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31.私の母達
社交シーズンが終わり、貴族達は自国領地へと戻って行った。
アリステアは困難な状況のサフィーのそばにいてあげたいと、帝都に残ることを決め、私だけお父様とお母様とともに、フレスラン公国へと戻った。
季節は移り行くのに、お母様はずっと塞ぎ込んでいて、アリステアからも連絡もない。
窓の外を見れば、城の広大な庭は黄葉した樹木とその落ち葉で一面が黄金色に輝いている。
フレスラン公国はあと半月もすればこの景色を一変させ、私をこの愛すべき地に誕生させてくれた日を向かえる。
肌寒い朝の日、お母様が私を城の中にある一室に連れて行ってくれた。
ずっとここで育ったのに、こんなところに部屋があったとは知らなかった。
部屋の中に入れば、ベルベットの赤を基調とした、こじんまりとした女性の部屋だった。
「帝都から戻ってすぐに話すべきだったけど、私に勇気がなく待たせてしまいごめんなさい。
ここは、私の双子の姉で、ユリアを産んでくれたジュリアナの部屋よ」
「私を産んでくれた……」
お母様は、やっと私の出生の秘密を打ち明けてくれるようだった。
「ジュリアナと私は背丈も同じで、顔も瓜二つの姉妹だった。でも、ジュリアナと私の違いは、彼女は生まれつき足が悪く引きずっていたの。それで、いつも縁談が上手くまとまらず、結局結婚を諦めた」
公妃は部屋に飾られた一枚の写真を手に取り、ユリアに渡した。そこに映るのは、まったく同じ顔の姉妹が寄り添い微笑みあう姿。
「私は、大きな過ちを犯したの。あまりの罪の重さに、あなたに本当のことをずっと言えないでいた。
お父様と私は結婚してからもずっと子供が授からず、授かっても流れてしまうを繰り返し、苦しんでいたの。最後の流産の際、もう妊娠は望めないと医者にいわれ、絶望した。
子供を授かれなければ、公妃として役目も果たせない。ブルックラー伯爵夫人にも子はおらず、跡取り問題が深刻だった。だからといって、お父様が側妃を迎えることも嫌だった。
それで、私は……ジュリアナに私のフリをしてお父様と子供を作って欲しいと頼んでしまった」
「お母様……」
「わかってる。わかってるわ。とにかく話を聞いてちょうだい。
ジュリアナも最初は拒んだの。でも、最後にはフレスランの未来のために承諾してくれた。
それで、お父様には内緒で、ジュリアナには夜ベッドでお父様を待ってもらい、ことが終わり、お父様が目覚める前に私とすり替わり、足が悪い事がみつからないようにやり過ごした。
見事にジュリアナは妊娠してくれて、この部屋で過ごしてもらったの。お腹のふくらみが目立つ頃には私は何か詰め物をして過ごそうと思っていたら、その必要はなかった」
「お母様はアリステアを……」
公妃はこくりと頷いた。
「まさか私が妊娠しているだなんて……。
ジュリアナは私より三日早くお産が始まり、そのまま亡くなった。そのショックで取り乱し、私も出血してしまい、お腹のアリステアを心配した産婆が何も知らないお父様を呼びに行ったの。
お父様は、ジュリアナの亡き骸と、生まれたてのユリア、そして取り乱し出血して泣き叫んでいる私をこの部屋で見たのよ。
それで初めて自分がジュリアナと子をもうけていたと知ったの。普通なら私は離縁されてもおかしくないの。
なのに、フレスラン公は、あなたのお父様は、私を許しただけではなく、ユリアとともに守り大切にしてくれた。
私はあなたの母ジュリアナ、あなたの父フレスラン公、そしてあなたに、一生をかけて償わなくてはならない。
あなたを幸せにしなければ、ジュリアナは許してくれないわ」
肩を落とし、小さくなってしまったお母様の背中に、私はそっと手を添えた。
「お話くださりありがとうございました。お母様のお話しくださったことは、ジュリアナ様と、お父様にしか、それが罪と罰することも、許すことも出来ません。
ただ、私はここに生まれてとても幸せです。グローヴァー家の子どもとして産んでくれたジュリアナ様に心から感謝しています。大切に育ててくれたお父様、お母様にも。
そして、アリステアが同じ頃に一緒に産まれてくれて、双子として一緒に育つことが出来て、私は本当に幸せ者です。
だから、私からお母様に言えることは、感謝しています。しかないです」
「ああ……ユリア……」
それからお母様は、ジュリアナがどれだけ気高く、聡明な女性だったかを教えてくれ、姉妹の思い出や、私を妊娠中だった時のジュリアナの様子を語ってくれた。
話を一区切りし終え、二人で腕を組んで廊下を歩いていると、使用人が慌ただしく私のもとへ駆け寄ってくる。
「ああ、ユリア様、やっと見つけました。帝国のダレン皇太子殿下がお見えです」
