91 / 152
9.
13-18※
しおりを挟む言うや否や、二海人は真祝のカーゴパンツのファスナーを下ろし、下着ごと剥ぎ取る。
「ふみ……っ?! 」
露わになった自身に直接触れられ、驚く間もなく嘔吐感が込み上げた。
「う…… 」
逃げたくても、しっかりと拘束された手は動かない。開かされた足も、のしかかる二海人の身体で押さえ付けられている。
「……発情期で濡れてるから、このまま挿れるぞ 」
真祝の後ろを何度か指で確かめた後、二海人は自分のボトムを脱ぎ捨てた。ピタリと入り口に二海人自身をあてがわれ、真祝は息を飲む。
見詰め合った時間は、どれ位だったろうか。時間にすれば、ものの数秒だったのだろうが真祝にはとても長い時間に感じた。
罪悪感と欲望を秘めた、黒金剛石のような綺麗な瞳を真祝は一生忘れないと思う。
「……ごめん……っ 」
「う……、あ、……ぐっ!!」
身体を貫かれた途端、真祝は吐き気を押さえ切れずに枕を汚す。
「うっ、うぇっ……、えっ…… 」
ずっと、二海人に抱いて欲しかった。ずっとこの時を夢見ていたのに、αに、たかが項を噛まれただけで、こんなになっちゃうの?
泣きながら吐く。嗚咽が止まらない。
好きなのに、誰よりも好きなのに、1回だけでいいのに、それ以上望まないのに、それさえ許されないっていうの?
「まほ…… 」
「やだ……っ、見ないで 」
涙と鼻水と吐瀉物で、もう顔はぐちゃぐちゃの筈だ。
こんな顔、二海人に見られたくなかったが、縛められた身体では隠すことも隠れることも出来ない。
怖いのは、こんな自分を見て、どんな理由であろうともやっと抱いてくれる気になった二海人の気が削がれてしまうこと。
「見な、いで。ふみ、と、お願、だから、止めな……いで。このま、ま……、して 」
見苦しい顔を見せないよう、せめてもと横を向いて目を瞑っていると、「バカまほ 」と上から優しい声が降ってきた。
「止めねぇよ、……お前がここまでしてるのに止められるかよ 」
言いながら、伸ばした袖口で真祝の顔を拭く。
「ふみと……っ? 汚れる……」
「気にするな 」
一通り拭うと、そのままその手で上を向かせられた。
「キスは大丈夫なんだろ? 」
落とされる口付けに、真祝は焦る。大丈夫も何もそれ以前だ。
「駄目っ、ふみっ……、きたな、いっ……。離して……っ」
「平気だよ 」
けれど、真祝の言葉は無視され、動かない様に頬に添えた手で顔を固定された。
真祝の状態を確かめながら、何度も口付けを重ねてくる。
不思議だ。二海人のキスはまるで薬の様に、苦しさを和らげる作用があるみたいだ。ムカムカとした嘔吐感はあるのに、本当の苦しさは見えない膜の向こう側で抑えられている気がする。
45
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる