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13.侍女アリスの姿を見た私は
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「ユリアスの妹は二人とも女神に似てる。でも、本当に女神がいると錯覚しそうになるのは、やっぱりユリア嬢だ」
エミルは少し無理をして明るく振る舞っている気がする。会話が途切れないよう、無理に会話を生んでいる。
そして私もエミルを気にしつつも、先ほどのアリスの姿が頭から離れない。
アリスの化粧のノリがやたら良かった。
デイドレスはお気に入りのペールブルーだったし、ボンネットやら、控えめながらも耳飾りやら、いつもより小物が多かった気がする。
恋する乙女は綺麗になると聞くが、その類なのだろうか?
やはり、アリスは心から女性になりたいと言っていたのか……?
意識しすぎて何でも目に付くだけだろうか?
私と直衛のお三方は、アリスとエルダンリ王太子と別れると、ダレン皇太子殿下とサフィー王女のボートがよく見える場所まで移動した。
と言っても、私は先頭を歩くリュシアンにただついてきただけだけど。
リュシアンとテオは何も語らない。エミルもとうとう言葉が出せなくなっていた。
水辺から池に浮かぶボートを見守る私たち四人の間の空気は重く、水を打ったように静まり返っていた。
ただ静かにダレン皇太子殿下とサフィー王女のゆったりと進むボートを見つめれば、皇太子殿下の細やかな気遣いが良く見えた。
サフィー王女は幸せになるだろう。
サフィー王女とダレン皇太子殿下が微笑み合う姿を見て、なぜか切なくなった。
段々と、サフィー王女がアリスに見えてきた。
女性として男性に大切にされ、アリステアがあんな笑みを零せる相手がいるなら、彼をアリスとして歩ませてあげるべきかもしれない……。
ダレン皇太子殿下がボートを桟橋に戻し、サフィー王女を付き添い役とエルダンリ王太子、そしてアリスの元に帰したら、やっと私達の待機する場所に戻ってきた。
「有意義な時間だった。定期的にこの公園で散歩をしようと約束をした」
いずれ夫婦になる二人の進展は喜ばしい話だが、素直に喜べない自分に気づく。
少々想像力を膨らませすぎたようで、アリスへの感情移入をしすぎたようだ。
その夜、夕食を終えて自室に戻ろうとした時、エミルが宿舎の外に出て行くのが見えた。
駐屯地内にあるパブにでも行くのだろうか。
昼間、明るく努めようと頑張っていた彼に、私は十分に寄り添ってあげられなかった。
ここは一人にさせてあげるべきなのか迷いつつ、結局あとを追いかけてしまう。
「エミル!」
駐屯地内の開けた道端で振り返ったエミルは、私を見て目を丸くしていた。
「ユリアス、どうしたの?」
「エミルが出掛けるのが見えて、私も一杯飲みたかったから、もしパブなら一緒にどうかなと思って」
私の提案にエミルは「あー……」と逡巡の声をこぼしたので、断られると覚悟した。
やはり、一人になりたかったはず。余計なことをしてしまった。
エミルは申し訳なさそうな表情を私に向けた。その表情に、私の方が申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あー……パブじゃなくて、プールバーに行くとこだったんだ。それでも良ければ、ユリアスも一緒にどう?」
「ぜひ!」
はしたないほど、咄嗟に喜んでしまった……。
「そんなに喜んで貰えるとなんだか照れるな」
エミルもどこか肩の力が抜けたように笑ってくれた。
「二人で仲良くどこへ行くんだ?」
背後から聞こえたエミルよりもだいぶ低い声に驚き、振り返ると、そこには腕を組んで私達を見ているダレン皇太子殿下が立っていた。
エミルは少し無理をして明るく振る舞っている気がする。会話が途切れないよう、無理に会話を生んでいる。
そして私もエミルを気にしつつも、先ほどのアリスの姿が頭から離れない。
アリスの化粧のノリがやたら良かった。
デイドレスはお気に入りのペールブルーだったし、ボンネットやら、控えめながらも耳飾りやら、いつもより小物が多かった気がする。
恋する乙女は綺麗になると聞くが、その類なのだろうか?
やはり、アリスは心から女性になりたいと言っていたのか……?
意識しすぎて何でも目に付くだけだろうか?
私と直衛のお三方は、アリスとエルダンリ王太子と別れると、ダレン皇太子殿下とサフィー王女のボートがよく見える場所まで移動した。
と言っても、私は先頭を歩くリュシアンにただついてきただけだけど。
リュシアンとテオは何も語らない。エミルもとうとう言葉が出せなくなっていた。
水辺から池に浮かぶボートを見守る私たち四人の間の空気は重く、水を打ったように静まり返っていた。
ただ静かにダレン皇太子殿下とサフィー王女のゆったりと進むボートを見つめれば、皇太子殿下の細やかな気遣いが良く見えた。
サフィー王女は幸せになるだろう。
サフィー王女とダレン皇太子殿下が微笑み合う姿を見て、なぜか切なくなった。
段々と、サフィー王女がアリスに見えてきた。
女性として男性に大切にされ、アリステアがあんな笑みを零せる相手がいるなら、彼をアリスとして歩ませてあげるべきかもしれない……。
ダレン皇太子殿下がボートを桟橋に戻し、サフィー王女を付き添い役とエルダンリ王太子、そしてアリスの元に帰したら、やっと私達の待機する場所に戻ってきた。
「有意義な時間だった。定期的にこの公園で散歩をしようと約束をした」
いずれ夫婦になる二人の進展は喜ばしい話だが、素直に喜べない自分に気づく。
少々想像力を膨らませすぎたようで、アリスへの感情移入をしすぎたようだ。
その夜、夕食を終えて自室に戻ろうとした時、エミルが宿舎の外に出て行くのが見えた。
駐屯地内にあるパブにでも行くのだろうか。
昼間、明るく努めようと頑張っていた彼に、私は十分に寄り添ってあげられなかった。
ここは一人にさせてあげるべきなのか迷いつつ、結局あとを追いかけてしまう。
「エミル!」
駐屯地内の開けた道端で振り返ったエミルは、私を見て目を丸くしていた。
「ユリアス、どうしたの?」
「エミルが出掛けるのが見えて、私も一杯飲みたかったから、もしパブなら一緒にどうかなと思って」
私の提案にエミルは「あー……」と逡巡の声をこぼしたので、断られると覚悟した。
やはり、一人になりたかったはず。余計なことをしてしまった。
エミルは申し訳なさそうな表情を私に向けた。その表情に、私の方が申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あー……パブじゃなくて、プールバーに行くとこだったんだ。それでも良ければ、ユリアスも一緒にどう?」
「ぜひ!」
はしたないほど、咄嗟に喜んでしまった……。
「そんなに喜んで貰えるとなんだか照れるな」
エミルもどこか肩の力が抜けたように笑ってくれた。
「二人で仲良くどこへ行くんだ?」
背後から聞こえたエミルよりもだいぶ低い声に驚き、振り返ると、そこには腕を組んで私達を見ているダレン皇太子殿下が立っていた。
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