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会場に行ったら、豪華な披露宴になっていました
披露宴は当初、ジュリエッタの屋敷で行うつもりだったのだが、招待客が予定よりも多くなったため、公爵夫人の希望もあってフランツの屋敷の大ホールで行うことになった。
結婚式を終えたフランツとジュリエッタは教会か馬車に乗り込み、公爵邸へと向かった。
披露宴が開かれるのは3時間後のため、いったんフランツの部屋で休憩し、その後会場となる大ホールを確認することにした。
ホールに入ると、ジュリエッタが頼んでいたよりも多くの花があちこちに飾られ、何列にも並んだ長テーブルにはシルクに金糸の刺繍が彩られたクロスが敷かれ、高級なお皿やグラスが並び、豪華な演出となっていた。
なによりも目を引いたのは、高い花のアーチで囲まれた中心に置かれている3段に積み上げられた、大きなウェディングケーキだった。
嘘……私、2段で頼んでいたはずなのに。
1840年のヴィクトリア女王とアルバート公の結婚式以降、少しずつウェディングケーキの習慣が広がってはいたものの、高価であるために、ここまで立派なウェディングケーキは貴族の結婚式であってもなかなか見られるものではない。
す、すごいことになっているわ……
ジュリエッタが圧倒されていると、グローセスター公爵夫人がメイド達に指示しながら、更に花を運びこませているところだった。夫人がジュリエッタをみとめたとたん、満面の笑みで歩み寄る。
「あぁ、ちょうどよかったわ、ジュリエッタ。どう、披露宴の装飾は? 気に入ってもらえたかしら?」
「え、えぇ……とても素敵ですわ。ですが……私が頼んでいたよりもかなり豪華になっている気がするのですが」
これ、いくらかかるんだろう。
通常、娘を嫁に出す場合、嫁入り道具に加えて多額の持参金を用意しなくてはならない。ジュリエッタの場合はフランツを婿として迎えるので持参金は必要なくなるため、その代わりに挙式と披露宴にかかる費用をジュリエッタ側が支払うことになっていた。
「これは私がジュリエッタのためにやりかたったことだから、その分のお金はうちで払わせてちょうだいね。
せっかくの披露宴ですもの。豪華にしなくては」
張り切る夫人を前にジュリエッタは恐縮し、フランツは苦笑いを浮かべた。
「ジュリエッタ、挙式で疲れていない? 準備は私たちに任せて、休んでいてくれていいのよ?
これからまだ、披露宴は長いんですからね」
「お気遣い、ありがとうございます。こんな素敵な披露宴の場を用意してくださり、とてもありがたく思っています」
夫人は相変わらずジュリエッタに優しく、心から息子との結婚を喜んでくれているのが伝わってきた。
夫人と話している間に、トレンスと妻のエルシーが会場に入ってきた。
「ジュリエッタ、フランツ、結婚おめでとう」
それから、ふたりで顔を合わせる。
「僕たちも、いいニュースがあるんだ」
トレンスが促し、エルシーがそっとジュリエッタの耳に口元を寄せる。
「実はね……赤ちゃんができたの」
ジュリエッタが、わぁっと顔を綻ばせた。
「おめでとうございます! 楽しみですね!」
トレンスだけでなく、夫人もフランツもにこにこしている。どうやら知らなかったのは、ジュリエッタだけのようだ。
「結婚したと思ったら、フランツはすぐ叔父さんになるな」
後ろから声が聞こえてきて振り返ると、ニコラスが車椅子のロワールを押していた。
「ロワール、お体は大丈夫ですの?」
ジュリエッタが心配そうに声をかけると、ロワールが微笑んだ。
「あまり長居はできないけれど、せっかくの二人の晴れの日だから、少しでも一緒に時間を過ごしたいんだ」
そこへ、遅れてジュリエッタの両親がミッチェルが会場入りした。
ミッチェルはあの舞踏会での騒ぎ以降、フランツとはジュリエッタの屋敷で会って何度か話をしているが、フランツの家族とは会っていなかった。
ミッチェルは一歩前に進み出ると、皆に向かって頭を下げた。
「あ、あの……舞踏会の時は、大変失礼いたしました」
フランツの家族は、事前にジュリエッタからミッチェルの事情を聞いていた。
公爵がミッチェルに優しく声をかける。
「どうか、もう気にしないでおくれ。君は、もう私たちの家族でもあるのだから」
「そうですよ。可愛い娘がまたひとり増えて、嬉しいわ」
夫人がにっこりと微笑むと、トレンスとエルシー、ロワールも互いに顔を見合わせて笑顔で頷いた。
ミッチェルは涙を浮かべて何度も謝り、夫人に抱き締められた。温かく迎えてくれるフランツの家族に、ミッチェルの心も次第に柔らかくなっていった。
この日、300名もの招待客が披露宴に参加した。豪勢な食事が次から次に出され、フルコース以上の品数が出され、伝統的なデザートだけでなく、異国のお菓子なんかも出された。
ニコラスはその席で、ジュリエッタが自分の後を継いでジェントリとなることを発表した。
女性がジェントリを継ぐことに対して反対の声が上がるのではないかと恐れていたジュリエッタだったが、そこは女王が国をおさめる英国のこと。何よりジュリエッタの仕事を高く評価する声が多く上がっていたため、ニコラスの決定を快く受け入れてもらえた。
ジュリエッタはこれでようやく肩の荷がおりた気がし、心ゆくまで披露宴を楽しむことができた。ミッチェルの指導のおかげでファーストダンスを上手く踊れることができたし、苦手なピアノの演奏はミスは幾つかあったものの、今までで一番上手にできたように思う。
