【改稿版】文通恋愛

さくらぎしょう

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第一章 幼馴染

10.

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「じゃ、お言葉に甘えて。きらら、食べに行こう」

 私を微笑みながら見おろす葵を見つめながら、弦史との違いを探す。

 弦史と葵の違いは何なのだろう。確かに葵は女性ウケ抜群だが、弦史がダメな理由がわからない。遠距離恋愛はそんなに親を心配させるのだろうか。それとも、弦史のお母さんと仲違いでもしたのだろうか。もしくは両方か。
 
 私も席を立つと、葵はドアマンのように扉を開けてくれた。

「どうぞ、お先に」

 その笑顔と佇まいは、ドアマンというよりも王子様だった。
 やはり、私の母は単純にイケメン好きなのかもしれない。
 
「ただいま~」

 階下からお父さんの帰宅の声が聞こえた。お母さんのパタパタと走る音が響き、下から上へと声が上ってきた。

「ほらもうお父さん帰って来たわよ~。早くたべなさーい」

 私と葵は急いで階段を駆け降りて行き、カレーを食べた。そして、食べ終えた食器を片して、葵の荷物を取りに再び二人で階段を駆け上り、またバタバタと階下へ降りて玄関で靴を履く。

「おばさん、今日は美味しいカレーやお菓子、ご馳走になりました」
「いいのよ~。この慌ただしさが懐かしくて、おばさんも嬉しかったわ~。葵君、またきららと一緒に帰って来てね」

 外でエンジンを掛けて待ってくれているお父さんの元へと駆け足で向かい、二人で後部座席に乗り込むと、車は葵の家へと走り出した。

 最後に葵の家に行ったのはいつだっただろうか? 覚えているのは、弦史と一緒に行ったこと。だから、どんなに短く見積もっても、六年ぶりだろうか。

 お父さんは背中越しに葵と話しており、私は車窓から外を眺めていた。LEDで煌びやかに輝く夜の景色が過ぎ去ってゆき、やがて住居の暖色系のあかりが多く灯る、懐かしい山田川市に入ると、懐かしさを感じているそばから記憶の中の経路とはだいぶ違う道を走り出し、懐かしさまでも過ぎ去っていた。

 私が住んでたとこって、こっちだったっけ?

 出発前にナビを設定していたにしても、お父さんは何の迷いもためらいもなく、私にはまったく記憶のない、おもむきのある一軒家の前でスッと車を停めた。

 状況を吞み込めていないのは私だけで、葵はシートベルトを外し、降りる準備をしている。やはり、ここが葵の家なのだ。でも私の記憶の中にある葵の家はマンションだったはず。私の家もこんな地域ではなかった。

「おじさん、ありがとうございました」
「うん、こちらこそ、いつもきららをありがとう」

 置いてけぼりの私は、二人の会話に割って入る。

「ねね、葵の家ってここだったっけ???」
「そうだけど?」
「マンションだった記憶が……」
「ああ、きららと最後にうちで遊んだのって小学校の頃だもんね。今はおじいちゃんの家でお世話になってるんだよ」
「え? なんで?」
「父親の職場が異動になって、でも俺はついて行かなかったんだ」
「そうだったんだ」
「そ。じゃ、また明日」
「うん、また明日」

 葵は車から降りると、私達が出発するまで礼儀正しく玄関先で見送っている。王子様は弦史だけでなく、ここにも立っていた。
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