1 / 14
箱入り令嬢は密かに慕う執事に夜伽の手解きを受け、快楽に沈む
1
しおりを挟む
この日、ハミルトン家の屋敷では盛大にアリアの16歳の誕生日パーティーが行われた。先日デビュタントとして社交界デビューもし、これで大人の一員になったことになる。
目が覚めるような美しいブロンドの巻き髪に、零れるような魅力的な大きなパープルの瞳はまるでサファイアのように光輝き、誰をも笑顔にする微笑みを浮かべるアリアは、家族や親しい友人、たくさんの人たちにお祝いの声をかけられ、幸せな1日を過ごした。
「今日は素敵な誕生日のお祝いを催してくださり、本当にありがとうございました」
パーティーが終わってゲストを見送った後、興奮冷めやらぬ様子でアリアは両親に笑顔で話しかけた。
普段ならその笑顔に嬉しそうに答える両親だったが、今は複雑な表情を浮かべている。そのことに気づいたアリアは、怪訝な顔で尋ねた。
「お父様、お母様……どうかされたのですか?」
何も言えずに黙っている父のジョシュアに代わり、母のフランシカが答えた。
「実は、ハミルトン家には一つ仕来りがありまして……16歳を迎えたら、ある儀式をしなければならないのです」
アリアは眉を顰めた。
「儀式、ですか?」
ジョシュアが言葉を濁すようにした。
「あぁ。大人になる為の儀式だ……詳しくはスペンサーに聞いてくれ」
アリアの心臓がその名前を聞いた途端、トクン、と跳ねた。
「スペンサー、ですか?」
すると、扉をノックする音が響き、執事のスペンサーが入ってきた。深い闇のごとく一点の曇りもない漆黒の肩までの髪を後ろでひとつに纏め、リムレスの眼鏡をかけたシルバーグレーの瞳からは知的さが溢れ、すらっとした長身に執事服である燕尾服をスマートに着こなしている。
スペンサーは代々ハミルトン家に仕える執事の血筋だ。12歳の時に父母が不慮の事故で他界してからもハミルトン家に世話になり、16歳からは執事として支えている。現在28歳と執事としては若いが経歴は12年で、今ではハミルトン家を取り仕切るだけではなく、ジョシュアの秘書をも務める非常に優秀な男だ。
「お待たせ致しました」
スペンサーが声をかけたが、ジョシュアは何か迷っているかのように、俯いて黙っている。そして、何か決心したかのようにキッと顔を上げた。
「……いや、こんな古い慣習を未だに守ろうなんて馬鹿げている。スペンサー、やはり今日の儀式はやめよう。
アリアに、こんな無理強いはさせたくない」
「あなた……」
フランシカは、夫の顔を心配そうに見つめた。そんなふたりの会話に、アリアの胸が不安でいっぱいになる。
お父様とお母様は、何を言っているの? 儀式って、いったい何をするの?
スペンサーは、ふたりに優美な笑みを浮かべた。
「お嬢様を心配する旦那様のお気持ちは分かりますが、これはお嬢様のためでもあるのですよ。もし、あの儀式をしなければ、そんなことになった時にもっと酷いショックを受けかねません。
私は執事として、完璧にお嬢様に手解きをして差し上げることが出来ます。どうか、ご心配なさらないで下さい」
スペンサーの余裕に満ちた言動に、ジョシュアも渋々ながら納得した。
「……そうだな。アリアの将来を思えば、今しっかりと儀式を済ませておいた方がいいのかもしれないな」
「儀式って、何なんですか。一体、どんなことをするんですか」
アリアの疑問の声に、両親はハッとし、口を閉ざした。
スペンサーが、アリアに手を差し出す。
「どうかお嬢様、ご心配なさらず。今宵の儀式の準備がございますので、お部屋までお連れ致しましょう」
有無を言わせぬスペンサーの圧力に、アリアは反論することが出来なかった。
「……えぇ、わかりました。お父様、お母様、おやすみなさいませ」
両親は心配そうな表情でアリアを見送った。
「おやすみ」
「おやすみなさい、アリア」
目が覚めるような美しいブロンドの巻き髪に、零れるような魅力的な大きなパープルの瞳はまるでサファイアのように光輝き、誰をも笑顔にする微笑みを浮かべるアリアは、家族や親しい友人、たくさんの人たちにお祝いの声をかけられ、幸せな1日を過ごした。
「今日は素敵な誕生日のお祝いを催してくださり、本当にありがとうございました」
パーティーが終わってゲストを見送った後、興奮冷めやらぬ様子でアリアは両親に笑顔で話しかけた。
普段ならその笑顔に嬉しそうに答える両親だったが、今は複雑な表情を浮かべている。そのことに気づいたアリアは、怪訝な顔で尋ねた。
「お父様、お母様……どうかされたのですか?」
何も言えずに黙っている父のジョシュアに代わり、母のフランシカが答えた。
「実は、ハミルトン家には一つ仕来りがありまして……16歳を迎えたら、ある儀式をしなければならないのです」
アリアは眉を顰めた。
「儀式、ですか?」
ジョシュアが言葉を濁すようにした。
「あぁ。大人になる為の儀式だ……詳しくはスペンサーに聞いてくれ」
アリアの心臓がその名前を聞いた途端、トクン、と跳ねた。
「スペンサー、ですか?」
すると、扉をノックする音が響き、執事のスペンサーが入ってきた。深い闇のごとく一点の曇りもない漆黒の肩までの髪を後ろでひとつに纏め、リムレスの眼鏡をかけたシルバーグレーの瞳からは知的さが溢れ、すらっとした長身に執事服である燕尾服をスマートに着こなしている。
スペンサーは代々ハミルトン家に仕える執事の血筋だ。12歳の時に父母が不慮の事故で他界してからもハミルトン家に世話になり、16歳からは執事として支えている。現在28歳と執事としては若いが経歴は12年で、今ではハミルトン家を取り仕切るだけではなく、ジョシュアの秘書をも務める非常に優秀な男だ。
「お待たせ致しました」
スペンサーが声をかけたが、ジョシュアは何か迷っているかのように、俯いて黙っている。そして、何か決心したかのようにキッと顔を上げた。
「……いや、こんな古い慣習を未だに守ろうなんて馬鹿げている。スペンサー、やはり今日の儀式はやめよう。
アリアに、こんな無理強いはさせたくない」
「あなた……」
フランシカは、夫の顔を心配そうに見つめた。そんなふたりの会話に、アリアの胸が不安でいっぱいになる。
お父様とお母様は、何を言っているの? 儀式って、いったい何をするの?
スペンサーは、ふたりに優美な笑みを浮かべた。
「お嬢様を心配する旦那様のお気持ちは分かりますが、これはお嬢様のためでもあるのですよ。もし、あの儀式をしなければ、そんなことになった時にもっと酷いショックを受けかねません。
私は執事として、完璧にお嬢様に手解きをして差し上げることが出来ます。どうか、ご心配なさらないで下さい」
スペンサーの余裕に満ちた言動に、ジョシュアも渋々ながら納得した。
「……そうだな。アリアの将来を思えば、今しっかりと儀式を済ませておいた方がいいのかもしれないな」
「儀式って、何なんですか。一体、どんなことをするんですか」
アリアの疑問の声に、両親はハッとし、口を閉ざした。
スペンサーが、アリアに手を差し出す。
「どうかお嬢様、ご心配なさらず。今宵の儀式の準備がございますので、お部屋までお連れ致しましょう」
有無を言わせぬスペンサーの圧力に、アリアは反論することが出来なかった。
「……えぇ、わかりました。お父様、お母様、おやすみなさいませ」
両親は心配そうな表情でアリアを見送った。
「おやすみ」
「おやすみなさい、アリア」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
214
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる