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甘いひととき

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「ハァハァッ……ハァ、ハァッ……ハァハァッ……」

 達してからだいぶたっても息が整わないアンジュが心配になる。

「アンジュ……」

 頬に手を添えると、アンジュが自分の手を重ねて微笑んだ。

「ハァ、ごめ……ハァッ……ハァッ……普段、ハァッハァッ……うんど……ハァッ……しない、からっハァッ、ハァッ……」

 アンジュが片手で僕の首元に抱きつき、身体を引き寄せる。

「ハァッ……もう、大丈夫……ハァッ……ルネと……繋がり、たい……ハァ……」

 それは、どう考えても大丈夫ではない声音だった。

「無理、しないで。別に、身体の繋がりだけを求めてるわけじゃないから」

 アンジュと身体を繋げたい、その欲情は確かにある。
 けれど、彼女の体調を無視してまで欲したいとは思わなかった。

 アンジュはようやく整ってきた呼吸を一気に吐き出した。

「女の子だって、男の子を求めるものよ。私の雌としての本能が、ルネを求めて疼いてるの……」

 アンジュは僕の猛りを温みの入口へと誘うように押し付けた。それは、単なる欲情からだけではない、何か必死なものを感じた。

 僕たちの関係が、刹那的だから……そう、感じるのかな。

「分かったよ。でも、決して無理はしないで。
 苦しくなったら、すぐに言って欲しい」

 そう言った僕に、アンジュは笑顔を浮かべた。

「うん」

 ゆっくりと自身をアンジュの中心へと埋めていく。

 わっ。温かくて、包み込まれていくみたいだ……

 アンジュの中の熱い複雑な襞が、僕を包み込んでは奥へ奥へと引き込んでいく。アンジュの負担をかけないようにゆっくり動かないと、って思っていたけど……このままでもすごく、気持ちいい。

「ハァ……すごく、気持ちいい……」

 アンジュが耳元で吐息を漏らす。

「苦しく、ない?」

 心配そうに尋ねる僕に、アンジュは僕の頬を手で包み込んだ。

「ううん、全然……ずっとこのまま朝まで繋がっていたいくらい」
「僕は……どうかな。そこまでは、耐えられる自信、ないよ……」

 僕が苦笑いすると、アンジュはふふっと笑った。

 こういうのを人は『幸せ』って呼んでいるのだろうか……
 心が温かくて、満たされて……少し、泣きたい気分になる。

 僕達は穏やかに愛しあった。

 長く緩く続く快感の波を泳いで……時々、波に攫われそうになったり、波が引いていったりしながら……お互いの身体を感じ合い、身体と心を繋げて、甘い吐息に沈んでいった。

 身体の体勢を整えようとした時、猛りの根元がアンジュの敏感な部分に触れ、

「ぁ……」

 切ない溜息と共に内壁がきつく締まり、僕の猛りに絡みつき、締め上げてきた。

「くっ」

 突然の激しい吐精感に襲われる。今までは何とか誤魔化して耐えてきたけど、これはかなりキツい。

「ルネ、イって……」

 その言葉に押されて、僕は緩やかだけれど確実に高みへと導くポイントを突きながら腰を上下に揺らし始めた。

 蜜で蕩ける熱い中心と、どちらに動かしても猛りに絡み付いて締め上げ、離さない触手のような複雑な内壁の襞に昂ぶりがどんどん高まり、身体中の血液が中心へと渦巻くように集まってくるのを感じる。

 くる……

「ハァ……す、ご……あ…な、んか……きそ……か、も……ハァッ……あっ!……んっ、んんぅぅぅっっっ!!」

 アンジュは僕の背中に手を回し、何度も秘部を小刻みに痙攣させた。そのたびに噛みちぎられそうなほど内側がきつく締まり、僕の中心に一気に熱いものが流れ込んでくる。

「ア……ンジュ……っく……」
「ッ……ッッァァ!」

 僕達は、同時に高みへと昇った。
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