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第一章 学院入学編
新たな出会い
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「話が違う」
「違うものか。思い返してみれば俺の方がコンマ数秒早く店主に声を掛けていた。つまり最後のあいすくりーむは俺のモノだ」
「あなたがコンマ何秒早かったろうと関係無い。あなたはアイスクリームの購入権利を私に譲った。その時点で最後のアイスクリームは私のモノ。というか、店主に声を掛けたタイミングはコンマ数秒のズレも無く同時。つまり、あなたの理論は端から意味を成していない」
「五月蠅い! 気が変わったのだ! あいすくりーむを買うのは俺!!」
淡々と言葉を発する少女に俺は食い下がる。
「全く……野蛮と言う以外言葉が見つからない。あなたの将来が思いやられる」
「……今、何と言いましたか?」
突如、その場の空気が凍り付くのを感じた。
その原因を俺は見た。
明らかに怒りを露にしているネスティを。
「私の主《あるじ》が野蛮。そう言いましたね? 将来が思いやられるとも」
わなわなと口を震わせながらネスティは言葉を紡ぐ。
「言った。だって事実」
「少し、向こうで建設的な話し合いをしましょうか……?」
「あなた、さっき寛大なお心遣いとか言ってたけど」
「イブル様の気が変わった。それだけのことです」
「すごい迷惑」
少女が言葉を連ねる度にネスティは額に青筋を浮かばせる。
十年の付き合いだから分かる……これは、まずい。
ネスティの俺に対する忠誠心は本物だ。
そんな彼女が主である俺を侮辱され、黙っていられるはずがない。
今ネスティは爆発的な怒りが沸き上がってきている。
彼女の上に立つ者として、ここは何とかしなければ……!
しかしあいすくりーむは食べたい。
いくら状況が切迫しても、その気持ちには一切の淀みが存在しなかった。
くっ……!! どうする……!!
もしこのままこの少女にあいすくりーむを譲れば、少女はこれ以上何も言わずにこの場を立ち去ってくれるだろう……。
この状態のネスティならばまだ俺が口で宥めれば済む。
だが、俺があいすくりーむを食べればこの少女の俺に対する罵詈雑言は更に苛烈し、ネスティの怒りは完全に止められないものになるだろう……!!
いや、正確には止める事は出来る。
だが間違いなくここ一帯は消し飛ぶ……!!
二者択一……!! 己の欲望を優先するか……、それを堪えここでの被害を最小限に抑えるか……!!
なんて残酷な試練を与えるのだ……!! こんなもの恐らく入学試験より過酷だぞ……!!
冷や汗を流し、刹那の時間で俺は思考する。
どうすれば穏便に事を済まし、あいすくりーむを食べられるか。
どちらも成し遂げるという欲望が、俺の頭を回転させる。
そして、解を得た。
「分かったぞ!!」
「な、何?」
喜ぶ俺の声に少女は少し驚く。
「一先ず、ネスティ落ち着け」
「申し訳ございませんイブル様。いくら貴方様の頼みであっても、それは了承しかねます。その女は、言ってはいけない事を口にしました」
「だって本当」
「何ですって……?」
「ネスティ!」
「っ!?」
俺は少し、強めな口調で彼女を制した。
「おい少女」
「少女じゃない。私の名前はエヴァ、エヴァ・ノース」
「そうか、ならばエヴァ。一つ提案がある」
「何? 言っておくけど、私はアイスクリームを諦めない」
「分かっている。お前の決意は本物だ……だから、こうしよう」
そして俺は考えた策を話す。
それを聞いたエヴァは怪訝そうな表情を向けるが、仕方なさそうに溜息を吐くと、それを了承したのだ。
◇
俺が提示した案。
それは最後のあいすくりーむを二人で分け合おうというものだった。
これならば俺もエヴァも俺もあいすくりーむを食べられる。
エヴァは罵詈雑言を止め、俺は俺であいすくりーむを味わうという事が出来る天才的発想だ。
ふっ……、我ながら俺の頭脳が恐ろしい。
俺は自分の天才ぶりに敬服した。
「はい」
「うむ」
そんな事を考えていると、エヴァが俺にあいすくりーむを差し出してきた。
俺はそれを受け取り、一舐めすると再びエヴァに返す。
「ほれ」
「うん」
同じようにあいすくりーむを受け取ったエヴァはペロリとそれを舐めまた俺に返す。
何故こんな面倒な食い方をしているかと言うと、あいすくりーむを半分に分けるのが難しいからだ。
例えば上半分、下半分で分けたとしよう。
しかし考えてみてほしい、そうすると下の者は明らかに上の者よりも食す量が少なくなり、上の者は恐らくこの甘味の要であるコーンを食す事が出来ない。
そういった事態を想定し、俺とエヴァは一口ずつあいすくりーむを食べるという行為に準じているというわけだ。
こうして、俺とエヴァは何の遺恨も無くあいすくりーむを楽しんだ。
「……」
ただ一人を除いて。
「ど、どうしたネスティ……?」
問題は解決したはずだが、ネスティは何故か不機嫌そうな顔をしている。
俺に対する侮辱の言葉は吐かれなくなった、俺もあいすくりーむを食べれている。
彼女が怒る理由など最早存在しないはずなのだが……。
「ズルいです……」
ズルい……?
「な、何がだ……?」
ネスティの発言の意味が理解出来なかった俺は思わず聞き返した。
「わ、私だって……! イブル様と接吻がしたいです!」
「……」
うむ、意味が分からない。
自分もあいすくりーむが食べたいとかならまだ分かるがそれは本当に意味が分からない。
返ってきた答えは、また俺の理解の及ばぬものだった。
「接吻? 何の事だネスティ」
「……それです……」
そう言ってネスティはプルプルと指を震わせながらあいすくりーむを指差した。
「これがどうした?」
「どうしたもこうしたもありません……! さっきからその女、イブル様が口を付けたアイスクリームを食べ続けているんです……!」
「そ、そりゃあ交互に食べているからな。だが接吻と言っても間接的なものだぞ?」
「間接的でも、接吻は接吻です……! 私だって、イブル様の食器を洗う際にイブル様のスプーンを舐めたりしていますがそんな風に一つの食べ物を一緒に食べるなど今までありませんでした……」
ん? 今何かとんでもない事を言わなかったか?
ネスティの言葉に引っ掛かりを覚える俺だったが、そんな事を遠き彼方へ追いやる程に彼女は言葉を捲《まく》し立てた。
「イブル様にあれだけ暴言を吐きながら接吻までするとは……やはり、その女は許せません」
「イブル、この人は危ない人?」
「呼び捨て……?」
唐突に俺の名を呼び捨てにしたエヴァに対し、ネスティは目を見開いた。
「お、落ち着けネスティ!」
「あなた……何故イブル様に『様』を付けないのですか……?」
「『様』は上流階級の人間や、尊敬する人に付ける。イブルはそのどれにも該当しない」
「っ!!」
もう駄目だ。
そう思い俺が実力行使に出ようとした時。
「それ以上は、ダメ」
その場の空気が、揺らいだ。
これは……マナの波動。
エヴァが発したものか、すぐに俺は原因を悟る。
ある程度の高みに至った者は、体内外のマナを操り自在に圧を発する事が出来る。
エヴァはそれを行ったのだ。
コイツ……、中々に強いとは思っていたがまさかこれ程とはな。
恐らく、ネスティと互角か……それ以上だろう。
「……あなた」
ネスティもエヴァの実力の一端を理解したようだ。
「そんな状態でスキルを使われたら大変」
エヴァの言葉は最もだった。
「ネスティ、エヴァの言う通りだ。ここは……抑えてくれ」
「……はい」
エヴァの強さに触れた事も相まって、少し冷静になったのだろう。
ネスティは怒りを治めた。
「ん、私そろそろ行く」
「そうか……ではな」
「うん」
短く挨拶を交わし、エヴァは去っていく。
その背中を見ながら俺は思う。
そしてそれは口に出た。
「エヴァ!」
「ん?」
「いつか戦える事を楽しみにしているぞ!! ガァーハッハッハッハハハハ!!」
「……そう」
戦闘本能からきた俺の言葉にエヴァは何一つ様子を変える事無く答えた。
◇
「ネスティ」
「……何でしょうイブル様」
「お前が俺のために怒ってくれるのはとても嬉しい! だが時には堪える事も必要だ!」
「……はい。言い訳の余地もございません。さっきも今も……私は怒りに身を任せそうになっていました」
町ではそこまで人と関わって来なかったし、町民の数もそこまで多くは無かった。
だがここは訳が違う。
王都と言うだけあって莫大な人口がいる、入学すれば恐らく多くの生徒と交流が発生する。
そんな時ネスティがこんな調子では、危なっかしくて仕方が無い。
先程の件でそれが良く分かった。
という訳で、俺はある命令を下す事にした。
「ネスティ! お前は今日からどれだけ俺に罵声が飛ばされても堪える練習をしろ!」
「っ!? そ、そんな……!」
「いいか、これは絶対だ。さっきは後少しで、ここら一帯が消し炭になる所だったんだからな」
「そ、それは……」
間違いない、そう思っているネスティは口をつぐんだ。
「俺に関する怒りで武力行使に出ていいのは、俺が許可した時だけだ。分かったか!」
「……はい」
何処か意気消沈したようにネスティは答える。
ここは何か別でフォローを入れないとまずいな。
「そ、そうだネスティ!」
「何でしょう……?」
「まぁ……何だ、今度何か一つお前の願いを叶えてやろう! だから……」
うーん、あまりにも露骨過ぎるか……?
そう思ったが、
「本当ですか!?」
杞憂だったようだ。
暗かったネスティの表情がたちまち晴れやかになったのが、それを証明していた。
「違うものか。思い返してみれば俺の方がコンマ数秒早く店主に声を掛けていた。つまり最後のあいすくりーむは俺のモノだ」
「あなたがコンマ何秒早かったろうと関係無い。あなたはアイスクリームの購入権利を私に譲った。その時点で最後のアイスクリームは私のモノ。というか、店主に声を掛けたタイミングはコンマ数秒のズレも無く同時。つまり、あなたの理論は端から意味を成していない」
「五月蠅い! 気が変わったのだ! あいすくりーむを買うのは俺!!」
淡々と言葉を発する少女に俺は食い下がる。
「全く……野蛮と言う以外言葉が見つからない。あなたの将来が思いやられる」
「……今、何と言いましたか?」
突如、その場の空気が凍り付くのを感じた。
その原因を俺は見た。
明らかに怒りを露にしているネスティを。
「私の主《あるじ》が野蛮。そう言いましたね? 将来が思いやられるとも」
わなわなと口を震わせながらネスティは言葉を紡ぐ。
「言った。だって事実」
「少し、向こうで建設的な話し合いをしましょうか……?」
「あなた、さっき寛大なお心遣いとか言ってたけど」
「イブル様の気が変わった。それだけのことです」
「すごい迷惑」
少女が言葉を連ねる度にネスティは額に青筋を浮かばせる。
十年の付き合いだから分かる……これは、まずい。
ネスティの俺に対する忠誠心は本物だ。
そんな彼女が主である俺を侮辱され、黙っていられるはずがない。
今ネスティは爆発的な怒りが沸き上がってきている。
彼女の上に立つ者として、ここは何とかしなければ……!
しかしあいすくりーむは食べたい。
いくら状況が切迫しても、その気持ちには一切の淀みが存在しなかった。
くっ……!! どうする……!!
もしこのままこの少女にあいすくりーむを譲れば、少女はこれ以上何も言わずにこの場を立ち去ってくれるだろう……。
この状態のネスティならばまだ俺が口で宥めれば済む。
だが、俺があいすくりーむを食べればこの少女の俺に対する罵詈雑言は更に苛烈し、ネスティの怒りは完全に止められないものになるだろう……!!
いや、正確には止める事は出来る。
だが間違いなくここ一帯は消し飛ぶ……!!
二者択一……!! 己の欲望を優先するか……、それを堪えここでの被害を最小限に抑えるか……!!
なんて残酷な試練を与えるのだ……!! こんなもの恐らく入学試験より過酷だぞ……!!
冷や汗を流し、刹那の時間で俺は思考する。
どうすれば穏便に事を済まし、あいすくりーむを食べられるか。
どちらも成し遂げるという欲望が、俺の頭を回転させる。
そして、解を得た。
「分かったぞ!!」
「な、何?」
喜ぶ俺の声に少女は少し驚く。
「一先ず、ネスティ落ち着け」
「申し訳ございませんイブル様。いくら貴方様の頼みであっても、それは了承しかねます。その女は、言ってはいけない事を口にしました」
「だって本当」
「何ですって……?」
「ネスティ!」
「っ!?」
俺は少し、強めな口調で彼女を制した。
「おい少女」
「少女じゃない。私の名前はエヴァ、エヴァ・ノース」
「そうか、ならばエヴァ。一つ提案がある」
「何? 言っておくけど、私はアイスクリームを諦めない」
「分かっている。お前の決意は本物だ……だから、こうしよう」
そして俺は考えた策を話す。
それを聞いたエヴァは怪訝そうな表情を向けるが、仕方なさそうに溜息を吐くと、それを了承したのだ。
◇
俺が提示した案。
それは最後のあいすくりーむを二人で分け合おうというものだった。
これならば俺もエヴァも俺もあいすくりーむを食べられる。
エヴァは罵詈雑言を止め、俺は俺であいすくりーむを味わうという事が出来る天才的発想だ。
ふっ……、我ながら俺の頭脳が恐ろしい。
俺は自分の天才ぶりに敬服した。
「はい」
「うむ」
そんな事を考えていると、エヴァが俺にあいすくりーむを差し出してきた。
俺はそれを受け取り、一舐めすると再びエヴァに返す。
「ほれ」
「うん」
同じようにあいすくりーむを受け取ったエヴァはペロリとそれを舐めまた俺に返す。
何故こんな面倒な食い方をしているかと言うと、あいすくりーむを半分に分けるのが難しいからだ。
例えば上半分、下半分で分けたとしよう。
しかし考えてみてほしい、そうすると下の者は明らかに上の者よりも食す量が少なくなり、上の者は恐らくこの甘味の要であるコーンを食す事が出来ない。
そういった事態を想定し、俺とエヴァは一口ずつあいすくりーむを食べるという行為に準じているというわけだ。
こうして、俺とエヴァは何の遺恨も無くあいすくりーむを楽しんだ。
「……」
ただ一人を除いて。
「ど、どうしたネスティ……?」
問題は解決したはずだが、ネスティは何故か不機嫌そうな顔をしている。
俺に対する侮辱の言葉は吐かれなくなった、俺もあいすくりーむを食べれている。
彼女が怒る理由など最早存在しないはずなのだが……。
「ズルいです……」
ズルい……?
「な、何がだ……?」
ネスティの発言の意味が理解出来なかった俺は思わず聞き返した。
「わ、私だって……! イブル様と接吻がしたいです!」
「……」
うむ、意味が分からない。
自分もあいすくりーむが食べたいとかならまだ分かるがそれは本当に意味が分からない。
返ってきた答えは、また俺の理解の及ばぬものだった。
「接吻? 何の事だネスティ」
「……それです……」
そう言ってネスティはプルプルと指を震わせながらあいすくりーむを指差した。
「これがどうした?」
「どうしたもこうしたもありません……! さっきからその女、イブル様が口を付けたアイスクリームを食べ続けているんです……!」
「そ、そりゃあ交互に食べているからな。だが接吻と言っても間接的なものだぞ?」
「間接的でも、接吻は接吻です……! 私だって、イブル様の食器を洗う際にイブル様のスプーンを舐めたりしていますがそんな風に一つの食べ物を一緒に食べるなど今までありませんでした……」
ん? 今何かとんでもない事を言わなかったか?
ネスティの言葉に引っ掛かりを覚える俺だったが、そんな事を遠き彼方へ追いやる程に彼女は言葉を捲《まく》し立てた。
「イブル様にあれだけ暴言を吐きながら接吻までするとは……やはり、その女は許せません」
「イブル、この人は危ない人?」
「呼び捨て……?」
唐突に俺の名を呼び捨てにしたエヴァに対し、ネスティは目を見開いた。
「お、落ち着けネスティ!」
「あなた……何故イブル様に『様』を付けないのですか……?」
「『様』は上流階級の人間や、尊敬する人に付ける。イブルはそのどれにも該当しない」
「っ!!」
もう駄目だ。
そう思い俺が実力行使に出ようとした時。
「それ以上は、ダメ」
その場の空気が、揺らいだ。
これは……マナの波動。
エヴァが発したものか、すぐに俺は原因を悟る。
ある程度の高みに至った者は、体内外のマナを操り自在に圧を発する事が出来る。
エヴァはそれを行ったのだ。
コイツ……、中々に強いとは思っていたがまさかこれ程とはな。
恐らく、ネスティと互角か……それ以上だろう。
「……あなた」
ネスティもエヴァの実力の一端を理解したようだ。
「そんな状態でスキルを使われたら大変」
エヴァの言葉は最もだった。
「ネスティ、エヴァの言う通りだ。ここは……抑えてくれ」
「……はい」
エヴァの強さに触れた事も相まって、少し冷静になったのだろう。
ネスティは怒りを治めた。
「ん、私そろそろ行く」
「そうか……ではな」
「うん」
短く挨拶を交わし、エヴァは去っていく。
その背中を見ながら俺は思う。
そしてそれは口に出た。
「エヴァ!」
「ん?」
「いつか戦える事を楽しみにしているぞ!! ガァーハッハッハッハハハハ!!」
「……そう」
戦闘本能からきた俺の言葉にエヴァは何一つ様子を変える事無く答えた。
◇
「ネスティ」
「……何でしょうイブル様」
「お前が俺のために怒ってくれるのはとても嬉しい! だが時には堪える事も必要だ!」
「……はい。言い訳の余地もございません。さっきも今も……私は怒りに身を任せそうになっていました」
町ではそこまで人と関わって来なかったし、町民の数もそこまで多くは無かった。
だがここは訳が違う。
王都と言うだけあって莫大な人口がいる、入学すれば恐らく多くの生徒と交流が発生する。
そんな時ネスティがこんな調子では、危なっかしくて仕方が無い。
先程の件でそれが良く分かった。
という訳で、俺はある命令を下す事にした。
「ネスティ! お前は今日からどれだけ俺に罵声が飛ばされても堪える練習をしろ!」
「っ!? そ、そんな……!」
「いいか、これは絶対だ。さっきは後少しで、ここら一帯が消し炭になる所だったんだからな」
「そ、それは……」
間違いない、そう思っているネスティは口をつぐんだ。
「俺に関する怒りで武力行使に出ていいのは、俺が許可した時だけだ。分かったか!」
「……はい」
何処か意気消沈したようにネスティは答える。
ここは何か別でフォローを入れないとまずいな。
「そ、そうだネスティ!」
「何でしょう……?」
「まぁ……何だ、今度何か一つお前の願いを叶えてやろう! だから……」
うーん、あまりにも露骨過ぎるか……?
そう思ったが、
「本当ですか!?」
杞憂だったようだ。
暗かったネスティの表情がたちまち晴れやかになったのが、それを証明していた。
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