私はあなたの婚約者ではないんです!

凪ルナ

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カレン嬢と側妃の狙い

第十八話 アレキシスの涙とカレン嬢

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 アメリアは悲しかった。

 「…アレキシス殿下?」

 「うん。あの時、たしかに、意思を塗り潰されていたような感覚がある。だから、僕は…、私はきっと洗脳されていた、と思う」

 苦々しく歪められた顔で、重々しく告げられたその言葉に、言葉が、出てこない。

 どうして?自分の息子なのに、何でそんなことができるの?その言葉しか出てこない。

 「そんな…!、何でっ…何で、側妃様はそんなことが出来るの…!?」

 思わず、ギュッと自分の手を握り、唇を噛み締める。涙が出てきそうだ。でも、私に泣く資格なんてない。何も、何も知らなかった私には、そんな資格ない。辛いのは、アレキシス殿下だ。
 何も出来ない自分に対して無力感を覚える。

 「何でアメリアが泣くの?」

 くしゃりと顔を歪めて、見てるこっちが痛いと思うような表情を浮かべてるにも関わらず、涙を流さず逆に私の心配をしているアレキシス殿下を見るともうダメだった。涙が零れた。

 「泣けないアレク様の代わりに泣いてるんです!」

 一瞬目を見張ったアレキシス殿下ーーアレク様は子供の頃のような表情で小さく微笑んだ。

 「全くリアは…、本当…」

 そう何か小さく呟いたアレク様が一筋涙を流し、こちらに手を伸ばしそうになったところで、エディック殿下が声を上げた。

 「つまり、アレクを洗脳していたのは、側妃、ということか…。…まったく、してくれるな。それで、実の息子を洗脳して、計画が成功するとでも思ったのか?反吐が出る」

 納得したように呟いて確認したエディック殿下は、苦虫を噛み潰したように、顔を歪めてそう吐き捨てた。

 「カレン嬢は洗脳の強化をしていたということだな…。アレクの洗脳が緩んできたら、その都度、強化をしていたのだろう。カレン嬢、もう隠していることはないな?」

 「ええ、もうないわ」

 「本当だな?」

 「ええ、本当よ!」

 チラリと、女神を確認したエディック殿下は、小さく息をついて、女神の方を向いた。

 「女神。カレン嬢について裁定をし、刑罰を科してくれ」

 「分かったわ」

 ふわりと手を前に自然と突き出した彼女は、ゆるりとした動作で手を下ろした。

 その瞬間、カレン嬢の手から棘のついた蔦のような黒い模様が、巻きついていくように浮かんでいく。その模様はカレン嬢の顔にも浮かび、更には目に見える範囲全てに現れた。

 カレン嬢が自身の身に起きていることを認識していくと同時に、顔が恐怖と不安に歪み、絶望に染まっていく。

 そんなカレン嬢は他所に女神エレーナが彼女の罪と刑罰を述べていく。

 「まあ、こんな感じかしら。カレン・ナルメア。禁止されている精神干渉を行ったことにより、その身に宿る魔力の封印、更には殺人未遂及びアメリアへの名誉毀損と危害を加えようとしたことにより、私の監視の目と幽閉、はそっちでやってね、後は一生表に出れない身体、っていうのが妥当かしらね」


 「あ、あ"あ"あ"あ"あ"あああぁぁぁ」

 今まで、飄々として表情を崩さなかったカレン嬢が初めて負の表情を見せた瞬間だった。

 そして、舞台は女神の審判の間から、再び皇宮のホールへと移る。


 ######

sideカレン


 どうして!?
 どうして私の思い通りにならないの!?
 私はヒロインなのよ!?
 何でアメリアの、悪役令嬢のことばかり庇うのよ!

 アメリアがアレクの婚約者じゃなくて、エディックの婚約者で、アレクがアメリアのことが好きだなんて、そんなのゲームの通りじゃないじゃない!
 アメリアね!あの女が、シナリオを変えたのね!

 側妃様は私のことを認めてくれている!
 それなのに何故?
 他の邪魔な女は消してやった。

 全部、全部、上手くいっていたのに…。

 何で…。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇
side???

 皇宮のホール。女神の審判に入る前。

 カレン・ナルメアの意識はそこで途絶えている。

 可哀想に。この娘も結局はエイダという女の駒だったということだ。




────────────

作者です。今回は短め。
そして、いつもの如く遅くなってすみません。


カレン嬢への刑罰を考えて、どれくらいが妥当なのか考えていました。

アレキシス殿下、ライフォード殿下、と来たら次はエディック殿下のアメリアへの思いでも語ってもらいますかね…。


作者、アレキシス殿下には思い入れあるんで、結構アレキシス殿下が出しゃばってきてる。
でも、一応、アメリアはエディックとくっつくんで。そう考えて最初から書いてるんで。
もっとエディック頑張れよ(他人事)←
というわけで、どうなるか分からんくなってきた。

次の次くらいから側妃へのざまぁに入れるかな…

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