元ヤン辺境伯令嬢は今生では王子様とおとぎ話の様な恋がしたくて令嬢らしくしていましたが、中身オラオラな近衛兵に執着されてしまいました

さくらぎしょう

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17. だから転生した

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 ※今回は暴力的な表現や台詞の多い話になります。苦手な方はご注意ください。


 「ねえ、あの二人、朝まで一緒だったみたいよ」

 女子の噂は韋駄天の如く瞬く間に駆け巡る。

 明け方にグレースの部屋からビリーが出てきた所を誰かに見られていたようだ。別に周りが想像しているような事は何もしていない。二人で一つのベッドで文字通り眠っただけだ。だがビリーが堂々と公衆の面前でグレースを溺愛しているので、噂はどんどん白熱していく。授業中だろうがなんだろうが四六時中その話題で持ちきりだった。

 「じゃあ、グレース様は……」
 「ビリー様に……」
 「きゃー! うそっ!」
 「えーいいなぁー」

 グレースは何も聞こえないフリをした。
 きっと何を言っても信じてもらえないだろう。
 何故ならこの教室の場ですら、ビリーはずっと机の下でグレースの手を握っているのだから。
 
 「あのさ、皆見てるんだけど」
 「だから?」

 授業が終わり、グレースが寮に戻ろうと歩き出すと、後ろからビリーがスッと指を絡めて手を握ってきた。
 その様子を見た女子達からは「きゃあっ」と色づいた声が聞こえる。
 グレースは女子の視線から逃れるため、彼女達がいなくなるまで待ってから寮に戻ろうと、ビリーの手は繋がれたまま寄り道をしている。

 すると前方から女子寮長が走り寄ってきて、ビリーだけを呼び止めた。おそらく女子生徒達の噂の真偽を確かめて、事と次第によっては罰を与えられるのだろう。だがなぜかグレースは寮に戻るよう促され、ビリーだけが近くの教室に連れて行かれた。
  
 その場にグレースだけ留まっても仕方ないので、寮に戻ろうと歩き出す。すでにもう生徒達は寮に戻ったようで、廊下はグレースしか歩いていない。
 男子寮の前を差し掛かる時、何とも言えない不吉な予感がした。男子寮入口前の分岐点で女子寮へ向かう廊下へ曲がると、その角にベリールが薄気味悪い笑顔を浮かべて立っていた。目を合わさずに通り過ぎようとすると、声を掛けられる。

 「こんにちは、グレース嬢」

 グレースは相手にしてはいけないと思いつつも、無視をするわけにもいかず、挨拶だけする。

 「ご機嫌よう」

 次の瞬間、後ろから誰かに口を塞がれ、ベリールと姿の見えぬ者達に無理やり男子寮へ連れて行かれてしまった。
 部屋に押し込められると、口を布で塞がれて、手を後ろに縛られて床に座らされた。

 「やっと君を僕達の部屋に連れ込めた」

 ベリールは嬉しそうにグレースの横に座り、肩を組む。他に二人見知らぬ男子生徒がおり、一人がグレースの前でしゃがみ、声を掛けてきた。

 「俺達セニが居なくなって困ってるんだよ。もうすぐストックの薬もなくなるし、どうしたらいいかなぁ?」
 
 ベリールは肩をポンポン叩きながらグレースに問いかける。

 「グレース嬢がセニを近衛に引き渡しちゃったんでしょ? 責任とってくれない?」

 立っていた男子生徒が机の引き出しから何か取り出してきた。それが何かわかった時、グレースはゾッとして肘や足を使って精一杯抵抗をしはじめたが、隣に座るべリールがグレースに馬乗りになって押さえつけた。

