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一抹の不安
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『うん。まぁクリスマスは12月25日なんだけど、その時期はみんなクリスマスコンサートとかで忙しいから、毎年22日にモルテッソーニの家でクリスマスパーティーするんだぁ。シューイチが帰ってきてるって言ったら、みんな連れてこいって煩くて。モルテッソーニも会いたいって言ってるし、絶対に来てよ!』
そ、そうだったんだ……
秀一さんにはモルテッソーニと会わせるとは言われたけど、クリスマスパーティーだったなんて、知らなかった。
秀一は美しい所作でメランジェを口に運んだ後、落ち着いた口調でザックに言った。
『えぇ、事前にモルテッソーニには連絡してあります』
ザックがSワードを口にした後、地団駄を踏んだ。
『えーっ!!あのじいさん、シューイチが帰って来ること知ってたの!?僕、教えてもらってないんだけどっっ!!!』
『私が、口止めしておいたのですよ。話したら全員で空港に迎えに来そうだと思ったので』
『そりゃ、もちろんそうでしょ!!みんな早くシューイチに帰って来て欲しいって思ってんだから』
『やはり連絡しなくて正解でしたね』
『シューイチー!!!』
ずっと黙ってふたりのやり取りを見ていた美姫を、秀一が気遣うように少し斜めから見つめた。
『美姫は…大丈夫ですか?』
『え、えぇ……秀一さんのお師匠と兄弟弟子の方達と会えるのが楽しみです』
その後、ザックはモルテッソーニや兄弟弟子についての話で盛り上がっていたが、美姫の耳には入ってこなかった。
『帰る』って、どういう意味……?
美姫は、ザックが秀一がオーストリアに来たことを『帰ってきた』という表現をするのが気にかかった。
ここは、秀一さんの生まれた国でも育った国でもない。たった二年間ピアノを勉強するために……それだけの為に滞在した場所、じゃないの?
秀一さんの居場所はここじゃない……日本のはず……私の…傍に、いてくれる、はず……
そう、思うのに……不安が雨雲のように美姫の胸を覆い尽くす。湿気を吸ってどんどん大きくなり、吸収しきれなくなり、今に大豪雨となって自分の心に打ち付けるんじゃないかと怯えてしまう。
単なる英語の言い回しなのかもしれない。それに、ザックは以前にも秀一さんにオーストリアにまた来て欲しいって言ってたし、ザックのその気持ちが彼にああいった言い方をさせているのかもしれないし……
そう強く念じるように心の中で思った後、美姫はカップに残ったメランジェを一気に飲み干した。喉元を過ぎた後、苦味が美姫の舌に広がっていった。
そ、そうだったんだ……
秀一さんにはモルテッソーニと会わせるとは言われたけど、クリスマスパーティーだったなんて、知らなかった。
秀一は美しい所作でメランジェを口に運んだ後、落ち着いた口調でザックに言った。
『えぇ、事前にモルテッソーニには連絡してあります』
ザックがSワードを口にした後、地団駄を踏んだ。
『えーっ!!あのじいさん、シューイチが帰って来ること知ってたの!?僕、教えてもらってないんだけどっっ!!!』
『私が、口止めしておいたのですよ。話したら全員で空港に迎えに来そうだと思ったので』
『そりゃ、もちろんそうでしょ!!みんな早くシューイチに帰って来て欲しいって思ってんだから』
『やはり連絡しなくて正解でしたね』
『シューイチー!!!』
ずっと黙ってふたりのやり取りを見ていた美姫を、秀一が気遣うように少し斜めから見つめた。
『美姫は…大丈夫ですか?』
『え、えぇ……秀一さんのお師匠と兄弟弟子の方達と会えるのが楽しみです』
その後、ザックはモルテッソーニや兄弟弟子についての話で盛り上がっていたが、美姫の耳には入ってこなかった。
『帰る』って、どういう意味……?
美姫は、ザックが秀一がオーストリアに来たことを『帰ってきた』という表現をするのが気にかかった。
ここは、秀一さんの生まれた国でも育った国でもない。たった二年間ピアノを勉強するために……それだけの為に滞在した場所、じゃないの?
秀一さんの居場所はここじゃない……日本のはず……私の…傍に、いてくれる、はず……
そう、思うのに……不安が雨雲のように美姫の胸を覆い尽くす。湿気を吸ってどんどん大きくなり、吸収しきれなくなり、今に大豪雨となって自分の心に打ち付けるんじゃないかと怯えてしまう。
単なる英語の言い回しなのかもしれない。それに、ザックは以前にも秀一さんにオーストリアにまた来て欲しいって言ってたし、ザックのその気持ちが彼にああいった言い方をさせているのかもしれないし……
そう強く念じるように心の中で思った後、美姫はカップに残ったメランジェを一気に飲み干した。喉元を過ぎた後、苦味が美姫の舌に広がっていった。
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