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第6話:戦場はヘスペリア平原
Aパート(6)
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『こちらじゃ、この状況を『肉を切らせて骨を断つ』と言うんだったな』
「そうですわ」
ガオガオの強みはその機動力だったが、今の攻撃でそれは失われた。一方アルテローゼは、槍は失ったが左手の盾は残っていた。この場合、どちらが有利なのかは一目瞭然だった。
「大丈夫、ガオガオ?」
『ガゥ』
「うん、すぐにあいつを片付けて、おうちに帰って、治してもらおうね」
『ガゥガゥ』
コクピットでは、少女がガオガオに対していたわりの声をかける。ガオガオは大丈夫と言っているようだったが、もちろん少女にもそれはやせ我慢だと分かっていた。少女は、アルテローゼを倒さない限り、自分にもガオガオにも未来はないのだと理解していた。
「こうなったら、これを使うしかないかな。ホントは使いたくないんだけどね。ガオガオちょっと我慢してね」
『キュゥ?』
何をするつもりなのか、少女は決意する。それに対してガオガオは怯えるような鳴き声をあげた。
「ガオガオ、フルバースト・モードにチェンジだよ」
少女はそう叫ぶと、ハンドルの中央部を思いっきり叩いた。すると四つのスイッチが並んだコンソールが、シートの中央から飛び出した。
コンソールが飛び出すのと同時に、ガオガオの外装が変形を始める。背中からは巨大なレールキヤノンの砲身がせり上がり、腹部には左右と下に小型の九連装ミサイルポッドが、前足の両肩にはレーザー砲が飛び出した。どうやらこの姿が、ガオガオのフルバースト・モードのようだった。
『なるほど、今まで射撃武装を隠していたのか。…しかし、何というか武装の取り付けバランスが悪いな。あの状態では、先ほどまでのような機敏な動きができないだろ』
レイフは、ガオガオのフルバースト・モードを一目見て、その弱点を見いだした。
「レイフ、あれだけの武装ですが、どう見ても胴体には収まらないのですが?」
『ん、あの程度なら容量拡張のエンチャントを施せば、収まるだろ?』
レイチェルの疑問はもっともで、フルバースト・モードで現れた武装の容量は、どう見てもガオガオの体に収まる物ではなかった。しかし、レイフは帝国時代に無限のバッグといった、容量拡張のエンチャントをゴーレムに仕込んだりしていたため、不思議と感じなかったのだ。
「そーれ、いっけー!」
少女は、かけ声とともにコンソールのスイッチ全てを叩きつけるように押す。その途端、ガオガオの武装が火を噴き、途切れることのない弾丸とミサイル、レーザーの雨がアルテローゼに降り注いだ。
『あれだけの武装では、自由に動けないと思ったが、どうやら動く必要がなかったということか。このままでは盾にかけた魔法の許容量をオーバーしてしまうな』
「レイフ、何とかならないのですか」
アルテローゼは、プロテクション・フロム・ミサイルがかかった盾をかざして弾丸の雨をしのいでいた。魔法の力によって、レールキヤノンの弾やレーザーは機体からそらし、ミサイルは、胸部のレーザー機銃で打ち落としていた。
しかし、ガオガオの射撃は武器と同じく弾までも機体容量を無視して搭載しているとしか思えず、止まる気配がなかった。
そんな状況で、レイフが言ったように魔法の効果が弱まってきたのか、機体のあちこちに弾やレーザーが掠り始めた。辛うじて胴体への直撃は防いでいるが、肩やランドセルの一部は既にボロボロの状態である。
一方ガオガオの方も何の反動もなくこの攻撃を続けていたわけではなかった。四肢を踏ん張り射撃の反動に耐えているが、その負荷よるのか機体のあちこちに亀裂がはしっていた。
さて、この大ピンチをどうやってアルテローゼは乗り切るのだろうか。
『ナレーション、ちゃんと手は打ってあるぞ』
「何をブツブツと言っているのですか。何とかしないと、このままでは私たち削り殺されますわ」
レイチェルは、今一つ危機感が感じられないレイフに注意する。
『なーに、もう少し耐えれば、こちらの逆転勝利は確実だ。儂を信じて任せておけ』
『そう?ですの。ではレイフに全てを任せますわ』
レイチェルは、この状況は自分では何もできない事を理解していた。彼女は、レイフの言葉を信用して任せる事に決めた。
『(後少し、そうもう少しで接続完了だ)』
レイフには、アルテローゼから延びる線が、先ほどパージした武装に延びていく様子が見えていた。その線とは、ガオガオによって破壊されたと思われた多脚装甲ロボットとつながる線であった。そして多脚装甲ロボットがミサイルランチャーにたどり着いたとき、アルテローゼの勝利は確定したのだった。
『その状態では、動けないしシールドも張れないだろ。射撃戦に持ち込んだのが貴様の敗因だったな。喰らえ!』
レイフの命令で、多脚装甲ロボットがランチャーを操作して対戦車ミサイルを発射した。射撃中のガオガオには、背後から迫りくるミサイルを避けることはできなかった。
ガオガオが悲鳴を上げるが、対戦車ミサイルが命中した機体は粉々に砕け散っていく。このままでは、コクピットが存在する上半身までも破壊されて少女は死んでしまう。
「ガオガオー!」
『ギャォーーーォン』
少女は覚悟を決めて、ガオガオの名を叫び、ガオガオは何とかコクピットを護ろうとするが、それも無駄なあがきだった。情け容赦なくミサイルはガオガオを破壊して行く。少女の命は風前の灯火だった。
しかし、そのとき少女を救ったのは、ミサイルから上半身を護る様にガオガオの胴体に盾を突き刺したアルテローゼだった。
