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第4話:黒い影
Aパート(3)
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(ピッ、自爆機能を使用しますか?)
現在の危機的状況からどうやって抜け出すか、悩んでいるレイフにそのようなメッセージが届く。
『(はぁ、自爆機能じゃと? 馬鹿な事を言うな、自爆してはレイチェルが助からぬだろうが)』
ヴィクターの研究してたアルテローゼのシステムは、軍の最新技術であり機密情報の塊である。その秘密が外部に漏れないように、連邦軍は自爆機能の設置をヴィクターに命じたのだ。
もちろんヴィクターはそんな物を実装するつもりは無かったのだが、システム設計上は搭載されていることになっていた。レイフはその設計図を元に忠実にアルテローゼの機体を再構築したため、自爆機能が搭載されてしまったのだ。
『(ふむ、自爆機能とは動力である超伝導バッテリーでキャパシターを過充電してからショートさせて爆発させるシステムか。もちろん自爆前にコクピットは機外に射出するのだろうが、現在は胴体を捕まれたままじゃ。これではレイチェルが脱出できないではないか。しかし、超伝導バッテリーとキャパシターによる爆発は何かに使えそうじゃな)』
他に手が思い浮かばなかったレイフは、自爆システムについて原理と構造を調べていく。これは、自爆するシステムを何かに流用できないかと考えたからである。
「レイフ、私は一体どうすれば良いのですか?」
『シートに座っておれ。いま脱出の手を考えておるのじゃ』
レイチェルは、コクピットで潰される恐怖におびえていた。本当は優しい言葉でも掛けてやりたいところだったが、自爆システムを解析しているレイフにはそんな余裕はなかった。
『(背面のランドセルにも超伝導バッテリーとキャパシターが付いておる。これを爆発させることで、一時的に手の拘束を排除できるやもしれぬ。そして本命の本体の方は自爆ではなく巨人への攻撃として使えれば…)』
電子頭脳として思考するレイフは、その可能性を計算する。科学技術には疎いレイフだが、サブシステムのサポートにより一つの案がまとまった。その成功確率は50%程度と見積もられたが、実現は不可能とサブシステムは警告した。
『(儂の魔法があれば、この案は実現可能じゃ。帝国筆頭魔道士の力の見せ所じゃな)』
システムが実現不可能と判断した部分は、レイフの魔法で100%補えると彼は考えた。成功確率は50%だが、現状のままでは100%レイチェルは助からない。
『よし、方針は決まったのじゃ』
即断即決がレイフの持ち味であり、今までそれで切り抜けてきたのだ。
「どうしますの?」
何とかシートに着席したレイチェルは不安そうにモニターを見つめる。
『レイチェルよ儂の言う通りに、コンソールを操作してほしいのじゃ』
「誰が嫁なのですか。…それで何とかなるのですか?」
『ああ、レイチェルは助かるぞ』
「分かりましたわ。では何時から始めますの?」
ミシリとコクピットがさらに歪み、レイチェルの顔が不安に歪む。
『今すぐ始めるのじゃ』
レイフは、モニターに背面ランドセルの自爆と、アルテローゼ本体の自爆の可否を決める選択肢を表示した。
本当であればレイチェルに知らせずにこの処理は行いたかったが、人命に関わる自爆という行為は、レイフだけでは実行不可能である。必ずレイチェルの許可が必要なのだ。
「自爆って、それでは…」
『大丈夫じゃ、コクピットは自爆前に射出されるのじゃ』
レイフは不安そうなレイチェルに冷静に説明する。
「…レイフは、どうなるのですか?」
『(ちっ、気づきおったか)もちろん、制御コアはコクピットと一緒に射出されるぞ。大丈夫じゃ、儂がレイチェルを一人にするわけがなかろう』
「そうですのね、分かりましたわ」
『もう時間が無い。急ぐのじゃ』
「ええ」
レイチェルが、スティックを操作してアルテローゼの自爆行動を承認する。
『(まあ、制御コアだけが逃げても、ストレージが無くなれば、儂と言う自我は消えてしまうのだろうな)では、開始するぞ』
