踊っていた。
「え、アイ…ドル…? アイドルとかそういう芸能職、この世界にもあるの?」
僕が不思議そうに映像をマジマジと見ていると、桜は逆に首を傾げて「何言ってんの?」と、眉間に皺を寄せていた。
「この世界にだってアイドルだっているわよ。女優や俳優、ニュースキャスター、芸人だっているわ」
「…………」
僕は開いた口が塞がらなかった。ファンタジーの世界には、そういった芸能職はないと思っていた。それは浅はかな考えだったようだ。この世界は僕が想像しているよりも技術的なものは発展しているし、どちらかというと、ファンタジーと現代技術が融合したかのような世界だ。僕が思っていた以上に近代的だ。
「それはそうとテレビいるでしょ? ちょちょいと弄ってちゃんと家でも観れるようにするから、暇潰し用に買っときなさいよ。コレ観て世界のお勉強もできるしね」
少しからかい気味に桜はそう言って、僕にどのテレビにするか決めるよう促した。とりあえず、あまり高いものは買いたくないと、値段を見るがこれは僕の思っている価値観と合っているのだろうか? 八万円? 十二万円? んんんんんん?
僕が値段を見つめながら悩む素振りをしていると、桜は徐に財布をどこからともなく取り出した。本当にどこからともなく取り出した。何も無い空間から取り出したのだ。カバンから取り出すみたいに。そして、財布から黒いカードを取り出して、僕にヒラヒラと見せつけながらこう言った。
「お金のこと考えてんのか知らないけど、全部カードで払うし大丈夫よ。それにここだけの話――」
桜は財布にカードをしまって、財布もまたどこかへと消し去ると、僕の肩を組んで、僕に顔を近づけて手のひらで声が漏れないよう遮ると、小声でこう続けた。
「あたしたち、無限にお金を作り出せるの。一応銀行作ってあるけど、めっちゃ資産家だから、ブラックカード持ってるし、お金の心配しなくて良いから。なんてったって、無くなったら作り出せば良いんだからね」
ケケケケケと悪い笑みを浮かべて笑う桜に、僕はそれは違法ではないのか!? と、ツッコミたくなったが、そもそもこの世界にそういあ法律あるのかもわからないし、せっかく桜がそう言ってくれているのだからと、僕は黙って苦笑いした。
「あとね」
桜は僕を解放すると、また先程のように財布をどこからともなく取り出した。
「さっき、空間転移魔法はかなり上級魔法だって言ったけど、空間転移でも生き物以外であれば、使える人もある程度いる。大きければ大きいほど難しいけどね。それから、空間転移とは別に、さっき財布を取り出したみたいに、空間転移に似た魔法がある。収納魔法よ」
「収納魔法?」
聞いた感じ、とても便利そうな魔法だ。空間転移とはまた違うんだろうか。
「空間転移は物を違う空間から空間へとそのまま移動させる魔法。収納魔法は亜空間へと物を預けておいて、また亜空間から必要な物を取り出す便利魔法」
「つまり四次元ポケットみたいなものか」
「…………」
桜にはトラえもんが何なのかわかるみたいで、そう例えられて少し微妙そうな顔をして、顔を顰めていた。
「この世界の人々は空間転移は使えないけど、収納魔法を使える人は多いわ。収納魔法はその人の魔力と魔法技術によって収納できる物の容量が変わる。みんな武器とかぐらいなら収納できるから、財布と武器だけは収納して持ち歩く人々が殆どなの。もちろん、生き物は収納魔法じゃ収納できない。生き物と物では色々原理が違うからね。そして、空間転移よりも難易度が低いこともあって、ある程度の大型のものでも収納できる人が殆ど。収納魔法は大きなものを空間転移で家まで移動させてもなんら珍しいものではない。しかも、空間転移と収納魔法は傍からじゃ区別できない。と、いうことは?」
「と、言うことは?」
「空間転移で買った大型の物や大量の服を家に移動させてもなんらおかしくはない! いくらでも大量に物が買えるのよー!」
「おおおおおおおおお!」
なんかよくわからないけど、凄いぞー! 便利だぞー!
