神様のお導き

ヤマト

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3話目!碧の章 行け!コミックマーケット

3-1

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 針山家での生活。朝食作りに皿洗い、掃除や買い出し。アキラくんと一緒とは言え、この生活にもだいぶ慣れてきた頃、僕には一つ小さな悩みがあった。それは――
「…ご馳走様」
 ご飯を食べるとそそくさと、足早に自室へと籠る人物。一度自室に戻るとご飯まで部屋から出てこない。ロクに顔合わせもした事の無いこの子と、どうにかして少しでも仲良くなりたいということだ。
 別に無理に仲良くなる必要はないと思うが、可能なら、せめて挨拶くらいらし合える仲になりたい。優輝さんは罵倒しながらも話してくれるから、とりあえず良いことにしている。他にも口数は少ない人はいるが、話してくれるし、何か質問すれば、ちゃんと返してくれる。
 しかし、彼女に至っては、話すことは愚か目すら合わせて貰えないのだ。一緒に生活する身としても、どうにかしたいものだ。
 皿洗いをする中、思い切ってアキラくんにそのことを相談してみた。
「あぁ、碧さんですか。確かに彼女は極度の人見知りで自室に籠りがちですね」
「僕、初日からまだ一言も口聞いて貰えてない気がするんだけど……」
「……そう、肩を落とさなくても大丈夫ですよ、それが彼女にとって普通のことなんですから。僕だって、彼女とは滅多に話しませんし。いや、話せないと言った方が正しいか」
 アキラくんでさえその調子なら、僕も諦めるしかないのかなぁ。はぁ……と、ため息を吐けば、アキラくんは口元だけ軽く笑っていた。
 アキラくんの微妙な変化の違いにも、最近よくわかるようになってきた。毎日顔合わせして、一緒に仕事してる賜物だ。だいぶ仲良くなった気がするし、碧ちゃんともこんな風に少しずつ仲良くなれないかなぁ。
「もしどうしても仲良くなりたいなら、ひとつ、良い案がありますよ。良い案と言っても、仲良くなれるかは貴方次第ですが、近付くきっかけくらいなら提供できます」
「ほんとに!?」
 僕はアキラくんの思わぬ提案に、喜びを隠せなかった。
「きっかけでもなんて良いよ! 何か話せる接点を作ってくれるだけでも有難い! よろしく頼むよ!」
「良いでしょう。では、貴方にお願いしたいことがあります」


 僕はアキラくんに頼まれて、碧ちゃんの自室の前にいた。アキラくんがみんなにおやつを作ってくれたので、それを渡しにやって来たのだ。
 うぅ……。しかし緊張する……。
 まともに話したことない上、いきなり部屋の前に来てしまったのだ。緊張するなという方が無理がある。僕はゆっくり息を吐いて深呼吸し、自分を落ち着かせると、「よし」と、心の中で気合いを入れた。
 コンコンと、ドアを叩く。乾いた音が廊下に響くだけで反応はない。
 おかしいな。居るはずなんだけど……。
 彼女は滅多に部屋から出てこない。出かけている方が珍しいし、今日も部屋の中に居るはずだ。
 僕はもう一度、ドアをノックした。コンコンコン。それでも彼女は出て来ない。僕だと分かって居留守しているのだろうか。
 少し落ち込みながらも、これで最後――と、三度目の正直でドアをノックした。
「あの、碧ちゃん。アキラくんがおやつ作ってくれたんだけど……」
 少し遠慮がちに、でも部屋の中まで聞こえるように、僕は声を控えめに張り上げて、そう伝えた。それが通じたのか通じてないのかはわからないが、やっと、その扉は僅かに開いた。
「…………」
 無言で十センチ程隙間を開く碧ちゃん。青から緑色のグラデーションをした神秘的な瞳がこちらを捉える。僕を見た後、僕が手に持っている、アキラくんが作ってくれたバウンドケーキと紅茶を凝視した。甘いものが好きなのか、ずっとそれを物欲しそうに見つめていた。
「えっと、アキラくんがおやつ作ってくれたんだ。受け取って欲しいから、もう少しだけドアを開いてくれると嬉しいな」
 僕がそう言うと、碧ちゃんは仕方なさそうに無言でドアをもう少し開けてくれた。碧ちゃんがバウンドケーキと紅茶を乗せたおぼんを受け取ろうとする。このまま碧ちゃんにおやつを渡しただけでは、アキラくんがせっかく作ってくれたチャンスが台無しになる。
 僕は何か話すきっかけがないか、失礼ながらも部屋の中に視線を移して、何か話題がないか急いで探した。それは、意外にも早く見つかることになる。
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