 「薬の代わりを君がしてよ。ちゃんと避妊するからさ」
 「ビリーだけじゃなくてさ、俺達にも色々教えてくれてもいいだろ?」

 グレースは不快感で吐きそうになり、魂に刻まれた遠い記憶の傷がえぐられ、目眩までしてきた——。



 ♢♢♢


 
 繁華街近くにある街中のマンションの前で、大和はバイクにまたがり、ゆかりが出てくるのを待っていた。だが約束の時間を過ぎてもゆかりが来る気配がない。バイクを停めて、マンションの中に入り、ゆかりの部屋がある三階まで上がると、なんだか異様な雰囲気を感じ取った。ゆかりの部屋の扉に手を掛けると鍵が開いている。大和は普段はいきなり人の家のドアなど開けず、必ずインターホンを押すが、今は胸騒ぎがしてインターホンは押してはいけない気がした。
 ドアを開けて中に入ると、妙な空気感に心拍数が上がってくる。足元を見ると、男物の靴がいくつも散乱していた。急いでゆかりの部屋に向かい、勢いよくドアを開けると、中には男が三人とゆかりがいた。

 部屋の中にいた若い男が声を上げる。

 「ア゛? 誰だてめぇ?」

 大和は平静を装っているが、心の内では戦慄が走る。目の前にいる男達、特にゆかりの横に座っている男は絶対に関わってはいけない男だ。自分らみたいに粋がった小僧がバイクを夜中に走らせているのとは訳が違う。——本物のヤクザだ。
 
 部屋の中の男達は、一人はベッドの上でゆかりと隣り合って座り彼女の肩に手を回している。その男は黒いスーツに薄い色のサングラスを掛け、首筋には背中に続いているであろう入墨の模様がちらりと覗き、すぐに極道の人間だとわかる中年男性だ。
 残り二人はベッド近くに立っていて、見た目からして手下の若いチンピラだった。

 「兄貴、こいつ神奈川のあの族の頭ですよ。ほら、親父おやじが欲しいって言ってた」
 「あー、親父が言ってた奴か」

 大和は自分がヤクザから目をつけられていたとは知らなかったので、突然の身に掛かる話に肝を冷やす。
 
 「おう、ゆかり、もしかしてコイツお前の男か?」

 ゆかりは首を振った。
 
 「し……知らない。あなた誰? 勝手に入ってこないで。出てってよ」

 中年の男がゆかりの顎を鷲掴み、目を開いて睨む。

 「嘘つくんじゃねーよ。てめえの男だろうが」
 「おいっ! ゆかりに触んじゃねえよっ!」

 大和は思わず語気を荒げる。
 チンピラは大和の顔を下から覗き込みながらにじり寄った。

 「あ? 誰に向かって言ってんだコイツ? 兄貴どうしますコイツ」

 中年の男は狡猾な笑いを浮かべる。

 「親父のとこに連れて行くに決まってんだろ。欲しいって言ってんだから」
 「お父さんやめて! 大和は引きずり込まないで!」

 大和は今の言葉に驚愕してゆかりを見てしまった。ゆかりの父親がヤクザとは聞いていたが、ここまで大物だとは思っていなかった。

 「大和って名前なのか。おい、大和、この女はな、今から風俗に沈めんだよ。おめぇがうちの組入って幹部にでもなりゃあ、自分の女として水揚げしてもいいぞ」
 「……何言ってんだ、お前? 自分の娘だろ?」

 大和は嫌悪感を露わにして睨みつける。その目を見たゆかりの父親は大和を気に入ったような笑みを浮かべ、言い返す。
 
 「コレはあばずれ女が作ったガキだよ。俺の娘かなんてわかんねぇ。それでも俺の娘として育ててやったんだから、恩返ししてもらわなきゃなあ。こいつの母親が店の金盗んで若い組員と飛びやがったんだよ。あいつらはすぐに捕まえてやるけど、とりあえず娘のコイツには母親の負債を身体で払ってもらわないといけねえからよ」

 ゆかりの父親は彼女の太ももを掴む。

 「こんな輩と付き合ってたんだ、どうせやりまくってたんだろ? なら話は早えぇ、すぐ店行くぞ」

 ゆかりが侮辱されて、大和は激情に駆られて考える前に手と足が動いてしまった。チンピラ二人を殴り蹴り倒し、ゆかりの腕を思い切り引っ張り、父親から引き剥がして部屋から飛び出す。部屋の近くにあった棚を力いっぱい押してドアの前に移動させて、ドアが開かないようにした。

 「逃げるぞ」

 大和はゆかりを引っ張ってマンションの廊下の階段を一気に駆け降り、下に停めたバイクにゆかりを乗せて勢いよくエンジンを掛けて走り出す。後方からは階段を駆け下りる音と怒声が聞こえ、路駐されてた車に乱暴に乗り込む音が響く。
 
 大和はかなりの距離を走り、途中コンビニに立ち寄り、ATMでお金を下ろしてきた。空を見ると綺麗な満月だった。いつもなら月夜のコンビニで仲間とたむろうのが大和の青春だった。

 「これ、お前が持ってろ。限度額があってこれしか今日は下せなかったけど、明日また下すから。……もし俺が捕まったら、これで逃げろよ」
 「……こんな大金……だめだって」
 「いいんだ。元々お前と結婚するための資金の一部だから」
 「何それ——」

 話の途中で大和が追手の車に気が付いた。マンションから走り去る時にチラッと見た追っ手の車のナンバーがゾロ目だったのでしっかり覚えている。
 急いでバイクを出して加速して走らせるが、あちらも大和とゆかりに気がつき距離を縮めてくる。逃げ切ろうと、良く知る地元の峠まで飛ばしていくと、うまく撒くことが出来た。
 峠を抜けた近くの無人神社にバイクを隠し停めて、二人で祠に隠れる。

 「大和……巻き込んでごめんなさい……」
 「何言ってんの? 俺はお前と付き合うときに守るって決めたんだよ」
 
 ゆかりは涙目で大和を見る。

 「大和……私……お父さんにも、お母さんにも、愛されてなかった……気づいてたけど、今日どちらにも捨てられた……」

 ゆかりの目からぽろぽろと涙が溢れ出した。大和はゆかりを抱きしめて頭を撫でる。

 「問題ない。俺がそれ以上にお前を愛するから。お前がもういいって言っても愛して愛して、いつまでも愛してやる。生まれ変わっても絶対見つけて、また愛して、ずっと守ってやるから」
 
 ゆかりは鼻をすすりながら笑っている。

 「うん、約束ね」

 祠に急にライトの光が差し込んだ。二人の顔は真っ青になり、固く抱きしめ合う。
 祠の扉がゆっくりと開きながら、男の顔が現れ、おぞましい声が聞こえてきた。

 「みぃ~つけたぁ~」

 大和とゆかりはチンピラ達に祠から引きずり出され、ゆかりは父親に捕まり、大和はチンピラ二人から激しい暴行を受ける。

 「オ゛ラァ、さっきはよくもやりやがったな」
 「死にてえのかクソガキがっ」

 大和の意識が朦朧とする中、目の前ではゆかりが泣きながら大和に向かおうと父親の腕の中で思い切り抵抗して暴れている。そのはずみで父親の顔を引っ掻き、その傷から血が流れ落ちるのが見えた。

 「おいおい、何してくれんだこのクソアマ……」

 父親がゆかりを思い切り地面に叩きつけ、大和に近づく。

 「おい、俺も気が長え方じゃねぇんだよ。てめぇはこのまま組に入れ。いいな」

 大和は弱々しくも、出せる限りの力でゆかりの父親に向かって唾を吐き捨てた。
 ゆかりの父親は特に大和には何も仕返さなかった。己に向けられる暴力よりも、何が一番大和に堪えるかわかっていた。

 「おいお前ら、コイツの前でゆかりれ」

 チンピラ達は倒れているゆかりのしなやかな肢体を見てゴクリと生唾を飲みこんだ。二人はカチャカチャとベルトを外す音を立てながらゆかりにゆっくり近づいて行く。
 大和は目を開く。ヤクザ三人の目を盗んで祠に隠された鉄パイプに手を伸ばして掴み、鈍重に立ち上がる。口の中の血を勢いよく吐き捨て、チンピラに向かって鉄パイプを振り上げて駆け込んだ。

