あべこべな世界で普通の恋愛を!?

takupon

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7話目 新たなキャラは訳あり少女に、ザッ悪女な店員であった。普通の恋愛どころか、普通の生活も出来ない僕は苦痛だ。

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「な、なんのことですか?この子は、な、な、にもしてませんよ?!」

しらばっくれるが、こんな経験は初めてなので困惑が声に出てしまう。なんせ、初対面の万引き少女を出来ればと言う安易な考えで、店員から庇おうとしているのだ。
取り敢えず少女を背に置き、戸惑いの顔を見させないようにする。

「こ、この子はきっと籠の代わりに鞄に入れてたんですよっ?ねっ?」

鹿呂は後ろで静かにしている少女に投げ掛けるが、

「……」

先程とは対照的に黙り込んでしまう。あれほど忙しなかったのが嘘のようだ。

「あらら~」と露骨な反応を示す店員は、





「嘘が下手だね~、少年。嘘をつく子にはお仕置きしちゃうぞっ♪」






美少女の口元が限界まで引きあがる。
鹿呂は瞬間的に思ってしまった。





――――この女はヤバい。





頭に警報が鳴り響いた。
全身に鳥肌が立つ。寒気がする。ゾクゾクする。背筋が冷たい。悪寒がする。
どれもこれもこの美女には物足りない。
言い表しにくいが、これはなんというか、そう。



――――憎悪。





「あ、今~私のこと苦手意識したでしょ?そういうのは関心しないぞっ、プンプン」

感情が表に出ていたのだろうか。効果音を口に出す美少女は、緩まない笑顔で指摘する。
美少女は黒く伸びたしなやかな髪をクルクルと手で巻く。悪役の貫禄があった、言ってはあれだけれど。


「おっ、なんだなんだ。二人して黙り込んじゃって。そんなに畏まらなくたって悪いようにはしにゃいぞ~にゃんにゃん」

一人だけ温度差がある中、後ろで縮こまっていた少女が何も言わず立ち上がる。

「ハイハーイ、事務所に行きましょね~」

少女の腕を強引に掴み連行する美少女店員。
そこへ、

「ちょ、ちょっと待って?!」

待ったをかける。

「ぼ、僕も連れてってくれませんか?!」

後ろめたさが残った眼をした少女と、ケータイをチラつかせる店員を呼び止める。
自分でもどうしてこんなことを言っているのか分からなかった。身体が動いていたのだ。口が勝手に喋っていたのだ。
 
「いいよいいよ、むしろウェルカムだよっ♪」

店員は少女の腕を無造作に放り出し、鹿呂に近づいてくる。まるで少女が起こしたことは些細なことであったかのように。

「それよりもなんで一人でここにいるの?朝早くからか弱い男の子がこんあとこにいたら、私みたいな変人に襲われちゃうんだよ。ね、君もそう思うよね?」

自分を変人と言う、正に変人な店員は俯く少女に問い掛ける。
答えは返事はこない。

「ム~、無視は酷いな~」

弾まない会話をしながらも事務所に到着する。机にイスがある質素なものである。

「あ、あの、店員さんは貴方一人しか居ないように見えたんですけど、留守にして大丈夫なんですか?」

「気にしない気にしない!男の子を優先するのが女の本能さっ♪」

スカートの裾を掴みお辞儀のポーズを取る店員は、「座って座って!」と促す。

「先ずは自己紹介からだねっ。僕は海老名(えびな)って言うんだ。君達は?」

まさかの僕っ子に戸惑いを隠せない鹿呂。実は鹿呂の好きなタイプに僕っ子がジャストインしているのだ。
そんなことはさて置き、

「悠長に自己紹介なんてしていいんでしょうかね……僕の名前は五十嵐 鹿呂です。一応そこの愛明高校に通っています」

「一年生だよね?」

「は、はい」

「それじゃ~僕の後輩だねっ!いや~、嬉しいね。こんな可愛い男の子が僕の後輩なんて女の本望だよっ♪」

前の世界で言う、男の本望だ、みたいな解釈で良いのだろうか。先程から女の本能だの、女の本望だのと喧しい奴である、と鹿呂の脳内には書き足された。

「それで、き、君の名前はなんて言うの?」

鹿呂の質問にキョトンとする海老名。

「あれれ、知り合いじゃなかったの?てっきり家族包みで万引きしてたのかと~」

「違いますから」

海老名に素っ気なく返し、横に座る少女に問い掛ける。イスは一つ海老名が持ってきてくれた。当初は「私の上に座る~?」とセクハラ発言をしてきて警察を呼ぼうとしたのだが、この子が危うい立場なので得策ではないと押し留まった。因みに、致し方無く海老名の上に座ろうとすると、顔を赤くしてイスから転げ落ちていた。悪女から一転、ギャップがすごかったが、ツッコミはしなかった。

