射れ変わりの法則

金棒ぬめぬめ

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第1章:夏休み

第20話 一人きりの留守番。

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 十一時過ぎに家へ戻ってきた俺は、また夜更けまでオナニーに興じ、昼近くまでぐっすりと眠っていた。昨日きのうは、あんなことを思ってしまったが、男の身体からだを恋しいと思う反面、やはり女子の身体も捨てがたい。
 翌日、今回はしっかりとパジャマを着たまま目を覚ました俺は、リビングへと下りていく。そこに兄貴の姿はなく、また置き手紙だけを残し、仕事へと出かけていったようだ。書かれていた文言は、シンプルなものだった。
「急に仕事が入った。てきとうにご飯をつくってて」
 腹の虫が盛大に鳴る。昼近く、俺は絶望感に打ちひしがれていた。自分の娘は料理が作れると、どうやら兄貴は思っているらしい。それは正しいが、それは俺じゃなくて、本当の、自分の娘だろう。
 いや、まあ、そりゃそうか。とりあえず身体が元に戻るまでの課題として、料理ができるようになるのは急務だった。
 鍵を預けられていないため、留守にするのはリスクが大きい。合鍵があるのかどうかは、俺は知らない。今までどんな生活を送ってきたのだろう。そこら辺も今度、芽衣《めい》に会ったときいてみよう。元に戻るまでは、今まで相手(本来の身体の主)がしてきた生活習慣を無闇に変えることはできない。
 ビールだけはうら寂しいが、煙草たばこは今まで吸わなくてよかったと、このとき初めて思った。俺の日常といえば、バイトに行ってオナニーするくらい。バイトは行きたくもなかったし、オナニーがこの身体でもできることは、自分の身をもって証明した。
 あとは、何日かすれば始まる学校生活。学校にいい思い出はないが、一抹いちまつの不安を感じつつも、少しだけワクワクのほうが勝っていた。夏休みの間に戻るかもしれないが、一応、学校生活の準備は始めておこう。
 まったく食べていないから、正午も過ぎれば自然と小腹がいてくる。カップ麺のストックでもないかと、キッチンへ足を運ぼうとした、そのとき、家のチャイムが鳴った。小学生の女の子しかいない状況で、不用意に出ていけるはずもない。まずは相手が誰かを確認すべく、玄関へと向かった。すると、聞き覚えのある声とともに、玄関が激しく叩かれる大きな音がする。
「出てきなさいっ!」それは、芽衣の母親の声だ、と俺は思った。そんなに会ったことはないが、たぶんそうだろう。明美さんは、在宅なのを知ってるような口ぶりだ。しかし、兄貴はほとんど家に帰らなかったと聞いている。「いるんでしょう、芽衣」
 俺は全身を震わせた。用件があるのは、兄貴じゃなくて芽衣オレか? ……で、出ないほうがいいよな、これは。勝手に出て、兄貴に怒られるのも嫌だし、芽衣も嫌なんじゃないか?
 でも、なんで、わざわざ来たんだ? 親権は放棄したって、兄貴は言っていたはずだ。
「なに、無視してんのよ」
 そう呟く声が聞こえた直後、ひときわ大きな音が響き渡る。そんなはずもないが、ドアが少しばかりひしゃげたような錯覚を感じる。
「こわっ」
 俺は思わず心の声が漏れるほどに、おぞましい殺意のようなオーラが放たれているような気がした。実の娘に向ける態度か、あれは。
 もう戻ってこないことを祈りつつ、俺はカップ麺を探し求めてキッチンへと向かった。結果から言うと、この家のどこからも、ジャンク的なフードは微塵も見つけられない。子供の身体は、新陳代謝がいいのか、それとも燃費が悪いのか、刻一刻と空腹感を増していく。
 からっきし家事はダメな俺は、洗濯機にも掃除機にも一切触れず、料理もする気が起きず、兄貴が帰ってくるのをひたすら待った。材料は豊富に備えられているらしく、そのぶんレパートリーの選択肢は多かったが、全くレシピが俺の頭の中に浮かんでこなかった。
 午前れい時。俺は人生史上、最大の空腹感にさいなまれていた。手持ち無沙汰ぶさたに、つ、イライラを解消するために。そして、この空腹感をまぎらわせるために。勝手に俺の右手は、また股間へと伸びていった。
 もう一人きりの留守番は嫌だ。例のごとく兄貴に頼み、また俺のアパートまで連れていってもらうほかないだろう。芽衣の手料理(俺の身体なのが難点だが)も食べたいし、今後の作戦会議もしたかった。
 何度目かの腹の虫が合唱が鳴ったところで、玄関の開かれる音を耳にする。いつの間にか日が暮れていたのにも、俺は気づかなかった。もう夕食を済ませたと思っている兄貴は「なにしているんだ? 早く寝なさい」とだけ忠告すると、そそくさと階段を上がっていってしまう。嘘だろ……一晩、この空腹に耐えるしかないっってのか……
 その翌日。眠気と飢えをこらえて階段を下りていった俺に、兄貴のほうから話を持ちかけてきた。
明日あしたから、また出張があるんだ。また叔父おじさんのところに泊まってくれるか」
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