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第十章 成長

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「今日は、弾けるかもしれない。気がつけば、だけど」

2日目に両親と弟の拓海が、沙織には黙って観に来ていた。
楽屋に行こうと誘ったが、緊張させたくないと断られた。

「昨日は、どうだったの?」母が心配そうだ。

「みんなは良かったと言ってる、本人は全然ダメって言ってた」

関係者席に、みんなで並んで座った。
照明が落ちてovertureが鳴る、観客は総立ちでコールが始まった。

幕が開くと、メンバーがポジションについていた。
一瞬静まったが、1曲目のイントロで拍手とコールの嵐に包まれる。
そのまま4曲連続で、踊り続けた。

「今日は大丈夫」遥が解説してくれる。

自己紹介が終わって、ユニットがスタートした。
4人組が出て来て、右サイドに沙織がいた。
ツインセンター曲で、サイドの二人は添え物扱いだ。

この曲の間奏も、ソロダンスがあった。
沙織はチアのフロントキックで、ほぼ垂直になるまで脚を上げる。
一気に下ろしてから、ポーズを決めた。

両親も弟も立ち上がって、拍手をしていた。
母はハンカチで眼を抑えていた。

「決まったでしょ」遥がニヤリとした、出来て当然という顔だった。

美雪は、3人組だった。
バラードっぽい曲を3人で歌い上げる。声量は足りないが丁寧に歌っていた。

ユニットが全て終わって、着替時間のMCになった。
また沙織が呼ばれていた。

「沙織ちゃん、今日もフロントキックが決まってましたね」

「大好きなお兄ちゃんが見に来ているので、張り切っちゃいました」

「真凛ちゃんが、いましたね」

「真凛ちゃんじゃなくて、その下の兄がいました」
インカムで指示が来たのだろう、すぐ他のメンバーに話しが振られた。

「あそこから、ここが見えるのかよ」
拓海は驚いていた。

「ライブハウスに変装した行った時もバレてた」
俺が答えた。

後半曲が始まると、沙織の動きが変わった。
一番端で踊ってるが、サイドステップが大きくてまるで遥が踊ってるようだ。

「師匠に似るんだね」

「このパートはポジションが外側だから、リミッター外していいと言ってある」

「あんなに踊れるなんて驚いた」

「私も驚いてる、練習の2倍いい。本番に強いのは真凛ちゃん譲りだね」

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