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第1話:勇者参上!
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『あれ、俺…死んだんじゃないのか?』
宇宙機怪獣によって校舎が潰されたとき、落ちてくる校舎の破片から良美を護って作は致命傷を受けてしまった。あの状態から自分が助かるとは、作は思っていなかった。
『うーん、Web小説じゃあるまいし、まさか女神が現れて、異世界に転生できるとか言い出す…とかないよな~』
作はきょろきょろと辺りを見回すが、白い壁に囲まれた十畳ほどの部屋で、そこには作以外誰もいなかった。白い壁がぼんやりと光り周囲は見えている。見回しても、部屋には出入り口らしき物は見当たらなかった。
いや、部屋の一面だけガラス張りの壁であったが、そこに見えるのは真っ暗な空間であった。
『出入り口も無し。唯一外に通じてそうなのがこの窓だけど…』
作は手でガラスの壁を触ったり、軽く叩いてみたりしたが何の反応も無かった。
『おーい、誰かいませんか』
思い切ってガラスの壁をドンドンんと叩いて叫んだが、やはり返事は返ってこなかった。
『困ったな。俺は死んじゃったのか生きているのかぐらい知りたいのだが…。誰か状況を説明できる奴、出てこいよ』
反応が全く無いため、作はふてくされて部屋の中央に胡座をかいて座り込んだ。
『なおくん…』
そうしてどれだけの時間が過ぎただろう、作は自分を呼ぶ声に気付いた。そしてその声が良美の声であることも理解した。
『よっちゃん! 無事だったのか』
良美の声がどこから聞こえるのか分からず、作はきょろきょろとしていた。
そうしていると、ガラスの窓の向こう側が明るくなり、そこに巨大な良美の顔が現れた。
『うぁっ、巨大よっちゃんが現れた!』
良美の顔を見て、作は驚いて後ろにひっくり返った。
『なおくん、そのリアクションは酷いよ~』
良美は作のリアクションに不服なのか、頬を膨らませていた。
『突然巨大な顔が現れたらびっくりするだろ。でも、よっちゃんは無事だったんだな』
体勢を立て直し再び座った作は、良美の無事な様子を感じて安堵のため息をついた。
『うん。私はなおくんが庇ってくれたおかげで傷一つ無いよ。って頭の後ろにたんこぶあるけどね』
良美は「へへっ」と笑いながら、後頭部をさする。
『とにかく無事で良かった。…それで、一体俺はどうなっているんだ? よっちゃん、俺の今の状態を教えてくれないか?』
作がそう言うと、
『なおくんの今の状態って…見せちゃった方がわかりやすいかな~。うーん、分かった見せちゃうよ』
良美はしばし悩んだそぶりを見せたあと、彼女は姿を消した。そして部屋が移動する感覚とともにガラスの壁の向こうに衝撃的な光景が映し出された。
◇
良美はスマートフォンの向きを変えて、液晶画面を作の死体に向けた。これでスマートフォンの中に居る作には、彼の体が見えるはずだった。
『ちょっ、あれは俺じゃないか。えっ? でも俺は今ここにいるし…。一体全体どうなってるんだよ』
自分の血まみれの死体を見せられ、スマートフォンから作の混乱した声がもれる。
「なおくんは、死んじゃったんだよ。でも死んだのは体だけで、魂はこのスマートフォンの中で閉じ込めたんだ」
『魂だけって…。どうして、誰がそんな事をしたんだよ!』
「なおくん、それはあたしだよ~」
良美は再びスマートフォンに向き直り、液晶に表示される作ににっこりと微笑んだ。
『マジかよ…。よっちゃんが俺をここに閉じ込めたのかよ。一体どうやってそんな事ができたんだよ?』
「んーんとね、ほら私って魔王になっていた夢みてたよね。実はあの夢って私の前世の出来事だったんだよ。それでね、さっき頭を打った時にその記憶が戻ったんだ~。それでね、私はいま魔王の知識と魔法が使えるんだよ」
『あの夢が…良美の前世が魔王って。………この状況じゃ信じるしかないのか。じゃあその魔法で俺は生き返ることはできるのか?』
作はとんでもない状況に叫び出したかったが、辛うじてそれを抑えて良美のカミングアウトを受け入れた。
「なおくん、私は魔王だよ。魔王が死者の蘇生ってできると思う?」
良美の邪悪さを感じる無邪気な笑みを見て、スマフォの中の作は諦めたような顔で項垂れてしまった。
『つまり無理なのか。…それで俺はこれからどうなるんだ? まさか俺は一生このままなのか?』
「うーん、当分はスマフォの中かな~。なおくんのボディと魂のアストラルリンクは完全に切れちゃったからね。今だと高レベルの聖職者じゃないと体に魂を戻せないんだよ。でも、心配しないでね。研究していつかきっと、私がなおくんを生き返らせてあげるからね」
そう言って凹凸の無い胸をどんと叩いたが、小学生のような良美が胸を叩いても全く安心感はまったくなかった。
『よっちゃんを信頼して良いのか…不安だな』
「ひどーーい。だったらなおくんは一生このままにしちゃうよ。あっ、その方がなおくんを独り占めできて良いかも…」
『うぁーーっ、よっちゃんがヤンデレた』
良美の暗い笑みをみて、作は頭を抱えた。
「嘘、嘘。冗談だよ、なおくん」
良美は、慌てて暗い笑みを消して作にそう答えた。
『(本気で言っていたように思えたんだが…)俺はよっちゃんを信頼しているよ』
