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第28話 挨拶は大事?
「ふ、ふ、ふ、ふゆのぴゃ……ふゆのちゃんをっ……ぼ、ぼ、ぼくにくださいっ!!」
く、ください…………?
つまり……………………結婚……!?
……………………。
………………。
…………。
「おにーたん?」
「あっ……!?」
おっといけない……!浩巳君がいきなりとんでもない事を言うものだから、思考がフリーズしてしまった……!
我に返ると、冬乃ちゃんのクリクリした瞳と、浩巳君のキラキラした瞳が僕を見上げている。
取り敢えず、こうも玄関で3人揃って突っ立っているのもなんだ……。
「まぁ、上がってよ浩巳君!おやつ食べてきな!カルプス作るから」
「は、はひっ!おじゃましますっ!」
「おにーたん!こい~のつくって~!」
「はいはい……」
冬乃ちゃんと浩巳君が、少し濡れた靴を脱いで家に上がるのを確認すると、僕はキッチンに向かった。
「………………」
さっき、冬乃ちゃんが言ってたっけ……。
浩巳君は冬乃ちゃんと同じクラス。
つまり、2年生……。まだ幼い子どもだ……。
子どもが仲良しな子と結婚を約束するなんて、よくある事じゃないか。ちょっと大人びたままごとだ。
それなのに……。
冬乃ちゃんと結婚したいと聞いた時、僕は酷く動揺した。動揺……してしまった……。
子どもの言う事なのに……。
だって、前世では冬乃ちゃんは……ケンジと……。
「う……っ」
不意に軽い目眩がして、僕はリビングの柱に頭をぶつけてしまった。
「だ、だいじょうぶですか……」
痛みに顔をしかめると、浩巳君が心配そうに僕を見た。
「ぼく……きょうはかえります……」
「あ、あー!大丈夫大丈夫!良いから良いから」
僕は浩巳君を慌てて引き止めた。
浩巳君、良い子そうじゃないか……。話を聞いてみたいと思った……。
少し引っ込み思案気味に見える所は、前世の僕にちょっと似ている。本物の女の子に見えそうな美貌は比べ物にならないけど……。
「さぁさぁ!手を洗っておいで!」
「は、はい……」
こんな優しそうな子に……一瞬、嫉妬してしまった僕……。
重苦しい罪悪感が……僕の身体を駆け抜けた……。
全く……僕って奴は……。
****
「さあ!召し上がれ!」
「い、いただきます……!」
詩乃さんと一緒に買ったチョコレートケーキを皿に乗せて、僕は浩巳君の前に差し出した。
ちなみに冬乃ちゃんには大好物のチーズケーキ。
元々チョコレートケーキは僕のヤツだったけど……まぁ……良いでしょう。
美味しそうだけど……良いでしょう……。僕はアイスティーだけで……大丈夫……。
「あ、おにーたん?」
ふいに、チーズケーキをモソモソ頬張りながら、冬乃ちゃんが首を傾げた。
「さっきおててあらってたら、ママはだかんぼでおフロそーじしてたけど、どうしたの?」
「ぶぅーーーーっ!」
「わーーーーっ!?」
思い切り動揺した僕は、口に含んでいたアイスティーを思い切り浩巳君に噴きかけてしまった!
目の前で、顔面アイスティーまみれになった浩巳君が、泣きそうな顔をしていた。
「ご、ごめん浩巳君!?ふ、拭くもの!?」
「だ、大丈夫ですっ!」
僕は、ちょうどリビングのソファーに畳んで置いてあったタオルを取ると、浩巳君へと渡す。
浩巳君はしばらくタオルと僕を見比べた後、申し訳なさそうに顔を拭き始める……。
「ねー?なんでママはだかんぼだったの?」
キラキラ輝く瞳で、冬乃ちゃんは尚も追求してくる。
い、言えない……!君のママとセックスしてたなんて……天地が逆さまになっても言えない……!
「ほ、ほら!今日は凄く暑いだろ?お風呂掃除をすると汗でビショビショになるから、詩乃さんは……ママは洗濯物を増やさないように裸で掃除してたんだよ……」
「なーんだ!そっか!!」
どうやら納得したらしい。冬乃ちゃんはニコニコ笑いながらリクエスト通り濃いめに作ったカルプスを飲んだ。
「………………」
ふと、視線を感じる。
振り向くと、キッチンの傍、脱衣所に続く扉が半開きで、そこから、
(舜くん……助けて……!)
顔を真っ赤にした詩乃さんが顔を覗かせ、僕に向かって口をパクパクさせていた。
下を見遣ると、扉の隙間から詩乃さんの鎖骨が、褐色の乳首がチラリと見えた。
なんでまだ服を着てない!?何やってるんだあの人……!?
(詩乃さん……!?なんでまだ裸なの……!?)
(着替えを置いておくの忘れちゃった……!舜くんごめんなさい……!き、着替えを頂戴……!私……身動き取れないわ……!)
(わ、わかった……!)
僕は慌てて洗濯物から詩乃さんのシャツとスカートを……。
………………。
此処でやっと、僕の欲望が鎌首を持ち上げ……。
………………。
そっと僕に囁きかける。
………………。
****
「ヒロくん、ずがこーさくできた?」
「う、うん!海に行った時の事、絵に描いた…っ」
「ほんと!?ふゆ見たい!」
「じゃあ……明日持って来るね…っ」
冬乃ちゃんと浩巳君が談笑に夢中なのを見計らって、僕は着替えを詩乃さんの所へと持っていった。
浩巳君、チラチラとよく僕の事見るけど……害意は無い様に……思う。
害意と言うか……浩巳君の、僕に向けられるあの眼差し……。
以前に、似たような視線を……何処かで……?
「はい……」
「ああ…!ありがとう舜くん……って……え……えぇ!?」
僕が差し出した服を見て、詩乃さんは最初安堵していたが、段々と戸惑い……そして……赤面していった。
「舜くん……!?これ春音の……!?それに……下着が無い……」
そう。
僕が持っていったのは、詩乃さんの服よりもワンサイズ小さい、春音姉さんのTシャツと、ミニスカート。それだけ……。
ブラジャーとショーツは、敢えて持って来なかった……。
「しゅ……舜くん……あ、あの……っ」
オロオロと困惑する全裸の詩乃さんに、僕はニッコリ笑って言った。
「さぁ早く着て……。ちゃんとお客さんに……浩巳君に挨拶してください」
続く
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