レイフの合図でまず背面のランドセルのキャパシターが爆発する。その爆発によって、胴体を拘束してた巨人の指が吹き飛びアルテローゼは巨人の手の拘束から解放された。
「きゃあ」
『(第一段階は成功じゃな)』
爆発の衝撃にレイチェルが悲鳴を上げるが、レイフはそれに構っている時間は無かった。
レイフは、バッテリーからキャパシターに電力を充電し、爆発寸前の状態に持っていった。そして右手のドリルを器用に使って、アルテローゼの体から過充電によって赤熱している心臓のようなキャパシターを取り出した。
またキャパシターを取り出す作業と同時に左手の盾を錬金術の工作魔法で丸めて、レイフは簡易の砲身を作り出した。砲身の一方に右手のドリルを装填し、それから過充電のキャパシターをセットする。そう、レイフが作ったのは、ドリルを砲弾としキャパシターを炸薬とした大砲だった。
なぜレイフが大砲を知っていたかというと、帝国時代にも錬金術の研究から黒色火薬が存在し大砲も存在していたからである。火薬と弾の補給を必要とする大砲より魔法の方が使い勝手は良かったため普及はしなかった。しかし、レイフは錬金術で弾を作り、魔法で射出する大砲をゴーレムに装備しようと研究していた。その成果がこの大砲だった。
『きゃぱしたーとやらの爆発力なら、この大砲とドリルで、巨人を破壊できるじゃろう…。短い間であったが、お前に会えて良かったのじゃ。レイチェルよさらばじゃ。フォイアー』
レイフは、コクピットの射出を専用システムに命じ、同時にキャパシターを爆発させるコマンド…自爆コマンドを実行した。
「えっ? レイフ、どういうこと…」
レイフの突然の別れの言葉にレイチェルが疑問の声を上げるが、それを遮るようにコクピットは背面から射出される。すぐさまエアバッグが展開し、コクピットは飛び跳ねながら地面を転がっていった。
そして、キャパシターが爆発すると、砲身から徹甲弾と化したドリルが射出される。レイフの計算通り徹甲弾と化したドリルは巨人の腕を貫き、巨人の胸に…チャンがいるコクピットに向けて吸い込まれていった。
現在の危機的状況からどうやって抜け出すか、悩んでいるレイフにそのようなメッセージが届く。
『(はぁ、自爆機能じゃと? 馬鹿な事を言うな、自爆してはレイチェルが助からぬだろうが)』
ヴィクターの研究してたアルテローゼのシステムは、軍の最新技術であり機密情報の塊である。その秘密が外部に漏れないように、連邦軍は自爆機能の設置をヴィクターに命じたのだ。
もちろんヴィクターはそんな物を実装するつもりは無かったのだが、システム設計上は搭載されていることになっていた。レイフはその設計図を元に忠実にアルテローゼの機体を再構築したため、自爆機能が搭載されてしまったのだ。
『(ふむ、自爆機能とは動力である超伝導バッテリーでキャパシターを過充電してからショートさせて爆発させるシステムか。もちろん自爆前にコクピットは機外に射出するのだろうが、現在は胴体を捕まれたままじゃ。これではレイチェルが脱出できないではないか。しかし、超伝導バッテリーとキャパシターによる爆発は何かに使えそうじゃな)』
他に手が思い浮かばなかったレイフは、自爆システムについて原理と構造を調べていく。これは、自爆するシステムを何かに流用できないかと考えたからである。
「レイフ、私は一体どうすれば良いのですか?」
『シートに座っておれ。いま脱出の手を考えておるのじゃ』
レイチェルは、コクピットで潰される恐怖におびえていた。本当は優しい言葉でも掛けてやりたいところだったが、自爆システムを解析しているレイフにはそんな余裕はなかった。
『(背面のランドセルにも超伝導バッテリーとキャパシターが付いておる。これを爆発させることで、一時的に手の拘束を排除できるやもしれぬ。そして本命の本体の方は自爆ではなく巨人への攻撃として使えれば…)』
電子頭脳として思考するレイフは、その可能性を計算する。科学技術には疎いレイフだが、サブシステムのサポートにより一つの案がまとまった。その成功確率は50%程度と見積もられたが、実現は不可能とサブシステムは警告した。