「ダレン皇太子殿下が?」
アリステアは困難な状況のサフィーのそばにいてあげたいと、帝都に残ることを決め、私だけお父様とお母様とともに、フレスラン公国へと戻った。
季節は移り行くのに、お母様はずっと塞ぎ込んでいて、アリステアからも連絡もない。
窓の外を見れば、城の広大な庭は黄葉した樹木とその落ち葉で一面が黄金色に輝いている。
フレスラン公国はあと半月もすればこの景色を一変させ、私をこの愛すべき地に誕生させてくれた日を向かえる。
肌寒い朝の日、お母様が私を城の中にある一室に連れて行ってくれた。
ずっとここで育ったのに、こんなところに部屋があったとは知らなかった。
部屋の中に入れば、ベルベットの赤を基調とした、こじんまりとした女性の部屋だった。
「帝都から戻ってすぐに話すべきだったけど、私に勇気がなく待たせてしまいごめんなさい。
ここは、私の双子の姉で、ユリアを産んでくれたジュリアナの部屋よ」
「私を産んでくれた……」
お母様は、やっと私の出生の秘密を打ち明けてくれるようだった。
「ジュリアナと私は背丈も同じで、顔も瓜二つの姉妹だった。でも、ジュリアナと私の違いは、彼女は生まれつき足が悪く引きずっていたの。それで、いつも縁談が上手くまとまらず、結局結婚を諦めた」
公妃は部屋に飾られた一枚の写真を手に取り、ユリアに渡した。そこに映るのは、まったく同じ顔の姉妹が寄り添い微笑みあう姿。
「私は、大きな過ちを犯したの。あまりの罪の重さに、あなたに本当のことをずっと言えないでいた。
お父様と私は結婚してからもずっと子供が授からず、授かっても流れてしまうを繰り返し、苦しんでいたの。最後の流産の際、もう妊娠は望めないと医者にいわれ、絶望した。
子供を授かれなければ、公妃として役目も果たせない。ブルックラー伯爵夫人にも子はおらず、跡取り問題が深刻だった。だからといって、お父様が側妃を迎えることも嫌だった。
それで、私は……ジュリアナに私のフリをしてお父様と子供を作って欲しいと頼んでしまった」
「お母様……」
「わかってる。わかってるわ。とにかく話を聞いてちょうだい。
ジュリアナも最初は拒んだの。でも、最後にはフレスランの未来のために承諾してくれた。
それで、お父様には内緒で、ジュリアナには夜ベッドでお父様を待ってもらい、ことが終わり、お父様が目覚める前に私とすり替わり、足が悪い事がみつからないようにやり過ごした。
見事にジュリアナは妊娠してくれて、この部屋で過ごしてもらったの。お腹のふくらみが目立つ頃には私は何か詰め物をして過ごそうと思っていたら、その必要はなかった」
「お母様はアリステアを……」
公妃はこくりと頷いた。
「まさか私が妊娠しているだなんて……。
ジュリアナは私より三日早くお産が始まり、そのまま亡くなった。そのショックで取り乱し、私も出血してしまい、お腹のアリステアを心配した産婆が何も知らないお父様を呼びに行ったの。
お父様は、ジュリアナの亡き骸と、生まれたてのユリア、そして取り乱し出血して泣き叫んでいる私をこの部屋で見たのよ。
それで初めて自分がジュリアナと子をもうけていたと知ったの。普通なら私は離縁されてもおかしくないの。
なのに、フレスラン公は、あなたのお父様は、私を許しただけではなく、ユリアとともに守り大切にしてくれた。
私はあなたの母ジュリアナ、あなたの父フレスラン公、そしてあなたに、一生をかけて償わなくてはならない。
あなたを幸せにしなければ、ジュリアナは許してくれないわ」
肩を落とし、小さくなってしまったお母様の背中に、私はそっと手を添えた。
「お話くださりありがとうございました。お母様のお話しくださったことは、ジュリアナ様と、お父様にしか、それが罪と罰することも、許すことも出来ません。
ただ、私はここに生まれてとても幸せです。グローヴァー家の子どもとして産んでくれたジュリアナ様に心から感謝しています。大切に育ててくれたお父様、お母様にも。
そして、アリステアが同じ頃に一緒に産まれてくれて、双子として一緒に育つことが出来て、私は本当に幸せ者です。
だから、私からお母様に言えることは、感謝しています。しかないです」
「ああ……ユリア……」
それからお母様は、ジュリアナがどれだけ気高く、聡明な女性だったかを教えてくれ、姉妹の思い出や、私を妊娠中だった時のジュリアナの様子を語ってくれた。
話を一区切りし終え、二人で腕を組んで廊下を歩いていると、使用人が慌ただしく私のもとへ駆け寄ってくる。
「ああ、ユリア様、やっと見つけました。帝国のダレン皇太子殿下がお見えです」
「ダレン皇太子殿下が?」
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