ともかく、スマートフォンに閉じ込められた作が頼れるのは、良美だけである。作は良美に全てを任せることにしたのだった。
宇宙機怪獣によって校舎が潰されたとき、落ちてくる校舎の破片から良美を護って作は致命傷を受けてしまった。あの状態から自分が助かるとは、作は思っていなかった。
『うーん、Web小説じゃあるまいし、まさか女神が現れて、異世界に転生できるとか言い出す…とかないよな~』
作はきょろきょろと辺りを見回すが、白い壁に囲まれた十畳ほどの部屋で、そこには作以外誰もいなかった。白い壁がぼんやりと光り周囲は見えている。見回しても、部屋には出入り口らしき物は見当たらなかった。
いや、部屋の一面だけガラス張りの壁であったが、そこに見えるのは真っ暗な空間であった。
『出入り口も無し。唯一外に通じてそうなのがこの窓だけど…』
作は手でガラスの壁を触ったり、軽く叩いてみたりしたが何の反応も無かった。
『おーい、誰かいませんか』
思い切ってガラスの壁をドンドンんと叩いて叫んだが、やはり返事は返ってこなかった。
『困ったな。俺は死んじゃったのか生きているのかぐらい知りたいのだが…。誰か状況を説明できる奴、出てこいよ』
反応が全く無いため、作はふてくされて部屋の中央に胡座をかいて座り込んだ。
『なおくん…』
そうしてどれだけの時間が過ぎただろう、作は自分を呼ぶ声に気付いた。そしてその声が良美の声であることも理解した。
『よっちゃん! 無事だったのか』
良美の声がどこから聞こえるのか分からず、作はきょろきょろとしていた。
そうしていると、ガラスの窓の向こう側が明るくなり、そこに巨大な良美の顔が現れた。
『うぁっ、巨大よっちゃんが現れた!』
良美の顔を見て、作は驚いて後ろにひっくり返った。
『なおくん、そのリアクションは酷いよ~』
良美は作のリアクションに不服なのか、頬を膨らませていた。
『突然巨大な顔が現れたらびっくりするだろ。でも、よっちゃんは無事だったんだな』
体勢を立て直し再び座った作は、良美の無事な様子を感じて安堵のため息をついた。
『うん。私はなおくんが庇ってくれたおかげで傷一つ無いよ。って頭の後ろにたんこぶあるけどね』
良美は「へへっ」と笑いながら、後頭部をさする。
『とにかく無事で良かった。…それで、一体俺はどうなっているんだ? よっちゃん、俺の今の状態を教えてくれないか?』
作がそう言うと、
『なおくんの今の状態って…見せちゃった方がわかりやすいかな~。うーん、分かった見せちゃうよ』
良美はしばし悩んだそぶりを見せたあと、彼女は姿を消した。そして部屋が移動する感覚とともにガラスの壁の向こうに衝撃的な光景が映し出された。
◇
良美はスマートフォンの向きを変えて、液晶画面を作の死体に向けた。これでスマートフォンの中に居る作には、彼の体が見えるはずだった。
『ちょっ、あれは俺じゃないか。えっ? でも俺は今ここにいるし…。一体全体どうなってるんだよ』
自分の血まみれの死体を見せられ、スマートフォンから作の混乱した声がもれる。
「なおくんは、死んじゃったんだよ。でも死んだのは体だけで、魂はこのスマートフォンの中で閉じ込めたんだ」
『魂だけって…。どうして、誰がそんな事をしたんだよ!』
「なおくん、それはあたしだよ~」
良美は再びスマートフォンに向き直り、液晶に表示される作ににっこりと微笑んだ。
『マジかよ…。よっちゃんが俺をここに閉じ込めたのかよ。一体どうやってそんな事ができたんだよ?』
「んーんとね、ほら私って魔王になっていた夢みてたよね。実はあの夢って私の前世の出来事だったんだよ。それでね、さっき頭を打った時にその記憶が戻ったんだ~。それでね、私はいま魔王の知識と魔法が使えるんだよ」
『あの夢が…良美の前世が魔王って。………この状況じゃ信じるしかないのか。じゃあその魔法で俺は生き返ることはできるのか?』
作はとんでもない状況に叫び出したかったが、辛うじてそれを抑えて良美のカミングアウトを受け入れた。
「なおくん、私は魔王だよ。魔王が死者の蘇生ってできると思う?」
良美の邪悪さを感じる無邪気な笑みを見て、スマフォの中の作は諦めたような顔で項垂れてしまった。
『つまり無理なのか。…それで俺はこれからどうなるんだ? まさか俺は一生このままなのか?』
「うーん、当分はスマフォの中かな~。なおくんのボディと魂のアストラルリンクは完全に切れちゃったからね。今だと高レベルの聖職者じゃないと体に魂を戻せないんだよ。でも、心配しないでね。研究していつかきっと、私がなおくんを生き返らせてあげるからね」
そう言って凹凸の無い胸をどんと叩いたが、小学生のような良美が胸を叩いても全く安心感はまったくなかった。
『よっちゃんを信頼して良いのか…不安だな』
「ひどーーい。だったらなおくんは一生このままにしちゃうよ。あっ、その方がなおくんを独り占めできて良いかも…」
『うぁーーっ、よっちゃんがヤンデレた』
良美の暗い笑みをみて、作は頭を抱えた。
「嘘、嘘。冗談だよ、なおくん」
良美は、慌てて暗い笑みを消して作にそう答えた。
『(本気で言っていたように思えたんだが…)俺はよっちゃんを信頼しているよ』
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