皆が口々にフランツとジュリエッタにお祝いの言葉をかけ、お酒を酌み交わし、盛大な披露宴は夜が明けるまで賑やかに行われた。
結婚式を終えたフランツとジュリエッタは教会か馬車に乗り込み、公爵邸へと向かった。
披露宴が開かれるのは3時間後のため、いったんフランツの部屋で休憩し、その後会場となる大ホールを確認することにした。
ホールに入ると、ジュリエッタが頼んでいたよりも多くの花があちこちに飾られ、何列にも並んだ長テーブルにはシルクに金糸の刺繍が彩られたクロスが敷かれ、高級なお皿やグラスが並び、豪華な演出となっていた。
なによりも目を引いたのは、高い花のアーチで囲まれた中心に置かれている3段に積み上げられた、大きなウェディングケーキだった。
嘘……私、2段で頼んでいたはずなのに。
1840年のヴィクトリア女王とアルバート公の結婚式以降、少しずつウェディングケーキの習慣が広がってはいたものの、高価であるために、ここまで立派なウェディングケーキは貴族の結婚式であってもなかなか見られるものではない。
す、すごいことになっているわ……
ジュリエッタが圧倒されていると、グローセスター公爵夫人がメイド達に指示しながら、更に花を運びこませているところだった。夫人がジュリエッタをみとめたとたん、満面の笑みで歩み寄る。
「あぁ、ちょうどよかったわ、ジュリエッタ。どう、披露宴の装飾は? 気に入ってもらえたかしら?」
「え、えぇ……とても素敵ですわ。ですが……私が頼んでいたよりもかなり豪華になっている気がするのですが」
これ、いくらかかるんだろう。
通常、娘を嫁に出す場合、嫁入り道具に加えて多額の持参金を用意しなくてはならない。ジュリエッタの場合はフランツを婿として迎えるので持参金は必要なくなるため、その代わりに挙式と披露宴にかかる費用をジュリエッタ側が支払うことになっていた。
「これは私がジュリエッタのためにやりかたったことだから、その分のお金はうちで払わせてちょうだいね。
せっかくの披露宴ですもの。豪華にしなくては」
張り切る夫人を前にジュリエッタは恐縮し、フランツは苦笑いを浮かべた。
「ジュリエッタ、挙式で疲れていない? 準備は私たちに任せて、休んでいてくれていいのよ?
これからまだ、披露宴は長いんですからね」
「お気遣い、ありがとうございます。こんな素敵な披露宴の場を用意してくださり、とてもありがたく思っています」
夫人は相変わらずジュリエッタに優しく、心から息子との結婚を喜んでくれているのが伝わってきた。
夫人と話している間に、トレンスと妻のエルシーが会場に入ってきた。
「ジュリエッタ、フランツ、結婚おめでとう」
それから、ふたりで顔を合わせる。
「僕たちも、いいニュースがあるんだ」
トレンスが促し、エルシーがそっとジュリエッタの耳に口元を寄せる。
「実はね……赤ちゃんができたの」
ジュリエッタが、わぁっと顔を綻ばせた。
「おめでとうございます! 楽しみですね!」
トレンスだけでなく、夫人もフランツもにこにこしている。どうやら知らなかったのは、ジュリエッタだけのようだ。
「結婚したと思ったら、フランツはすぐ叔父さんになるな」
後ろから声が聞こえてきて振り返ると、ニコラスが車椅子のロワールを押していた。
「ロワール、お体は大丈夫ですの?」
ジュリエッタが心配そうに声をかけると、ロワールが微笑んだ。
「あまり長居はできないけれど、せっかくの二人の晴れの日だから、少しでも一緒に時間を過ごしたいんだ」
そこへ、遅れてジュリエッタの両親がミッチェルが会場入りした。
ミッチェルはあの舞踏会での騒ぎ以降、フランツとはジュリエッタの屋敷で会って何度か話をしているが、フランツの家族とは会っていなかった。
ミッチェルは一歩前に進み出ると、皆に向かって頭を下げた。
「あ、あの……舞踏会の時は、大変失礼いたしました」
フランツの家族は、事前にジュリエッタからミッチェルの事情を聞いていた。
公爵がミッチェルに優しく声をかける。
「どうか、もう気にしないでおくれ。君は、もう私たちの家族でもあるのだから」
「そうですよ。可愛い娘がまたひとり増えて、嬉しいわ」
夫人がにっこりと微笑むと、トレンスとエルシー、ロワールも互いに顔を見合わせて笑顔で頷いた。
ミッチェルは涙を浮かべて何度も謝り、夫人に抱き締められた。温かく迎えてくれるフランツの家族に、ミッチェルの心も次第に柔らかくなっていった。
この日、300名もの招待客が披露宴に参加した。豪勢な食事が次から次に出され、フルコース以上の品数が出され、伝統的なデザートだけでなく、異国のお菓子なんかも出された。
ニコラスはその席で、ジュリエッタが自分の後を継いでジェントリとなることを発表した。
女性がジェントリを継ぐことに対して反対の声が上がるのではないかと恐れていたジュリエッタだったが、そこは女王が国をおさめる英国のこと。何よりジュリエッタの仕事を高く評価する声が多く上がっていたため、ニコラスの決定を快く受け入れてもらえた。
ジュリエッタはこれでようやく肩の荷がおりた気がし、心ゆくまで披露宴を楽しむことができた。ミッチェルの指導のおかげでファーストダンスを上手く踊れることができたし、苦手なピアノの演奏はミスは幾つかあったものの、今までで一番上手にできたように思う。
皆が口々にフランツとジュリエッタにお祝いの言葉をかけ、お酒を酌み交わし、盛大な披露宴は夜が明けるまで賑やかに行われた。
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