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第二章 淡い文通、淡いあなた
21.
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頭と心を切り替え、私も葵もテストモードに入る。今日の登校は英会話はせず、最後の追い込みで葵と一問一答をしながら向かった。
「休んでる間も要点をまとめてもらって、あんなに長い文章打たせてごめんね」
「俺がしたかったから勝手にしただけ。それに、要点ノートは日頃から自分用にまとめてて、それを送っただけだから」
「なら、それ写真撮って送った方が簡単だったんじゃない?」
葵はうーんと唸り出し、困り顔をした。
「いやぁー……字が汚いから見せたくなかった」
「えー、別に気にしないのに」
「弦史の手紙の字を褒めてるじゃん」
「だって、弦史の字が綺麗なのは事実だもん。ああ、でもね、弦史から全然手紙が来ないの。私、何か嫌われることを手紙で書いたり、怒らせちゃったのかな……」
つい、不安をこぼして俯いてしまい、葵をまたも困らせてしまった。
「ああ、ごめん、何でもない! テストに集中集中!」
葵は優しく頭を撫でてくれる。何か言おうとしたが、言葉を選ぶように間が空いてから、胸に響くような優しく低い声で勇気づけてくれる。
「弦史は、絶対にきららに怒ってない。むしろ、きららが大好きだよ」
「え?」
「だから、心配するな。手紙だって、今は少し忙しくて遅れてるだけだ」
「う、うん、そうだね。ありがとう」
意外だった。葵は弦史の話を避けるところがあったから、てっきり私達の関係を快く思っていないと思っていたけど、葵が今も弦史を大切な友達だと思っているのが伝わってきた。
そして、私に向けられた葵の優しさが、どうしようもなく私の心を熱く揺さぶっていた。
そして、五日間の期末テスト期間が終わり、テストの返却もされ、学科順位と全体順位が書かれた成績表が各自配られた。
休み時間、その成績表を持って私は葵のクラスまで走っていく。途中で先生に注意され、足を止めて頭を下げたけど、またすぐに駆け出して葵の元に向かった。
「葵!」
「きらら?」
私達はいとこ同士の設定。あの靴箱事件からは、その設定のおかげで私が葵に話し掛けようと、一緒にいようと、今は誰も何も言ってこない。
私はクラスの中に入り、葵の座る窓際の席まで行くと、葵に成績表を見せる。
「学科順位……八位じゃん!! まじかよ、すげえ!!」
葵は勢いよく立ち上がり、感情のままに私を強く抱きしめてしまった。いくらいとこ設定でも、これは、良くなかった。
「あ……葵」
「ああ、ごめん、嬉しくてつい。でもやったな。この調子で行けば、アメリカに進学も夢じゃないよ」
「うん、とにかく本当にありがとう。葵のおかげだから最初に伝えたくて来たけど、もうクラス戻るね」
「ああ、また連絡する」
窓際の席から廊下まで向かうわずかな道のりで、私は敵意むき出しの視線を向けられている事に気づいた。
イヤな予感はしたけど、この時はまだそこまで深刻に受け止めていなかった。
「休んでる間も要点をまとめてもらって、あんなに長い文章打たせてごめんね」
「俺がしたかったから勝手にしただけ。それに、要点ノートは日頃から自分用にまとめてて、それを送っただけだから」
「なら、それ写真撮って送った方が簡単だったんじゃない?」
葵はうーんと唸り出し、困り顔をした。
「いやぁー……字が汚いから見せたくなかった」
「えー、別に気にしないのに」
「弦史の手紙の字を褒めてるじゃん」
「だって、弦史の字が綺麗なのは事実だもん。ああ、でもね、弦史から全然手紙が来ないの。私、何か嫌われることを手紙で書いたり、怒らせちゃったのかな……」
つい、不安をこぼして俯いてしまい、葵をまたも困らせてしまった。
「ああ、ごめん、何でもない! テストに集中集中!」
葵は優しく頭を撫でてくれる。何か言おうとしたが、言葉を選ぶように間が空いてから、胸に響くような優しく低い声で勇気づけてくれる。
「弦史は、絶対にきららに怒ってない。むしろ、きららが大好きだよ」
「え?」
「だから、心配するな。手紙だって、今は少し忙しくて遅れてるだけだ」
「う、うん、そうだね。ありがとう」
意外だった。葵は弦史の話を避けるところがあったから、てっきり私達の関係を快く思っていないと思っていたけど、葵が今も弦史を大切な友達だと思っているのが伝わってきた。
そして、私に向けられた葵の優しさが、どうしようもなく私の心を熱く揺さぶっていた。
そして、五日間の期末テスト期間が終わり、テストの返却もされ、学科順位と全体順位が書かれた成績表が各自配られた。
休み時間、その成績表を持って私は葵のクラスまで走っていく。途中で先生に注意され、足を止めて頭を下げたけど、またすぐに駆け出して葵の元に向かった。
「葵!」
「きらら?」
私達はいとこ同士の設定。あの靴箱事件からは、その設定のおかげで私が葵に話し掛けようと、一緒にいようと、今は誰も何も言ってこない。
私はクラスの中に入り、葵の座る窓際の席まで行くと、葵に成績表を見せる。
「学科順位……八位じゃん!! まじかよ、すげえ!!」
葵は勢いよく立ち上がり、感情のままに私を強く抱きしめてしまった。いくらいとこ設定でも、これは、良くなかった。
「あ……葵」
「ああ、ごめん、嬉しくてつい。でもやったな。この調子で行けば、アメリカに進学も夢じゃないよ」
「うん、とにかく本当にありがとう。葵のおかげだから最初に伝えたくて来たけど、もうクラス戻るね」
「ああ、また連絡する」
窓際の席から廊下まで向かうわずかな道のりで、私は敵意むき出しの視線を向けられている事に気づいた。
イヤな予感はしたけど、この時はまだそこまで深刻に受け止めていなかった。
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