Love Me Detar

マシュー

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第14話

ヒューマノイドAI 【アイ】

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一方、マーブル博士とジョン達は豚小屋の前に到着していた。

「ほほ~、凄いですねぇ!本当に兄さんの助手の方が建てられたんですかぁ?
とても立派な小屋ですよこれは!」

「そうじゃろ~?アイちゃんはDIYが得意でな。いつも頼んだら作ってくれるんじゃよ。」

「へぇ~!これはプロ顔負けですねぇ!ウチの飼育小屋もそろそろ古くなってきたのでその助手のアイさんに建て替えの依頼をしたいくらいですよ。」

「あっはっはっは!それはアイちゃんに直接交渉してみんといかんな!
きっと請け負ってくれるじゃろう。
あっ!そうじゃ!豚を見せる前にジョンに大事な話を聞いとってもらいたいんじゃが。」

「大事な話ですか?何でしょうか?」

「あぁ、実はのぉ・・・。」

《マーブル博士は、本当はアイが飼育しているドングリ豚は、迷い豚の親子を保護していたという事。
それがあの地震の日の土砂崩れで逃げた豚なのではないかという事と、その豚がドングリ豚だと知りエサのドングリを沢山集める為にドングリ豚募金をする事で豚のエサが集まると同時に緑化活動にも繋がり地球環境問題改善になるというアイデアを考えた事。
そしてアイはそれを実行し、その豚を自分で育てたいと思っている事。

さらに加えて、この研究所で行なっているプロジェクトにより生まれたデター(ゴキブリ)人間【メデタ】の存在を話した上で、彼が考えたデター(ゴキブリ)の特性を活かした電子マネー【メデルマネー】を開発する事で人類の生活を助けたいと思っているという事。
そしてドングリ豚募金と合わせて行う事で地球と人類を救おうとしているという事を話した。》



「なるほど、そうだったんですね。
なんだか壮大な話ですね!なかなか面白いと思います。私も何か力になりますよ。」

「ジョン!本当か!?」

「もちろんですよ。それよりもほっとしました。大切な豚がここに居る事が分かって。兄さん大切な話をしてくれてありがとうございます。」

「いやいや、ジョンなら豚を見たらすぐに分かるじゃろうし、隠し通せる見込みは無いと思ったんじゃ。すまん!」

「そんな!謝らないでくださいよ。正直に話してくれて良かったです。」

ホッとひと安心したマーブル博士は小屋の戸を開けた。
そして小屋の中に入ると床には藁が敷き詰められており、奥の隅の方で母親豚と3匹の子豚達が肌を寄せ合いながら眠っていた。

そこへジョンがゆっくりと近付いて行くと母親豚はジョンに気付き顔を見上げた。

「間違いないですね、ウチの子だ。この耳に付いているタグ。ピンク色とこのマークがその証拠です。」
ジョンは母親豚の頭を撫でながら言った。

母親豚の耳には確かにピンク色のタグが付いており三角形にPPFというマークが書かれている。

「やはりそうじゃったか。
という事はその3匹の子供は逃げた後に出産したという事じゃな。」

「ええ、そうなりますね。
それと先程言っていた『ドングリ豚募金』というアイさんのアイデアですが。

実は、私が所有している【ピギージョン・バンク】通称【PJ銀行】で『ドングリ募金』というドングリを集めて苗木を育てて植樹をする緑化活動を行なっているんですが・・・。」


とその時
「おい!君たちは誰だね!」
「ちょっと待ちなさい!」
小屋の外の見張りをしているルイスとネルソンの声がした。
アイは小屋の入り口に立って遮る2人に対して両手を間に入れて難なくこじ開けた。

長身のルイスと重身のネルソンは引き剥がされるように反対方向に倒されてしまった。

入り口から顔を見せたのはアイとメデタだった。

「アイ、派手にやっちゃったね。」
後ろから見ていたメデタが倒れた2人を見ながら言った。

「だって、私の小屋の入り口を塞いで中に入るのを邪魔するんだもの。」

「ジョン、彼女がアイちゃんとメデタくんじゃよ。」

「そうでしたか。
ルイス君!ネルソン君!大丈夫ですかぁ?」
ジョンは入り口の外に出て倒れた2人に声をかけた。

「博士、来られてたんですね。
入り口に見慣れない車があったので。誰かと思っていたんですが、ご来客でしたか。」

「おお、アイちゃん!それにメデタも無事じゃったんじゃな。」

「はい博士、お陰様で。それよりこの方々は誰ですか?」

「そうじゃな。まずは紹介しようかいのぉ。」

「博士?今のはダジャレですね?」
お笑いを勉強中のメデタはすぐに反応した。

「いやいや、今のはたまたまじゃよ。
じゃが、確かに上手い事ダジャレになったのぉ。」

「なるほど!たまたま生まれるダジャレもあるという事ですねぇ。勉強になります!」
メデタは白衣のポケットからメモ帳とペンを取り出しメモを取っている。

「今ので一体何が学べたのかしら?」
アイは呆れた表情をしている。

「あははは。なんだか楽しいですね。」ジョンは軽く握った手で口を隠すようにして上品に笑った。

「あっはっはっは!そうじゃろ?
こいつはの、わしの実の弟、ジョンじゃ。」

「ただ今ご紹介に上がりました私はマーブル博士の弟のジョンと申します。どうぞよろしくお願いしますね。
それから外の2人は私のボディガードでして。ルイスとネルソンです。先程は失礼致しました。
しかし、この豚の親子もこんなに楽しくて優しくい方に拾われて良かった。」

