蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

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第九章 沙保里

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「研究生のみんな、ゲネプロ頑張ってくれ。
次世代センター候補を連れてきた、一緒に見せてもらう」

開演前の円陣に妹を連れて行って、このセリフ。
頭おかしいやろ。
研究生は、プレッシャーかかりまくりだろう。

ゲネプロは、公演前に行われるリハーサルだ。
公演同様に行われるが、観客がメンバーや家族、マスコミ関係者に限られる。

「昼のリハーサルがひどかった。
プレッシャーや責任感に押しつぶされて、動きが悪かったんだ。
沙保里ちゃん効果は、どうかな?」
春木プロデューサーは楽しそうだった。

席に着くと正規メンバーに囲まれる。

「真凛ちゃん、そこの可愛い娘は誰?」
水無瀬結が尋ねてきた。

「私の妹、博多のアイドルを受けるので見学に来たの」

「博多に悪いけど、うちが貰う」千鶴が決めつける。

「たぶん、みんなみたいに歌ったり、踊ったり出来ないよ」

「私がついてる。大丈夫」遥が言った。

ゲネプロが始まった。
1曲目からすごいパフォーマンスだ、後のことなど考えてない。
全力のパフォーマンスは、上手い下手を超越することがある。
見てるだけで、涙がでそうだ。

「お兄ちゃん、みんな綺麗だね」

「あそこに入りたいか?」

「うん、入りたい」

「ほら、みんなが一瞬で変わった。沙保里ちゃんが変えたんだ」
春木プロデューサーは自信満々だ。
妹を利用しやがって、そう思うが見事だった。

2時間の公演は、無事に終わった。
楽屋を訪ねると、研究生のメンバーはシャワーの後の様に汗をかいている。
正規メンバーの「お疲れ様」「良かったよ」「よく頑張った」明るい声が響く。
杉村莉緒が、俺に向かってやってきた。

「真凛さん、見てくれましたか?」

「リハーサルやレッスンから見てたから、公演中に涙が出た」

「よかった。ところでその娘は?」

「妹の沙保里です。博多のアイドルグループを受けたいっていうので、連れてきたの」

「プロデューサーが、次世代センター候補だって言ってた」

「研究生にハッパをかける為に使われた」

「確かにみんな一気に開き直った。負けないぞってエネルギーが出た」

「ゴメンね、騒がせて」

「明日の本公演、妹さんに見てもらいたいです」

「是非、観たいです」

もう沙保里は、夢中になっていた。

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