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第十三章 変革

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「相談があるんです、話を聞いて貰いたいんですけど」

俺は、春木プロデューサーに連絡を取っていた。
メールで連絡があり、場所と時間が指定されている。
大学から戻って、着替える。
聖苑にメイクを直してもらって、綺麗に仕上がった。

「一緒に行かないの?」

「二人の方がいいでしょう。気を使わせたくない」

今日は一人なので、電車で行った。
ブルーグレイの英国風ストライプワンピースにショートコート。
メガネをかけていたので目立たないと思ってたが、周りに人がいない。

新橋の駅を出て、ビルの40階まで上がる。
店に入り、クロークでコートを預けて個室に案内された。

「おっ、早いな」

「電車で来たので、早めに着きました」

「お前が電車に乗ってたら、ビックリするぞ」
春木プロデューサーが、やってきた。

「遠巻きに見られてました」

話をしていると、料理が運ばれてきた。
和食のコース料理だ。
お造りに発泡した辛口の日本酒の組み合わせが、初めての味だった。

「泡が立ってる辛口って、あったんだ。甘いのしか知らなかった」

「美味いだろう。飲み過ぎると酔っぱらうけどな」

美味しいものを食べると、無口になる。

「どうだ、モデルを辞めたくなったか?」

「どうして、判るんですか?」

「なりたくてモデルになったわけじゃないだろ。
最近の真凛を見てると、将来が不安なのかと思ってた」

「贅沢なことを言ってると思いますが、いつまで続けられるか不安なんです。
普通の人がやってることを、全く経験してませんし」

「みんなたいしたことをやってないから、心配することはない。
それより、迷いが良くないな」

「どうすれば、いいですか?」

「俺が言えることは、真凛はまだまだ伸びしろがある。
有名だし、モデルの評価も高い。
だが、みんなが憧れるスーパーモデルじゃない。
もっとTVやマスコミに出て、有名になれ。
それがsolemnityの為でもあり、お前のためだ」

「出来るでしょうか?」

「ガーデンズの田中は、有能な男だ。
お前がその気になれば、いくらでも仕事は取ってくる」

「今日は、ありがとうございます」

「気にするな。沙織をうちに預けてくれたお礼だ」

何か遠くだが、明かりが見えた気になった。

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