 「俺の女に触んじゃねぇぇぇ!!」

 鉄パイプを思い切り振り回す大和の目と姿は鬼そのものであった。元々恵まれた体格も持つ大和が死に物狂いで立ち向かうのだから、三人は負傷者相手といえど悪戦苦闘した。三人に鉄パイプを見事打ち込んで倒すと、急いでゆかりをバイクまで連れて行って乗せ、息も絶え絶えバイクを走らせ始める。
 
 だが、途中でよろけて、バイクを停めてしまう。

 「大和! 私を置いて行って! 貴方だけなら逃げきれるから! すぐに警察と病院に行って」
 「俺が……お前を……守るっていってんだろっ!!」

 ゆかりの顔は涙と土でぐちゃぐちゃになっていた。

 「十分守ってくれたから……ほら、大和が守ってくれたから私、綺麗な身体のままだよ? これ以上もういいから」

 遠くから車の音が聞こえてきた。
 
 大和は息を整え、クラッチレバーを握り、チェンジペダルを押し下げると、ガチャンと音が鳴る。
 
 アクセルをひねるとエンジン音が始動し、冷たい夜の山の空気に良く響く。
 
 そしてクラッチレバーを離していく——動き出すバイクに、近づく車の窓から銃口が向けられた。


 ——乾いた銃声音が峠道に鳴り響いた。
 
 
 夜の木々の香りの中に、火薬の匂いが鼻をかすめる。
 
 大和の手がハンドルからゆっくりと離れていくと、バイクのバランスは崩れて、投げ出された二人は勢いで坂道を滑り転がり、一緒に転がるバイクはガードレールを突き破って二人を道連れにしながら崖の下に落ちていく。

 大和は落ちて行く時、空に浮かぶ綺麗な月と、同じく落ちるゆかりの姿が見えていた。

 大和は肩に撃たれた銃槍の痛みなんかよりも、胸の方が押しつぶされそうだった。

 死ぬ時はこんなにスローモーションなのかと思う。



 大和は大好きな月を仰ぐ——。
 


 どうか、神様がいるなら、お願いです。来世はゆかりを守り抜ける——あの絵本のような王子様になれますように。
 



 ——ビリーはゆっくりと目を開ける。

 隣ではグレースがすやすやと寝息を立てて寝ている。
 ビリーはグレースを見つめながら呟いた。
 
 「だから転生したんだ……」

 ビリーは熟睡しているグレースの手を、起こさないようそっと持ち上げ、溢れる想いを込めて手の甲にキスをした。

 グレースは目を覚ます。

 「ビリー……思い出した?」

 ビリーは伏し目がちに頷く。
 グレースは両手でビリーの頬を包んで顔を上げさせた。

 「貴方は私を命懸けで守ってくれたの。しかも、ちゃんと約束通りまた私を見つけて、愛して、守ってくれてる。貴方は全部、約束を果たしてるのよ。前世も今も、私凄く……嬉しいんだから」

 ビリーはグレースの言葉に心から感謝した。彼女の口から聞けた事が何よりも意味があり大きい。

 もう、眠るのは怖くない。




 ♢♢♢




 三人の男の手がグレースの制服に手が伸びた時、思いがけない事が起こる。
 
 パァーンッ——。

 乾いた音と共に硝煙と火薬の香りが立ち込めた。

 べリールと男子生徒達は思わず両手を挙げて扉の方に振り返る。扉には焼け焦げた小さな丸い穴が開き、そこにはまだ白い煙が立っていた。

 「……まさか……なあ?」

 三人は両手を挙げた状態で顔を見合わせ、困惑した。その瞬間、扉が乱暴に蹴り開けられ、そこにはとんでもない威圧感を放つ鬼相のビリーが銃口をベリールに向けて立っていた。

