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第十一章 激震

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「やっぱり沙織はライバルだった。
彼女がセンターに立つ時には、私もセンターにいなきゃね。
何処かで一緒に、ライブに出たいなあ」

そう言って、加藤みさきはメンバーと一緒に帰って行った。

楽屋裏の控え室で待っていると、沙織が出てきた。
母が沙織の部屋に泊まると言い出して、家まで連れて帰ることになった。

「きれいなお部屋、ここで生活してるのね」
俺たちのマンションを、母が物色していた。

「明日の朝は、私に作らせて」
手料理を、沙織や俺に食べさせたいらしい。

「TVで言ってるように、ちゃんと作ってるのね」
今朝から用意していた夕食を食べながら、母が言った。

「ああ、ほぼ毎日作ってるよ。
沙織にお弁当を持たせないと、いけないしね」

「蒼海がいるから、安心してる」

翌朝、母がキッチンに立っている。
母が作る料理を食べるのは、2年半ぶりだ。

「お母さんのだし巻き卵が、大好き」

「お店のと違って、味が優しい」聖苑が驚いてる。
だし巻き卵と、豆腐とワカメのお味噌汁、納豆と十六穀米の朝食だった。
いつもと変わらない味、ホッとした。
タクシーを呼んで、母のホテル経由で沙織はスタジアムに出発した。

……

午後になって聖苑と一緒に、東京駅に陽彩と沙綾の二人を迎えに行った。
山内女史の運転で、スタジアムに向かう。

「沙織さんとお会いするのが、楽しみです」

関係者入り口から中に入ると、春木プロデューサーが呼んでいた。

「この娘たちは、誰だ」

「スカウト出来ませんよ、一ノ瀬のお嬢様ですから」

「聖苑社長の妹なのか?」

「そうです」

「道理で気品があると思った。寧々の後継者にしたいくらいだ」

「一ノ瀬社長に怒られます」

「お前の周りは美人が集まって来るな。みんな、楽しんで帰ってくれ」
言うだけ言って、立ち去って行った。
月奈と沙織が出て来て陽彩と沙綾と会って、3人一緒に自撮りしている。

「この3人でデビューしたら、売れるぞ」
田中氏が言ってる。

「あの二人、誰?」白河寧々が聞いてきた。

「聖苑社長の妹たちだよ」

「可愛い、スカウトしたい」

「春木プロデューサーも言ってた」

「今日は、楽しみにしていいと思うよ」
言い方に含みがあった。
沙織に見せ場があるんだと察知出来た。

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