上 下
17 / 19
優くんなんてっ!!……大好き、なんだから。

しおりを挟む
 部屋のベッドに寝転がって、溜息を吐く。

 いったい私は、何のために埼玉まで行ったんだろう。
 優くんが試合に勝って優勝することしか、頭になかった。

 それで再会して、全てが上手くいくと思ってたのに……

 いつも真っ直ぐに私を見つめていてくれた優くんが、初めて私から目を逸らした。

 帰り際、中村さんから言われた言葉を思い出す。

『優作はさ、ミーコちゃんにかっこ悪いところ見られて、ショックだったんじゃないかな。男って繊細な癖にプライド高いし、好きな女の子には特にいいとこ見せたがるもんだからさ。
 優作の気持ちが落ち着くまで、そっとしておいた方がいいんじゃないかな』

 中村さんから優くんに会いに行くようにけしかけておきながら、そんなこと言うなんてズルい。 スマホを手にして、画面を確認する。

 優くんからの着信も、LINEもない。

 今までだって、優くんと連絡とらないままだったんだよ。私が行動しなきゃ、この恋は……終わっちゃうんじゃないの?

 そう思って、優くんに電話しようとしたけど……指が震えて、ボタンが押せなかった。

 それならばと、LINEを開いて、メッセージを打ち込んだ。でも、考えがまとまらなくて、何度も作っては消し、作っては消して……結局、何も送れないまま、画面を閉じた。

 優くんは今頃……どうしてるんだろう。
 会いたい。会いたいよ、優くん……

 ベッドに俯せになり、熱くなる瞼を枕に押し付けた。

 もし、優くんが近くに住んでたら、何も言わなくたって側にいるだけで……気持ちが伝わってたんじゃないかな。

 スマホを手に取ってネットを開くと、優くんの高校を検索した。

 優くんのいる埼玉の私立高校は『文武両道』をモットーにしていて、バド部だけでなく、様々なスポーツに力を入れててスポーツ推薦なんかも盛んらしい。で、有名大学進学率もかなり高いのだとか。その分入学金や授業料がめちゃめちゃ高くて、優くんは奨学金もらってるから学費の何割かが免除になるけど、私なんて入学金や授業料に加えて寮のお金までかかるから、とてもじゃないけど受験なんて出来ないよ。

 しかも、パパもママも私が家から出るなんて言ったら絶対反対するだろうし……

 そこまで考えてから、ハッとした。

 何考えてんの私!? 私は優くんみたいに、バドミントンに青春かけてるわけじゃない。そんな私がわざわざ埼玉の私立高校なんて入ってどうすんの!?
 そりゃ、入学して1年は優くんがいて楽しいかもしんないけど、その後はまた優くんは大学入って離れ離れになっちゃうのに、そんなバカみたいなこと出来るわけない。

 それに……きっと、優くんだって望んでないと思う。
 だから、『必ず戻ってくるから、待ってて欲しい』って中学の卒業式の後に言ったんだよね?

 優くんには優くんの目標があって、それを私は自分の目標にしちゃダメ。私には、私自身の未来があるから。

 でも、だからって優くんを好きな気持ちは変わらない。私たちの気持ちは、どうしたら合わさることが出来るのかな。
しおりを挟む

処理中です...