「……熊(ゆう)は熊(ゆう)って言うの」

「それじゃ~、熊ちゃんはなんで万引きなんてしたのかな?お兄さんが悩みを聞いた上げるよ?」

「僕を出汁に使って聞き出すの止めてもらえます?!というか海老名さん近くありません?!そもそも何で一列に並んで座っているんですか。貴方は向かい側に座らなくちゃいけないでしょ」

「ごめんごめ~ん。本能が疼いちゃってさ。男を喰らいたいって子宮が唸ってるんだよっ♪」

「貴方は、獣か何かなんですか?!しかも今、自分の願望をひた隠しもせず暴露しちゃったよ?!警察呼んでいいですか?」

「それをして困るのは、そちらのおちびちゃんだよ~?」

「うぐっ!」

自分の立場をしっかりと自覚しているからこんな余裕でいて、セクハラもしているのだ。それでいて、出来れば鹿呂がこの熊と言う少女を助け出してあげたいと言うこともちゃんと視野に入れている。

鹿呂は自分の腿を小突く。

「それで、おちびちゃんは何でこんなことしたの~?」

「……」

「誰かに頼まれたの~?」

「……ううん」

「家出でもしてるの~?」

「……ううん」

「そこの鹿呂くんは嫌い~?」

「……ううん」

「私は嫌い~?」

「うん」

「てめぇ、ちょっと表にでろやっ!その喧嘩、買ってやろうじゃねぇ―か!!」

「大人げないですから落ち着いてくださいよ!誘導尋問とかしてないで、話を進めて下さい!」

熱り立つ海老名を羽交い絞めにし、熊への猛攻を阻止する。

「それじゃ~、取り敢えず親を呼ぼっ「ダッ、ダメッ!!」」

親と聞き、熊は大声を出す。
何かを怯えるように、脚は震え立っている。顔も青白い。
両手で身体の震えを必死に抑えようとする。

「お、お願いします!何でもするから親だけは呼ばないで下さい!」

「ど、どうしたの?!」

急に土下座をしだす熊に、鹿呂は慌てて起こし上げる。
その光景に海老名は意地悪な笑みを浮かべる。その笑顔には邪悪さがあった。

「許してあげる方法ならあるよ~。幸いなことに商品は無くなってないし、店長は留守にしてるから~、これは僕達だけの秘密にすることも可能だぞっ♪」

「ほ、本当ですか?!」

条件も聞かず歓喜を上げる熊。鹿呂は海老名に疑いの眼を向ける。
鹿呂の目線を捉えた海老名は密かに舌なめずりする。

「ひっ!」

獲物を狙う豹のような動作に小さな悲鳴が漏れる。鹿呂は机を挟んだ海老名から少しずつ距離を取ろうとする。
そこへ、

「そんなに警戒しないでよ~。おちびちゃんは悪いようにしないからさっ♪」

「じょ、条件は何なんですか?」

「おぉ~、物分かりが早い子は大好物だよ~」

「年より臭いこと言わないでくださいよ。貴方は一つか二つしか変わらないでしょ」

「そんなつれないこと言わないでよ~」

「それより条件は何ですか?」

「……つまんないな~。ま、いいや。おちびちゃんを許してあげる方法はね~、鹿呂くんのメールアドレスを僕に教えることだよっ♪」

すると、鹿呂はあからさまに嫌な顔をする。毛嫌いしているのがもろ分かりやすい。
どうしようかと悩んでいると、横に座る涙眼の熊と会い重なる。

「なんで、僕のアドレスなんですか?」

「僕は自分に忠実なんだよ。だから欲しい物は欲しい時に手に入れるのが僕のポリシー設定になるんだよっ♪」

「……断れば?」

「悲惨なことに、おちびちゃんが警察行きになるね」

「僕が承諾しないとは思わなかったんですか?」

そう斬り込んでみると、海老名は待ってましたとばかりに顔を明るくする。

「ふふ~ん、それを待っていたんだぞっ♪」

文脈と同じことを言う海老名は、ポケットからケータイを取り出す。それは店内でシャッター音を鳴らしたケータイであった。
それに気づいたのか、横の熊は肩を揺らす。鹿呂は、訝しげな顔をするだけだ。

「それが……なんだって言うんですか?」

「良くぞ聞いてくれたね。それでは僕の計画を説明しようじゃないかっ♪これを見てくれ、何が映っているかな~?」

ケータイに映し出された一枚の写真には、そこには、





――――まるで鹿呂が散らばっている商品を鞄に入れているような構図があった。





鹿呂はその写真一つで海老名が何を言いたいのか分かってしまった。
ケータイから目線を外して、海老名をおずおずと見れば、いつも通りにニマニマと笑っていた。
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