アルテローゼは、ぎりぎりの所でコクピットのある上半身を盾で護り、少女の命を救ったのだった。
「そうですわ」
ガオガオの強みはその機動力だったが、今の攻撃でそれは失われた。一方アルテローゼは、槍は失ったが左手の盾は残っていた。この場合、どちらが有利なのかは一目瞭然だった。
「大丈夫、ガオガオ?」
『ガゥ』
「うん、すぐにあいつを片付けて、おうちに帰って、治してもらおうね」
『ガゥガゥ』
コクピットでは、少女がガオガオに対していたわりの声をかける。ガオガオは大丈夫と言っているようだったが、もちろん少女にもそれはやせ我慢だと分かっていた。少女は、アルテローゼを倒さない限り、自分にもガオガオにも未来はないのだと理解していた。
「こうなったら、これを使うしかないかな。ホントは使いたくないんだけどね。ガオガオちょっと我慢してね」
『キュゥ?』
何をするつもりなのか、少女は決意する。それに対してガオガオは怯えるような鳴き声をあげた。
「ガオガオ、フルバースト・モードにチェンジだよ」
少女はそう叫ぶと、ハンドルの中央部を思いっきり叩いた。すると四つのスイッチが並んだコンソールが、シートの中央から飛び出した。
コンソールが飛び出すのと同時に、ガオガオの外装が変形を始める。背中からは巨大なレールキヤノンの砲身がせり上がり、腹部には左右と下に小型の九連装ミサイルポッドが、前足の両肩にはレーザー砲が飛び出した。どうやらこの姿が、ガオガオのフルバースト・モードのようだった。
『なるほど、今まで射撃武装を隠していたのか。…しかし、何というか武装の取り付けバランスが悪いな。あの状態では、先ほどまでのような機敏な動きができないだろ』
レイフは、ガオガオのフルバースト・モードを一目見て、その弱点を見いだした。
「レイフ、あれだけの武装ですが、どう見ても胴体には収まらないのですが?」
『ん、あの程度なら容量拡張のエンチャントを施せば、収まるだろ?』
レイチェルの疑問はもっともで、フルバースト・モードで現れた武装の容量は、どう見てもガオガオの体に収まる物ではなかった。しかし、レイフは帝国時代に無限のバッグといった、容量拡張のエンチャントをゴーレムに仕込んだりしていたため、不思議と感じなかったのだ。
「そーれ、いっけー!」
少女は、かけ声とともにコンソールのスイッチ全てを叩きつけるように押す。その途端、ガオガオの武装が火を噴き、途切れることのない弾丸とミサイル、レーザーの雨がアルテローゼに降り注いだ。
『あれだけの武装では、自由に動けないと思ったが、どうやら動く必要がなかったということか。このままでは盾にかけた魔法の許容量をオーバーしてしまうな』
「レイフ、何とかならないのですか」
アルテローゼは、プロテクション・フロム・ミサイルがかかった盾をかざして弾丸の雨をしのいでいた。魔法の力によって、レールキヤノンの弾やレーザーは機体からそらし、ミサイルは、胸部のレーザー機銃で打ち落としていた。
しかし、ガオガオの射撃は武器と同じく弾までも機体容量を無視して搭載しているとしか思えず、止まる気配がなかった。
そんな状況で、レイフが言ったように魔法の効果が弱まってきたのか、機体のあちこちに弾やレーザーが掠り始めた。辛うじて胴体への直撃は防いでいるが、肩やランドセルの一部は既にボロボロの状態である。
一方ガオガオの方も何の反動もなくこの攻撃を続けていたわけではなかった。四肢を踏ん張り射撃の反動に耐えているが、その負荷よるのか機体のあちこちに亀裂がはしっていた。
さて、この大ピンチをどうやってアルテローゼは乗り切るのだろうか。
『ナレーション、ちゃんと手は打ってあるぞ』
「何をブツブツと言っているのですか。何とかしないと、このままでは私たち削り殺されますわ」
レイチェルは、今一つ危機感が感じられないレイフに注意する。
『なーに、もう少し耐えれば、こちらの逆転勝利は確実だ。儂を信じて任せておけ』
『そう?ですの。ではレイフに全てを任せますわ』
レイチェルは、この状況は自分では何もできない事を理解していた。彼女は、レイフの言葉を信用して任せる事に決めた。
『(後少し、そうもう少しで接続完了だ)』
レイフには、アルテローゼから延びる線が、先ほどパージした武装に延びていく様子が見えていた。その線とは、ガオガオによって破壊されたと思われた多脚装甲ロボットとつながる線であった。そして多脚装甲ロボットがミサイルランチャーにたどり着いたとき、アルテローゼの勝利は確定したのだった。
『その状態では、動けないしシールドも張れないだろ。射撃戦に持ち込んだのが貴様の敗因だったな。喰らえ!』
レイフの命令で、多脚装甲ロボットがランチャーを操作して対戦車ミサイルを発射した。射撃中のガオガオには、背後から迫りくるミサイルを避けることはできなかった。
ガオガオが悲鳴を上げるが、対戦車ミサイルが命中した機体は粉々に砕け散っていく。このままでは、コクピットが存在する上半身までも破壊されて少女は死んでしまう。
「ガオガオー!」
『ギャォーーーォン』
少女は覚悟を決めて、ガオガオの名を叫び、ガオガオは何とかコクピットを護ろうとするが、それも無駄なあがきだった。情け容赦なくミサイルはガオガオを破壊して行く。少女の命は風前の灯火だった。
しかし、そのとき少女を救ったのは、ミサイルから上半身を護る様にガオガオの胴体に盾を突き刺したアルテローゼだった。
アルテローゼは、ぎりぎりの所でコクピットのある上半身を盾で護り、少女の命を救ったのだった。
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