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第二章 淡い文通、淡いあなた
15.
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✳︎
バイトを終えてから帰宅すると、お母さんが小さな小箱を持ってきた。
「何それ?」
「ゲン君から国際郵便が届いたんだけど、輸送過程で外箱が濡れて破損してたから、それだけ先に捨てたわよ。中身は無事で良かったわね」
可愛い小箱を開けると、小さなメッセージカードと一緒にネックレスが入っていた。
“Happy Birthday”
「まあ、綺麗。明日の誕生日に間に合って良かったわね」
噴水のように高く跳ね上がった喜びに、お母さんの前だというのにキャッキャとはしゃいでしまった。
弦史はやっぱり私のことを忘れていなかった。
ずっと手紙が届いていなかった分、込み上がる喜びがひとしおだった。
私は早速ネックレスを首につけ、洗面台へと走りだし、鏡を見た。
「かわいい~」
こんなに距離が離れていても、弦史は私が好きなものを見つけてくれる。心はずっと寄り添いあっているんだと自信がついた。
毎年バースデーカードは届いていたけど、プレゼントは初めてで、友達関係から次のステップへ進展の兆しかと期待が湧く。
私達、もうすぐ大人だもんね。
なぁんて、一人で妄想を膨らませてニヤけてしまった。
あの事件で弦史や何人もの友達が引っ越して行き、私はしばらく学校に行かなくなった。結局私も転校して、そこからは徐々に学校に行き始めたけど、中学に入った頃は仲間はずれも、陰口も経験した。
「あの子はおかしい」
「訳ありで転校してきた子」
「塾で他校のかっこいい男子に色目を使ってる」
今思い出しても胸が痛む。
なぜそんな風に言われていたのか。私は何を間違ったのか。
女子を敵に回すのが怖くて、塾では葵を避けた。
学校に行ってない時期も人より多かったから、勉強のつまづきもあって、学業も順調とは言えなかった。
まるで透明人間のように生きていたあの頃。
薄い膜のような靄の中にいた私を、ずっと支えてくれたのは弦史だった。
弦史の手紙が届くだけで、瞬時に靄は晴れ、私の世界は色づいた。
“きららが毎日笑顔で過ごせていますように”
そう弦史が願ってくれるから、私はそうであるよう行動的になれた。
この文通がなかったら、私は毎日を前向きに笑って生きていなかった。
未来なんて見ることが出来ず、目標だって見つけられなかった。
私は弦史が好き。絶対にこの気持ちを弦史に直接伝えたい。
弦史が私の心から消えることはない。
✻
——弦史の夢を見た。
だけど、今回は成長した弦史じゃなく、あの頃のままの弦史の姿だった。
そして、私の身体も小学生の頃に戻っている。
弦史は私の手を握り走り出した。
額には汗が流れ、表情は険しく、恐怖が見える。
弦史は時折、うしろを確認するように振り返るので、私も気になって振り返ると、その先にいたのは小学生の姿の葵だった。
葵は私たちを見て鬼のような形相で叫んでいた。
そしてまた弦史と一緒に走り出し、葵から逃げた。
恐怖心は胸の奥底まで蝕んできて、早く目を覚まさないとと、必死にもがく。
遠くから私を呼ぶお母さんの声が聞こえる。
『……らら』
お母さんの声がする方向が輝き出す。
『……きらら』
その声に向かって私は全速力で走り出した。
『おかぁさぁんっ!』
「きらら! 起きなさいっ!!!」
——目が覚めると、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音と、葵ではなくお母さんの鬼の形相があった。
「何時だと思ってるの! 葵君がずっと外で待ってたから、中に入ってもらったわよ。なんで毎朝葵君が迎えに来てること言わなかったのよ」
「え、いや、言うほどのことでもないし」
「もうっ、とにかくさっさと着替えて! 朝ごはんの時間はないからね」
