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[7]魔法!、続き

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「ただいまー」
俺は玄関の扉話開けてそう言った。
すると、すぐに母が居間から顔をのぞかせた。
「あら、どうしたの?」
「今日、村に来て遅くなったからここに泊まろうと思って」
「まあいいわ、早く上がりなさい」
俺はそう言われて居間へと上がったのだが、なぜかお茶とお菓子が出て来てまるで俺が客人であるかのような待遇だった。母は相当嬉しかったのだろう。まだアカシアに行ってから一週間も経っていないが俺も母に会えて嬉しかった。
 
「ただいまー」
しばらく母と会話していると父が帰ってきた。
「おかえりなさい」
俺が父に返事をすると、母と同じように少し驚いて聞いた。
「おお、ケントじゃないか、何かあったのか?」
俺は母の時と同じように答えた。
「村に用事があってアカシアに帰ると遅くなってしまうから泊まろうと思って」
「用事ってなんだ?」
父は俺に尋ねた。
「すずかのお父さんに魔法を教えてもらったんだ。明日も正午過ぎから教えてもらうつもりだよ」
「ツクシさんか、ちゃんとお礼しとけよ。俺からもいっとくが…」
「うん」

俺が荷物を整理していると父は何かに気づいたように話し始めた。
「ケント、畑の隣に倉庫があるだろ?その中にいい刀が入っていたような気がする。明日見とくからあったらお前にあげるわ」
父の言い方が少し雑だったから本人も倉庫にあるのか分かっていないのだろう。ただもらえるものならもらっておきたい。たとえ、あまり良い刀じゃなかったとしても使えるなら予備としては十分だ。だから一応聞いてみた。
「その刀ってどんなの?」
父は答える。
「わからん」

 俺は自分の部屋の扉を引いた。アカシアへ行く前にほとんどの荷物を蔵に入れるか、捨てるかしたから部屋にはいくつかの置物と十数冊の本くらいしか残っていない。もちろんたんすの中も空だ。本棚に残された本の中から学校で使っていたノートが出てきた。懐かしいと思いながらページをめくっていると、例のダンジョンについて俺が書き留めていた文章が見つかった。カンタが言ったことを当時の俺が書いたものだ。
 当時の俺はそのダンジョンについてとても興味を持っていた。だからあの時、俺とカンタはコウタを説得しスズカを無理やり連れてダンジョンを探しに森へと入った。

 そんなことを考えているうちに眠たくなってきたので今日は寝ることにした。

 翌朝、父と一緒に倉庫に刀を探しにやってきた。家から畑を挟んで反対側にあるやや大きめの農業用具を入れるための倉庫だが、最近は奥のものまで出して整理していないらしい。入り口から一歩以上先に置いてあるものはそのほとんどが埃をかぶっていた。
「たぶん、その奥にあるはずなんだけどなあ」
父がそう言って指をさした方向を見たのだが、箱が大量に積み上げられ、使わなくなったクワなどもそこそこの数が立てかけられている。
「この中を探すの?」
「まぁ、さすがに箱の中に入る大きさじゃないから箱の中は探さなくていいぞ」
父はそう言ったが、このまま探したら一日じゃ足りないので掃除もかねていったん倉庫の中身を外に出すことにした。
 荷物を7割ぐらい外に出し終わったところで母が昼食を持ってきてくれた。たしか、昔から畑作業をしていた時は母が昼食を畑まで持ってきてくれていた。ここ数年間は学校が忙しかったからあまり畑で昼食をとる機会がなかったからこれに関しては本当に懐かしく感じた。

 刀はまだ見つかっていないが、もう正午なので俺はスズカのお父さんのところへ行くことにした。
今日は昨日よりずっと進歩した。ある程度魔法をコントロールできるようになった。
「ケント君は上達が早いね。もうスズカよりも上手いんじゃないか?」
スズカのお父さんにそう言われた。
「さすがにそれはないと思いますよ」
俺はそういいながらも、もしかしたら…、と思った。
「そうだ、今からスズカと戦ってみたらどうだ?」
俺はそう言われた。だが、俺が返事をする前に、スズカのお父さんが言った。
「今から呼んでくるから、ちょっと待っててね」
そういうと家のほうへ走って行った。 
 しばらくするとスズカを連れて帰ってきた。
「ルールは先に魔法話当てた方の勝ち。範囲はこの空き地の中。これでいいかな?」
俺とスズカは向かい合った。

「じゃあ、用意…はじめ!」
「火炎魔法、拡散!」
俺はできるだけ射程が長くなるように魔法を放った。
「火炎魔法、拡散!」
スズカは同じ魔法でこれを相殺した。その直後、俺が放った炎の中を稲妻が突き抜けてきた。俺はギリギリでそれをかわす。が、稲妻は進行方向を変え、空中へと逃げた俺のほうへと向かってくる。
「火炎魔法、火花!」
俺は急いで稲妻をはじいて着地する。雷電魔法は火炎魔法と違って操作性が高い。本物の雷のような速さは出ないが、小刻みに進行方向を変えることができる。雷と同じ速さだと反応することすらできないからそこはありがたい。俺は強く地面を蹴りスズカの目の前まで一気に近づいた。
「雷電魔法、走雷波!」
スズカが撃った雷電魔法に対して俺は魔法をぶつける。
「衝撃波!」
その反動で俺は左に一歩、その衝撃でスズカの雷電魔法は若干右にはじかれた。そして、俺はスズカに向かって全力で魔法を放つ。
「火炎魔法、爆燃砲!」



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