僕は桜へと感謝と敬意を込めて、盛大な拍手を送った。桜も満更ではないようで、ふふんと鼻を鳴らして、ふんぞり返っていた。
「因みに、転送した家具は、白姉が適当に部屋に配置してくれるから、帰って部屋に置かなきゃいけないとかは考えなくて良いから」
「え、白さん用事あるって言ってたのに…」
「ん? そうなの? じゃあ用事ってその事じゃない? 誰かが家具を配置してくれなきゃ、ただ乱雑に部屋に家具が溢れかえるだけだしね」
それを聞いて僕は、家に帰ったらちゃんと白さんにお礼を言わなきゃなと思った。そんなに深い意味は無いかも知れないけど、もしかしたら僕に迷惑に思われないように用事と伏せてくれてたのかもしれないし。
「因みに、部屋の広さって昨日借りてた客室くらいかな?」
部屋の広さを把握していないと、買っていい家具の大きさや量もわからない。けれど、桜はそんなことさもどうでも良いかのようにこう答えた。
「部屋の広さはイオ兄が空間ちょちょっと弄って勝手に調整するから、好きなだけ広くして良いわよ」
「え、どういうこと!?」
訳もわからず僕は桜に聞き返す。
「うちの家、イオ兄が空間魔法で大きさ調整してくれてるのね。だから人それぞれ部屋の大きさ違うし、家具増やして広くしたかったら微調整すれば良いだけ。だから好きなだけ家具も買うと良いわよ。部屋狭い方が良いなら家具も厳選しなきゃなんないけどね。ちな、部屋には簡易キッチンとお風呂とトイレも付けてあるから。トイレはあたしたち家族みんなしないから、自分の部屋でしてね」
「…………」
なんて言ったら良いのかわからない。なんでも有りだな、神様って。そして、トイレしないってどういう事なのだろう…。
僕は色んなことに唖然としながら、買い物を再開するのだった。
「え、これテレビ!?」
「そうよ、この世界だってテレビくらいあるっつーの」
姿形は違えど、それは正しく紛れもないテレビだった。僕のいた時代と違って、それはかなり近未来的で、液晶ではなく何か丸い装置から、映像が映し出されるというもので、白さんが僕に見せてくれた時の映像のようなものだった。
しかも、そこに映し出されていた映像は、僕もよくテレビで見かけていたよくな映像で、アイドルらしき5人組の女の子たちが、煌びやかな舞台で歌いながら踊っていた。
「え、アイ…ドル…? アイドルとかそういう芸能職、この世界にもあるの?」
僕が不思議そうに映像をマジマジと見ていると、桜は逆に首を傾げて「何言ってんの?」と、眉間に皺を寄せていた。
「この世界にだってアイドルだっているわよ。女優や俳優、ニュースキャスター、芸人だっているわ」
「…………」
僕は開いた口が塞がらなかった。ファンタジーの世界には、そういった芸能職はないと思っていた。それは浅はかな考えだったようだ。この世界は僕が想像しているよりも技術的なものは発展しているし、どちらかというと、ファンタジーと現代技術が融合したかのような世界だ。僕が思っていた以上に近代的だ。
「それはそうとテレビいるでしょ? ちょちょいと弄ってちゃんと家でも観れるようにするから、暇潰し用に買っときなさいよ。コレ観て世界のお勉強もできるしね」
少しからかい気味に桜はそう言って、僕にどのテレビにするか決めるよう促した。とりあえず、あまり高いものは買いたくないと、値段を見るがこれは僕の思っている価値観と合っているのだろうか? 八万円? 十二万円? んんんんんん?