「えっ?マーブル博士の弟さんでしたか!どうも初めまして。
私は、マーブル博士の助手をさせて頂いていますヒューマノイドAIのアイと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
アイは自己紹介をした後、両手を前に重ねてお辞儀をした。

「こちらこそ兄がお世話になっております。あなたが助手のアイさんですか。兄から話は聞いていますよ。マイペースな兄ですか何卒宜しくお願いしますね。」
ジョンも深くお辞儀をした。

「そらから彼は私の弟のメデタです。」
アイはメデタの背中に手を添えて紹介した。

「アイさんの弟さんですか。メデタさんの話も伺っています、どうぞ宜しくお願いします。」

「ねぇ、アイ?ヒューマノイドAIって何のこと?」

「それは後で話すわ。さぁジョンさんにご挨拶して。」

「あ、どうもメデタです。宜しくお願いします。」
メデタはアイとジョンの真似をして深くお辞儀をしたが、勢いが良くお辞儀をしたために角度が0度になり前屈状態になっている。

「メデタ!お辞儀が深すぎ!」

「えっ?マジで?」

「はははは!面白い姉弟ですねぇ。」

「え、そうですかぁ。あははは。」
メデタは前屈状態のまま頭をぽりぽり掻いている。

「もう、本当に恥ずかしい限りです。
ところで、さきほどジョンさんが『その子達も拾われて良かった』と仰っていましたが、もしかしてこの豚の親子の飼い主さんですか?」
アイは気を取り直してジョンに質問をした。

「ええ、そうですねぇ。半分は正解です。」

「えっ?半分は正解ってどういうことですか?」

「実は私、そこそこ名の知れた養豚業を営んでいましてね。
半年前の地震があった日に運送中の豚が土砂崩れに合った後、逃げてしまったんです。豚達は既に買い手が決まっていて大変困っていたところでした。そしたら兄の研究所が近くにある事を思い出したのです。
そして今日ここへ来たのは情報を得るためでした。
ですが今、その逃げた豚を見つかりました。
そう、その豚が私の探していた豚です。アイさん、大切に保護して頂きありがとうございます。」
ジョンは深くお辞儀をした。

「ですが、私が返して貰うのは母親豚だけです。その3匹の子豚達はアイさん、あなたに所有権があります。」

「えっ!?ジョンさん、良いんですか?」アイは嬉しそうな顔で驚いた。

「ええ、勿論ですよ。私の管理下で生まれたわけではないですからね。私に所有権はありません。
ただ、この子供たちはまだ乳飲み子です。乳離れをするまでは母親豚と一緒に暮らした方が良いでしょう。」

「ジョンさん!ありがとうございます!」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方ですよアイさん。そうそう、それよりも、メデタさんでしたか?」

「はい?何ですか?」

「あなたにそっくりな方を知っているのですが他人の空似でしょうか?私とは初対面ですよね?」

「はい、僕は初めてお会いしますけど。誰かに似てますか?」

「ええ、とてもそっくりなんですよ。
私のPJ銀行に勤めていたとても成績優秀なエリート行員だったのですが、数年前に父親の跡を継ぐという事で惜しまれつつも退職してしまいまして。」

「へぇ~。そうなんですかぁ。」

「その後、連絡は途絶えていたのですが1年前に彼が亡くなったと風の便りで聞き、私はとてもショックで悲んでいました。丁度その頃に地震が起こりこの豚たちが逃げてしまったのでダブルショックでした。」

「ジョンさん!その人は間違いなく私の兄です。」

「えっ?アイさんお兄さんもいらしたんですか?」

「はい、兄の名前は【メデル】です。違いますか?」

「そうです!その彼の名前はメデルさんです!ええ?!それじゃぁ父親の跡を継ぐというのはこの研究所で?という事は父親はマーブル兄さん?」

「いやいやいや!安心せいジョン!メデル君はわしの子じゃぁないよ!
かつてわしの右腕に【メデオ】という植物博士がおった。その息子がメデルくんじゃよ。」

「そうだったんですか?彼の家族の話は聞いたことはなかったのですが、それがまさかマーブル兄さんの研究所だったとは!」

「わしも驚いたよ!まさかメデルくんがジョンのPJ銀行員だったとは。わしもメデルくんがここに来た時、病床だった父親のメデオくんの跡を継ぐためという事以外、詳しい話は聞いておらんかったからのぉ。」

「ねぇねぇ、アイ?だからヒューマノイドAIって何なの?」

「だから後で説明してあげるから!」
アイはメデタの肩を叩いた。

「いや、アイちゃん。わしから説明しよう。メデタくんにもアイちゃんの過去を知っておいてもらった方が良いじゃろう。」
マーブル博士は神妙な面持ちで語り始めた。
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