月夜の小鳥は哀切な嘘をつく【本編完結。アナザーストーリー連載中★】

山葵トロ

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 言うや否や、二海人は真祝のカーゴパンツのファスナーを下ろし、下着ごと剥ぎ取る。


 「ふみ……っ?! 」
 
 露わになった自身に直接触れられ、驚く間もなく嘔吐感が込み上げた。


 「う…… 」  

 逃げたくても、しっかりと拘束された手は動かない。開かされた足も、のしかかる二海人の身体で押さえ付けられている。


 「……発情期で濡れてるから、このまま挿れるぞ 」

 真祝の後ろを何度か指で確かめた後、二海人は自分のボトムを脱ぎ捨てた。ピタリと入り口に二海人自身をあてがわれ、真祝は息を飲む。

 見詰め合った時間は、どれ位だったろうか。時間にすれば、ものの数秒だったのだろうが真祝にはとても長い時間に感じた。
 罪悪感と欲望を秘めた、黒金剛石のような綺麗な瞳を真祝は一生忘れないと思う。


 「……ごめん……っ 」

 「う……、あ、……ぐっ!!」 

 身体を貫かれた途端、真祝は吐き気を押さえ切れずに枕を汚す。

 
 「うっ、うぇっ……、えっ…… 」

 ずっと、二海人に抱いて欲しかった。ずっとこの時を夢見ていたのに、αに、たかがうなじを噛まれただけで、こんなになっちゃうの? 

 泣きながら吐く。嗚咽が止まらない。

 好きなのに、誰よりも好きなのに、1回だけでいいのに、それ以上望まないのに、それさえ許されないっていうの?


 「まほ…… 」

 「やだ……っ、見ないで 」

 涙と鼻水と吐瀉物で、もう顔はぐちゃぐちゃの筈だ。
 こんな顔、二海人に見られたくなかったが、いましめられた身体では隠すことも隠れることも出来ない。

 怖いのは、こんな自分を見て、どんな理由であろうともやっと抱いてくれる気になった二海人の気が削がれてしまうこと。


 「見な、いで。ふみ、と、お願、だから、めな……いで。このま、ま……、して 」

 見苦しい顔を見せないよう、せめてもと横を向いて目を瞑っていると、「バカまほ 」と上から優しい声が降ってきた。


 「めねぇよ、……お前がここまでしてるのにめられるかよ 」

 言いながら、伸ばした袖口で真祝の顔を拭く。


 「ふみと……っ? 汚れる……」

 「気にするな 」

  一通りぬぐうと、そのままその手で上を向かせられた。


 「キスは大丈夫なんだろ? 」

 落とされる口付けに、真祝は焦る。大丈夫も何もそれ以前だ。


 「駄目っ、ふみっ……、きたな、いっ……。離して……っ」
 
 「平気だよ 」


 けれど、真祝の言葉は無視され、動かない様に頬に添えた手で顔を固定された。


 真祝の状態を確かめながら、何度も口付けを重ねてくる。
 不思議だ。二海人のキスはまるで薬の様に、苦しさを和らげる作用があるみたいだ。ムカムカとした嘔吐感はあるのに、本当の苦しさは見えない膜の向こう側で抑えられている気がする。


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