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第二章 学院事件編

スキルと天職を知ろう

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「はーい。それじゃあ授業を始めるよー」

 俺は女達からの白い視線を一身に浴びながら生まれて初めての授業を受ける事となった。

「まぁ、と言っても幼少期から教育を受けている君達なら知ってるか」

 いや知らんが。

 ツッコミたくなる衝動を抑えて俺はクルスの話を聞く。

「今日はとりあえず基本的な事を教えます。まずはスキルについて」

 そう言いながらクルスは黒板に何かを書き込んでいく。

「スキルとはマナを使用する技の総称を示します」

 ほぅ、そういう定義なのか。
 今までよく分からず使っていたぞ。

「スキルには様々な種類があります。魔法型、武術型、付与型、生産型、探知型に耐性型と……正直挙げればキリがありません」

 困ったような顔を浮かべながらクルスの話は進んでいく。

「スキルを習得する方法は様々です。個人の研鑽、または仲間との研鑽で開花する事もある。それどころか先天的、もしくは後天的に突然何かのスキルが使えるようになる事すらあります」

 努力によって得る事も出来る。
 生まれた時に授かっている場合もある。
 そして生きていて突然使えるようになる事もある。

 確かに俺も『覇者の眼ドミネート・アイ』は生まれた時から使えたな……。

 クルスの説明を頭の中でまとめながら俺はそんな事を考えた。

「生まれながら持っていたり、突然開花したりといったケースは非常に運の要素が強いですが、平等に出来る事は研鑽を積む事です。マナの扱い、魔法の扱い、武具の扱い、身体能力の向上……皆さんこれから頑張って下さいね?」

 ニッコリと笑いながら、クルスは再び黒板に文字を書き始める。

「次に『天職』について説明します」

 話は『天職』の事に移行した。

「皆さんにはそれぞれの本質、才能、これまでの人生で培ってきた経験があります。『天職』とは天啓板を使用して、それを反映したものです。『天職』を授かったあなた達はそれに即したスキルの習得が非常にスマートになりました。例えばテディ君」
「は、はい!」
「君の天職は『鍛冶師』。つまり生産系のスキルの習得がとても早くなったという事です」
「な、なるほど……」

 納得したようにテディは言葉を漏らす。

「ここで勘違いしないでほしいのは『天職』を授かったからと言って、それに関連するスキル以外の習得が出来なくなった訳じゃない。ただまぁ……」

 そうして、クルスは突然手から剣を生成した。

「僕の天職は『魔術師』、だからあまり生産系のスキルは得意じゃない」

 そう言いながら、クルスは剣を地面に振り下ろす。
 すると彼が創り出した剣は刀身の真中からポキリと折れた。

「こんな感じで、『鍛冶師』が行う生産スキルと僕のとではその精度や質に雲泥の差がある」

 何だ、ネスティ程ではないがこの教員も結構分かりやすいな。
  
 クルスの授業を聞きながら、俺は感心する。

 こんな感じでクルスの話は続いていった。
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