【BL】存在がファンタジーな俺、このたび魔法使いの使い魔として異世界に召喚されてしまいましたとさ(悲)

しーやん

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 目が覚めるととても寒かった。固い床の上に転がっているのはわかる。しかしあたりは真っ暗で何も見えない。夜目は効く方だけど、それにしたって本当に光源が無いとなると意味がない。

 手足は自由なので、俺はそろそろと指を動かしてみた。おたまもミトンも、エプロンどころか服すら着ていないことに気付く。身包み剥がされたうえに、真っ暗闇に閉じ込められている。

 なんて横暴で理不尽な扱いなんだ。俺は自分で言うのもなんだけど善良な一般人で、勤め先の洋食レストランでは料理の腕も接客も評判良かったし、同僚とも仲が良くて休みの日が合えば出掛けたりもする、料理が趣味の青年で、本当に普通の生活を送っていたのに。

 勝手に召喚して、勝手に魔物だなんだと決めつけて。

 まあ、俺、人間じゃなくて吸血鬼なんだけどさ。

 とは言っても人間に血を貰うだけで、無闇に傷付けたり殺しなんてしない。不老不死だと言われているけれど、別にそんなことはなく、ものすごくゆっくりと歳を取る。そして大怪我すれば命に関わる。人間より確かに頑丈で生命力が強く、身体能力も上だけど、それなりの生きにくさもある。

 それでも俺たち吸血鬼は、世界各地に小さなコミュニティを形成して正体がバレないよう助け合いながら、できるだけ人間の中に溶け込んで生きている。

 使い魔として召喚されたと聞いた時、まさかそんなことあるか?と思うのと同時に、魔の要素が原因で召喚の条件に引っかかったんだとも考えた。俺に魔力はないだろうけど、俺たち吸血鬼の祖といわれている存在には諸説ある。人間からすればファンタジーな存在には違いない。

 この世界の魔物というものが何かはわからないが、人間に害をなす存在だとしたら、ある意味で俺も魔物と言えるだろう。隔離されるのは仕方がない。

 そうやって頭ではわかっているし、取り乱したって無駄で、誰かが助けてくれるのを待つしかないのだが、俺は暗い所が苦手なのだ。

 目を開けていても何も見えない。試しに腕を伸ばして辺りを探ってみたけれど、触れた壁はゴツゴツしていて冷たい。指で壁を辿る。でも全体の広さを確認する前に腕を下ろした。

 暗い所と同じくらい、狭い所も苦手だからだ。今の状況で、もしここが棺くらいの広さしかないと理解してしまったら発狂しそうだ。

 幼少期のトラウマで昔から暗いのも狭いのもダメで、それは100年ほど生きてきた今も変わらない。寝る時はカーテンは閉め切らず、月明かりが入るようにしているし、極力エレベーターには乗らない。電車も最低限しか利用しない。

 自分では出来るだけ遠ざけていても、たまにどうしようもない時もある。今がまさにそれで、意識しだすと途端に息苦しさを感じ始めた。

 俺は出来るだけ小さくなって、ぎゅっと両目を閉じた。こういう時に寝てしまうと子どもの頃の夢を見てしまうのだが、起きていても大声で叫びたくなるだけだ。

 アレインは本当に助けてくれるのだろうか。

 ここから出られたとして、それからどうなるんだ?

 使い魔にされてしまったら?

 それって俺の意思はどうなる?

 よく知りもしない人間に使役されて生きることになるんだろうか。そんなのあまりにも非道じゃないか。

 だからと言って契約しない方を選んでも、一生ここに閉じ込められるのなら死んだ方がマシだ。やり残したことがないわけではないが、それはもとの世界でのことだ。知らない世界で、常識も倫理観も価値観もわからないこの世界で、ひとり生きていくのなんて無理だろう。日本でだって老けない俺たちは、周りから不審に思われないように数年で生活を変えるようにしているけど、知らない場所で一から始めるのは大変なのだ。

 最悪だ。俺が一体何したっていうんだ?

 俺という存在がどうであれ、精一杯できる限り善良であるように生きてきたのに。

 監禁された当初、俺は俺をこんな状況にしたアレインを恨んだ。頭の中で永遠と、あのイケメンロン毛野郎を罵った。

 その次は、容赦なく攻撃してきたゲイル殿下を呪った。あの傲慢そうなガキがギャーギャー言わなけりゃ、もう少しマシな自己紹介ができたかも、と。

 でもそれらに飽きると、ただひたすら目を瞑って耐えた。

 うつらうつらしながら、やっぱり夢を見ていた。

 物心ついた頃、俺の世界は暗くて狭かった。いつも飢えていた。

 俺がまだ人間だった頃の夢だ。
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