僕が値段を見つめながら悩む素振りをしていると、桜は徐に財布をどこからともなく取り出した。本当にどこからともなく取り出した。何も無い空間から取り出したのだ。カバンから取り出すみたいに。そして、財布から黒いカードを取り出して、僕にヒラヒラと見せつけながらこう言った。
「お金のこと考えてんのか知らないけど、全部カードで払うし大丈夫よ。それにここだけの話――」
桜は財布にカードをしまって、財布もまたどこかへと消し去ると、僕の肩を組んで、僕に顔を近づけて手のひらで声が漏れないよう遮ると、小声でこう続けた。
「あたしたち、無限にお金を作り出せるの。一応銀行作ってあるけど、めっちゃ資産家だから、ブラックカード持ってるし、お金の心配しなくて良いから。なんてったって、無くなったら作り出せば良いんだからね」
ケケケケケと悪い笑みを浮かべて笑う桜に、僕はそれは違法ではないのか!? と、ツッコミたくなったが、そもそもこの世界にそういあ法律あるのかもわからないし、せっかく桜がそう言ってくれているのだからと、僕は黙って苦笑いした。
「あとね」
桜は僕を解放すると、また先程のように財布をどこからともなく取り出した。
「さっき、空間転移魔法はかなり上級魔法だって言ったけど、空間転移でも生き物以外であれば、使える人もある程度いる。大きければ大きいほど難しいけどね。それから、空間転移とは別に、さっき財布を取り出したみたいに、空間転移に似た魔法がある。収納魔法よ」
「収納魔法?」
聞いた感じ、とても便利そうな魔法だ。空間転移とはまた違うんだろうか。
「空間転移は物を違う空間から空間へとそのまま移動させる魔法。収納魔法は亜空間へと物を預けておいて、また亜空間から必要な物を取り出す便利魔法」
「つまり四次元ポケットみたいなものか」
「…………」
桜にはトラえもんが何なのかわかるみたいで、そう例えられて少し微妙そうな顔をして、顔を顰めていた。
「この世界の人々は空間転移は使えないけど、収納魔法を使える人は多いわ。収納魔法はその人の魔力と魔法技術によって収納できる物の容量が変わる。みんな武器とかぐらいなら収納できるから、財布と武器だけは収納して持ち歩く人々が殆どなの。もちろん、生き物は収納魔法じゃ収納できない。生き物と物では色々原理が違うからね。そして、空間転移よりも難易度が低いこともあって、ある程度の大型のものでも収納できる人が殆ど。収納魔法は大きなものを空間転移で家まで移動させてもなんら珍しいものではない。しかも、空間転移と収納魔法は傍からじゃ区別できない。と、いうことは?」
「と、言うことは?」
「空間転移で買った大型の物や大量の服を家に移動させてもなんらおかしくはない! いくらでも大量に物が買えるのよー!」
「おおおおおおおおお!」
なんかよくわからないけど、凄いぞー! 便利だぞー!
僕は桜へと感謝と敬意を込めて、盛大な拍手を送った。桜も満更ではないようで、ふふんと鼻を鳴らして、ふんぞり返っていた。
「因みに、転送した家具は、白姉が適当に部屋に配置してくれるから、帰って部屋に置かなきゃいけないとかは考えなくて良いから」
「え、白さん用事あるって言ってたのに…」
「ん? そうなの? じゃあ用事ってその事じゃない? 誰かが家具を配置してくれなきゃ、ただ乱雑に部屋に家具が溢れかえるだけだしね」
それを聞いて僕は、家に帰ったらちゃんと白さんにお礼を言わなきゃなと思った。そんなに深い意味は無いかも知れないけど、もしかしたら僕に迷惑に思われないように用事と伏せてくれてたのかもしれないし。
「因みに、部屋の広さって昨日借りてた客室くらいかな?」
部屋の広さを把握していないと、買っていい家具の大きさや量もわからない。けれど、桜はそんなことさもどうでも良いかのようにこう答えた。
「部屋の広さはイオ兄が空間ちょちょっと弄って勝手に調整するから、好きなだけ広くして良いわよ」
「え、どういうこと!?」
訳もわからず僕は桜に聞き返す。
「うちの家、イオ兄が空間魔法で大きさ調整してくれてるのね。だから人それぞれ部屋の大きさ違うし、家具増やして広くしたかったら微調整すれば良いだけ。だから好きなだけ家具も買うと良いわよ。部屋狭い方が良いなら家具も厳選しなきゃなんないけどね。ちな、部屋には簡易キッチンとお風呂とトイレも付けてあるから。トイレはあたしたち家族みんなしないから、自分の部屋でしてね」
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