 「……俺の女に……触ったな?」

 ビリーの目は殺気立っている。その視線だけで三人は震えだし、逃げ出したくなった。ベリールは弁明しようと手を横に振りながらグレースから降りて前へ歩みを進めると、ビリーはすかさずもう一発銃をべリールの頬をかすめる様にぶっ放す。べリールは漏らした。
 
 眼光炯々としたビリーの目に、三人は腰が抜けて地面にへたり込み、緊張感だけで圧迫死出来そうだった。

 「お前らまとめて俺が地獄みせてやる……」

 ビリーは銃をホルスターにしまい、震える三人の前でしゃがむ。

 「一発でも俺を殴ってみろよ、カスどもが」

 プライドの高いべリールはムッとして、震えながらもビリーの頬を一発殴ってしまう。だがビリーはあっさりとやられる。調子に乗ったのかもう一人の男子生徒もビリーを力いっぱい殴ると、その勢いでビリーの体勢がふらつく。

 「なんだよ……こいつ銃がないと弱いじゃん」

 べリールと男子生徒達は薄ら笑いながら立ち上がり、ビリーを順番に一発ずつ殴ると、ビリーは嬉しそうに笑って立ち上がる。三人は唖然とした。ビリーの目つきが変わると、次々に腹に蹴りを入れられ、ドスッと決まる音は重く、痛々しかった。
 三人はその場でうずくまり、近づく影を見上げると、そこには鬼と化したビリーがほくそ笑んでいる。ビリーの宣言通り地獄を見てから床の上で伸びた。
 そしてビリーが指をパチンと鳴らすと、その音を合図に扉から近衛兵が続々と入ってくる。
  
 「こいつらを連行しろ。俺を殴った」
 「殴らせたのでしょう? 近衛の権限で捕まえられるように」
 
 伸びた連中を見ながら呆れるバルトラ中将に、ビリーはフッと鼻で笑った。

 「あと、女子寮長も捕まえたか?」
 「はい、確かに」

 バルトラ中将は頷く。

 ビリーはグレースの元に来て、口と腕に巻かれた布を取り、心配そうに頬に手を当てる。

 「離れてすまなかった。女子寮長が罠だった。あの女、セニから賄賂をもらって目ぼしい生徒に薬の情報を流してたんだ。あいつもセニが捕まって小遣い稼ぎがなくなって恨んでたんだよ。それで、あいつらにお前がセニを捕まえたと教えて、今日のこの件も結託して実行してたんだ」
 「そういえば私、初日に女子寮長に案内されている時に、トリシアとセニを捕まえた話をしてた……」
 「それで知ったんだな」

 ビリーはグレースを抱きしめて、思い切り深呼吸した。彼女の香りに包まれると安心した顔をする。

 「無事でよかった……」
 「ありがとう……」

 二人はしばらく見つめ合い、その視線の熱さに周りが恥ずかしくなり、バルトラ中将含めて皆そそくさと部屋を出て行く。
 
 「グレース、春学期の終わりの模擬舞踏会プロムは知ってるか?」
 「模擬舞踏会プロム?」

 王立フォンテーヌ寄宿学校では毎年春学期の終わりに模擬舞踏会プロムが開かれる。保護者を招待して学びの成果を見せるのが目的だが、生徒達にとっては恋の一大イベントである。
 春学期の初めからこのイベントの序章は始まり、男子は様々な対策をとってパートナーを見つけて申し込み、女子は誘ってもらえるように一年で一番身だしなみに気を使って意中の男子の前でアプローチをしまくる。

 「もちろん、俺と踊るよな?」

 ビリーの目は鋭く、誘う態度というよりも圧力を掛けてきている。

 「え? あ、はい」
 「ドレスは俺が用意するからな」
 「いやらしいデザインだけは勘弁して」
 「むしろブリブリだ」
 「それもどうなのよ」

 ビリーは笑顔でグレースを立ち上がらせる。

 「女子寮までエスコートしよう」
 
 二人は腕を組み、見つめ合いながら、お互いの気持ちを隠す事なく堂々と歩いて女子寮まで向かった。
 
 
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