神様のお導き

ヤマト

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7話目!灰冶の章 夢境の栞

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 翌日、ギィはちゃんと街から少し離れた場所で待機していた。
「偉いね、ギィ!」
 僕がそう褒めると、ギィから予想外の返事が返ってきた。
「ギィ昨日別れてからずっとここにいた! いつタクトとハイジが来ても良いようにずっといた! ギィ偉い!」
「ずっと居たの!?」
 まさかの返事に僕は驚きながらも、少しギィらしいと納得してしまった。しかし、ギィはすぐに僕の後ろに視線が釘付けになっていた。それもその筈、だって今僕の後ろにいるのは、カッチリとした黒のスーツで身を固めたメイクもしていない灰冶さんなのだから。灰冶さんは髪型もビシッと決めており、どこからどうみても出来る男。スラリと伸びた長い脚にスーツがよく似合う……。正直こんな完璧なルックスの人の横に立ちたくはない。
「コレ、ダレ?」
 ギィの反応に、僕もそりゃそうなるよなと思った。普段かなり濃いメイクをしている灰冶さんからは考えられないほどの変わりっぷり。化粧してないとめちゃくちゃかっこいいんだ、この人。
「失礼だね。私だよ、灰冶だよ」
 おまけに喋り方も普通の男の人だ。まぁノーメイクで晩御飯食べてる時はいつもこんなだけど。彼が女性のような口調で喋るのは、いつもメイクしている状態の時だけだ。メイクが彼のオンとオフのスイッチなのだろう。
「ハイジ? ハイジ違う、ハイジもっと性別不明」
「あぁ、そうだね。でも今日はこれが灰冶だ。わかったね?」
 柔らかい口調でそう諭す灰冶さんに、ギィは首を傾げながらも返事をした。
「わかんないけどわかった!」
「よろしい」
 ……それで良いのか。まぁ、説明してもギィには理解できないかもしれないしな。

 その後、ギィを人間の姿にし、ギィにもカッチリとした黒のスーツを着せた。ちなみに僕は外出するときは大体スーツだ。なので特に変わり映えなし。
「拓斗、良いかい? まず、この招待状。これを受付の人に見せて」
 灰冶さんは白い封筒に入った黒いチケットのような招待状を見せた。
「これは偽造だけれど、これを受付に渡すと渡した相手に催眠術がかかるようになっている。受付はなんの疑いもなく、私たちを招待された者と思い込んで、中に入れてくれるだろう」
「お、おぉ……!」
「次にこれ、名刺だ。内容は勿論名前以外デタラメ。この名刺にも催眠術がかけられている。会場にいる間、名刺を渡した相手には、自分たちの存在を認知されているけど、私たちが会場から出た瞬間、その名刺は消え、私たちの存在も記憶から消える。それは受付に渡した招待状も同様。だから、どれだけ捏造した内容の商談をしてもなかったことになる。気が済むまで嘘をついて、怪しまれないようにしてくれよ」
 ニッコリと笑って名刺入れごと名刺を渡してくる灰冶さんに、僕は引き攣った笑みを浮かべた。つまり、不法に潜入してきたことを怪しまれないように、うまく商人の振りをして話を聞き出せと言われている。記憶を抹消してくれるのは有難いけど、それ以上にプレッシャーがやばい。

 そして、僕らはいよいよ会場へと潜入した。会場の場所は灰冶さんが知っていて、案内してもらったけれど、それは巨大なドーム状の建物で、見るからにお金持ちそうな人ばかりが集まっていた。
 僕は灰冶さんに言われた通り会場の受付で招待状を渡す。受付の人はそれを丁寧に開封し、チケットを裏表キッチリ確認していた。灰冶さんの言った通り、受付の人はなんの疑いもなしに、すんなりと僕らを中へと通してくれる。
「中へどうぞ。ごゆっくり」
 深々と頭を下げる受付の人に見送られ、僕らは会場の中へと足を踏み入れた。中は多くの人で賑わい、皆、自身の自慢の商品を片手に、楽しく談笑していた。チキンやケーキなどのビュッフェがテーブルの上には並んでおり、ウェイターがワインや高そうな飲み物を運んでいる。招待制なだけあって、みんな凄腕の商人たちが集まっているのだと一目でわかった。
「さ、この中からクロエの父上を探すよ」
「は、はい!」
「オデ、ガンバル! 匂いでわかる!」
「うん! ……うん?」
 僕は気合いのガッツポーズを取っていたが、ギィの最後の言葉に首を傾げた。
「匂いでわかる?」
「うん! ギィ、鼻大きい。鼻は匂い嗅ぎ分けるため。ギィ、クロエに近い匂いの人探す!」
「え、何それ、すごい」
 こんな膨大な人数の中からクロエさんの父親を探すなんて至難の業だと思っていたけれど、ギィの予想外の特技に僕は救われたようだ。灰冶さんも「おや」と、愉快そうに笑っていた。
 ギィは人間の姿で鼻をスンスンと動かして、目を閉じて集中してクロエさんのお父さんを探しているようだった。しばらく鼻を啜り、ギィは何かを察知したように、ゆっくりと動き出す。一歩一歩確実に。そして、僕らはある人物の前で立ち止まった。それは、壁際でワインを飲んでいる男の人の姿。
「あの人?」
 ギィにそう聞くと、ギィはうんうんと首を縦に振った。僕らは彼へと怪しまれないように近付いた。
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