『(儂の魔法があれば、この案は実現可能じゃ。帝国筆頭魔道士の力の見せ所じゃな)』
システムが実現不可能と判断した部分は、レイフの魔法で100%補えると彼は考えた。成功確率は50%だが、現状のままでは100%レイチェルは助からない。
『よし、方針は決まったのじゃ』
即断即決がレイフの持ち味であり、今までそれで切り抜けてきたのだ。
「どうしますの?」
何とかシートに着席したレイチェルは不安そうにモニターを見つめる。
『レイチェルよ儂の言う通りに、コンソールを操作してほしいのじゃ』
「誰が嫁なのですか。…それで何とかなるのですか?」
『ああ、レイチェルは助かるぞ』
「分かりましたわ。では何時から始めますの?」
ミシリとコクピットがさらに歪み、レイチェルの顔が不安に歪む。
『今すぐ始めるのじゃ』
レイフは、モニターに背面ランドセルの自爆と、アルテローゼ本体の自爆の可否を決める選択肢を表示した。
本当であればレイチェルに知らせずにこの処理は行いたかったが、人命に関わる自爆という行為は、レイフだけでは実行不可能である。必ずレイチェルの許可が必要なのだ。
「自爆って、それでは…」
『大丈夫じゃ、コクピットは自爆前に射出されるのじゃ』
レイフは不安そうなレイチェルに冷静に説明する。
「…レイフは、どうなるのですか?」
『(ちっ、気づきおったか)もちろん、制御コアはコクピットと一緒に射出されるぞ。大丈夫じゃ、儂がレイチェルを一人にするわけがなかろう』
「そうですのね、分かりましたわ」
『もう時間が無い。急ぐのじゃ』
「ええ」
レイチェルが、スティックを操作してアルテローゼの自爆行動を承認する。
『(まあ、制御コアだけが逃げても、ストレージが無くなれば、儂と言う自我は消えてしまうのだろうな)では、開始するぞ』
レイフの合図でまず背面のランドセルのキャパシターが爆発する。その爆発によって、胴体を拘束してた巨人の指が吹き飛びアルテローゼは巨人の手の拘束から解放された。
「きゃあ」
『(第一段階は成功じゃな)』
爆発の衝撃にレイチェルが悲鳴を上げるが、レイフはそれに構っている時間は無かった。
レイフは、バッテリーからキャパシターに電力を充電し、爆発寸前の状態に持っていった。そして右手のドリルを器用に使って、アルテローゼの体から過充電によって赤熱している心臓のようなキャパシターを取り出した。
またキャパシターを取り出す作業と同時に左手の盾を錬金術の工作魔法で丸めて、レイフは簡易の砲身を作り出した。砲身の一方に右手のドリルを装填し、それから過充電のキャパシターをセットする。そう、レイフが作ったのは、ドリルを砲弾としキャパシターを炸薬とした大砲だった。
なぜレイフが大砲を知っていたかというと、帝国時代にも錬金術の研究から黒色火薬が存在し大砲も存在していたからである。火薬と弾の補給を必要とする大砲より魔法の方が使い勝手は良かったため普及はしなかった。しかし、レイフは錬金術で弾を作り、魔法で射出する大砲をゴーレムに装備しようと研究していた。その成果がこの大砲だった。
『きゃぱしたーとやらの爆発力なら、この大砲とドリルで、巨人を破壊できるじゃろう…。短い間であったが、お前に会えて良かったのじゃ。レイチェルよさらばじゃ。フォイアー』
レイフは、コクピットの射出を専用システムに命じ、同時にキャパシターを爆発させるコマンド…自爆コマンドを実行した。
「えっ? レイフ、どういうこと…」
レイフの突然の別れの言葉にレイチェルが疑問の声を上げるが、それを遮るようにコクピットは背面から射出される。すぐさまエアバッグが展開し、コクピットは飛び跳ねながら地面を転がっていった。
そして、キャパシターが爆発すると、砲身から徹甲弾と化したドリルが射出される。レイフの計算通り徹甲弾と化したドリルは巨人の腕を貫き、巨人の胸に…チャンがいるコクピットに向けて吸い込まれていった。
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