お母さんは少し乱暴にドアを閉めて出て行った。
バイトを終えてから帰宅すると、お母さんが小さな小箱を持ってきた。
「何それ?」
「ゲン君から国際郵便が届いたんだけど、輸送過程で外箱が濡れて破損してたから、それだけ先に捨てたわよ。中身は無事で良かったわね」
可愛い小箱を開けると、小さなメッセージカードと一緒にネックレスが入っていた。
“Happy Birthday”
「まあ、綺麗。明日の誕生日に間に合って良かったわね」
噴水のように高く跳ね上がった喜びに、お母さんの前だというのにキャッキャとはしゃいでしまった。
弦史はやっぱり私のことを忘れていなかった。
ずっと手紙が届いていなかった分、込み上がる喜びがひとしおだった。
私は早速ネックレスを首につけ、洗面台へと走りだし、鏡を見た。
「かわいい~」
こんなに距離が離れていても、弦史は私が好きなものを見つけてくれる。心はずっと寄り添いあっているんだと自信がついた。
毎年バースデーカードは届いていたけど、プレゼントは初めてで、友達関係から次のステップへ進展の兆しかと期待が湧く。
私達、もうすぐ大人だもんね。
なぁんて、一人で妄想を膨らませてニヤけてしまった。
あの事件で弦史や何人もの友達が引っ越して行き、私はしばらく学校に行かなくなった。結局私も転校して、そこからは徐々に学校に行き始めたけど、中学に入った頃は仲間はずれも、陰口も経験した。
「あの子はおかしい」
「訳ありで転校してきた子」
「塾で他校のかっこいい男子に色目を使ってる」
今思い出しても胸が痛む。
なぜそんな風に言われていたのか。私は何を間違ったのか。
女子を敵に回すのが怖くて、塾では葵を避けた。
学校に行ってない時期も人より多かったから、勉強のつまづきもあって、学業も順調とは言えなかった。
まるで透明人間のように生きていたあの頃。
薄い膜のような靄の中にいた私を、ずっと支えてくれたのは弦史だった。
弦史の手紙が届くだけで、瞬時に靄は晴れ、私の世界は色づいた。
“きららが毎日笑顔で過ごせていますように”
そう弦史が願ってくれるから、私はそうであるよう行動的になれた。
この文通がなかったら、私は毎日を前向きに笑って生きていなかった。
未来なんて見ることが出来ず、目標だって見つけられなかった。
私は弦史が好き。絶対にこの気持ちを弦史に直接伝えたい。
弦史が私の心から消えることはない。
✻
——弦史の夢を見た。
だけど、今回は成長した弦史じゃなく、あの頃のままの弦史の姿だった。
そして、私の身体も小学生の頃に戻っている。
弦史は私の手を握り走り出した。
額には汗が流れ、表情は険しく、恐怖が見える。
弦史は時折、うしろを確認するように振り返るので、私も気になって振り返ると、その先にいたのは小学生の姿の葵だった。
葵は私たちを見て鬼のような形相で叫んでいた。
そしてまた弦史と一緒に走り出し、葵から逃げた。
恐怖心は胸の奥底まで蝕んできて、早く目を覚まさないとと、必死にもがく。
遠くから私を呼ぶお母さんの声が聞こえる。
『……らら』
お母さんの声がする方向が輝き出す。
『……きらら』
その声に向かって私は全速力で走り出した。
『おかぁさぁんっ!』
「きらら! 起きなさいっ!!!」
——目が覚めると、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音と、葵ではなくお母さんの鬼の形相があった。
「何時だと思ってるの! 葵君がずっと外で待ってたから、中に入ってもらったわよ。なんで毎朝葵君が迎えに来てること言わなかったのよ」
「え、いや、言うほどのことでもないし」
「もうっ、とにかくさっさと着替えて! 朝ごはんの時間はないからね」
お母さんは少し乱暴にドアを閉めて出て行った。
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