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第8話:拉致
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研究所の格納庫。今そこでは、火星タコ排除のために出撃するアルテローゼの改装が行われていた。
地上戦用機動兵器であるアルテローゼは、そのままでは海で戦えない。地上兵器や宇宙兵器がそのまま水中に入って無事なのは、漫画やアニメの中だけである。水陸両用に最初から設定されていない兵器は、エンジンや伝送系が水につかってしまったら終わりである。要するに、アルテローゼを水につけても壊れないようにすることが、今回の改装の目的だった。
しかし、防水と言っても、海上と海中のどちらをターゲットとして行うかで、改装の難易度が異なる。そのアルテローゼの防水仕様について、レイフは整備主任のおやっさんと話をしていた。
整備主任のおやっさんはメカ整備数十年の大ベテランであり、他のロボットと全く異なるアルテローゼを整備するためにわざわざ地球から引き抜かれたほどの人物であった。技術一筋だが、レイフの錬金術にも拒絶反応を示さず、逆に使えれば整備が楽になると、大いに興味を持っているという、整備のためなら何でもやるという技術者魂の持ち主だった。
そのような性格のため、ゴーレムマスターであるレイフと息があい、暇さえあればアルテローゼの整備や改造、そして錬金術について話し合う仲だった。
『水上を移動するなら、水上歩行の魔法を付与すれば良いが、水中で戦うとなれば、今のアルテローゼでは、難しいのではないか?』
「そりゃ、電送系は防水されているといっても、せいぜい十気圧程度までだからな。動いたり攻撃されたりすればあっという間にショートしちまうわ。コクピットも機密は保たれてるが、二十メートルぐらいでGがかかると浸水するだろうな。レイフ、その辺を何とかする魔法とやらはないのかね?」
『水中で動くゴーレムを作る場合は、元々それ用途の素材や構造で設計するから、わざわざ魔法で気密を保つ必要はないんだよ。人間が水中に潜るための水中呼吸や圧力軽減魔法とかはあるんだが…』
「ほう、そんな魔法があるのか。じゃあ、パイロットのお嬢ちゃんには、いざって時それをかければ良いか。これで脱出用の装備がいらないとなると…」
『いや、水圧をなめたらあかん。深度によっては、コクピットが一瞬で圧壊するからな。そうなったら時、一瞬で魔法を掛けるのは無理なんだよ』
「便利そうに見えても、そう上手くは行かないか。…ともかく、この短時間じゃコクピットを水中対に仕上げるのは難しい。やはり、水上で戦闘する仕様で考えるしかないか」
『…相手はクラーケンだとすると、脚を絡みつかせて水中に引きずり込むという攻撃がメインとなると思うと、やっぱり、水中で戦えるようにすべきだな』
「チッ、そうなるのかよ。分かった、手持ちの資材でどれだけできるか分からないが、水中でも耐えられる様に、がんばってみるしかねーな」
『おやっさん、頼みますわ』
おやっさんは、アルテローゼを海上戦用に改装するために、連邦軍がもってきた資材や装備を物色し始めた。
『(装備の方はおやっさんに、任せるとして、こっちは火星タコとの戦いに備えて、戦術を考えておかないとな)』
レイフは、研究所のデータベースに接続すると、火星タコについて調べ始めた。
『(全長二十メートル弱の軟体動物で、脚は十二本と。外見は…ってこれはクラーケンなのか?)』
レイフはデータベースにあった火星タコの写真を見て、驚いた。調査船を襲ったときに撮られたも写真だが、その姿をレイフはよく知っていた。
クラーケンとは、レイフのいた世界でも有名な海の魔獣であった。嵐を起こし船を沈める魔獣クラーケンは、ドラゴンに匹敵する魔獣である。もちろんレイフも何度か討伐に赴いたことがあったが、ドラゴンに匹敵する力と無限の耐久力を持つクラーケンを倒すのは難しく、何とか追い払っただけだった。いやそれでもクラーケンを追い払ったと、勲章をもらえるぐらいの存在なのだ。
『(この世界の軍隊は、そんな魔獣と戦って勝てるのか。…いや、このクラーケン、えらく小さいな。もしかして子供なのか)』
レイフの知っているクラーケンは、全長五十メートルを超える物だった。全長二十メートルで魔法を使えないのであれば、子供なのかもしれないとレイフは考えたのだが。
『(いや、まてよ。そりゃ儂と同じ転生した者がいると判明したわけだが、クラーケンは違うだろ。魔獣が転生とか、そんなわけないだろ)』
火星タコがクラーケンだとすると、この世界はレイフのいた世界と同じだと言うことになる。しかし、レイフはネットでこの世界の社会や歴史を学んだが、その中にレイフの知る魔法や帝国などの痕跡は全く見つからなかった。つまりこの世界は、レイフの世界とは異なるはずなのだ。つまり、火星タコはクラーケンであるはずがないのだ。この世界は、人を含め動植物もレイフの元いた世界と似たような種が多い。きっと火星タコもそういった物だろうとレイフは思うことにした。
『(しかし、火星タコ、本当にクラーケンに似ているな。本当は…、いやそれは実物を見ればはっきりするだろう)』
これ以上火星タコに付いて考えるのを止めたレイフは、アルテローゼの改装に集中するのだった。
地上戦用機動兵器であるアルテローゼは、そのままでは海で戦えない。地上兵器や宇宙兵器がそのまま水中に入って無事なのは、漫画やアニメの中だけである。水陸両用に最初から設定されていない兵器は、エンジンや伝送系が水につかってしまったら終わりである。要するに、アルテローゼを水につけても壊れないようにすることが、今回の改装の目的だった。
しかし、防水と言っても、海上と海中のどちらをターゲットとして行うかで、改装の難易度が異なる。そのアルテローゼの防水仕様について、レイフは整備主任のおやっさんと話をしていた。
整備主任のおやっさんはメカ整備数十年の大ベテランであり、他のロボットと全く異なるアルテローゼを整備するためにわざわざ地球から引き抜かれたほどの人物であった。技術一筋だが、レイフの錬金術にも拒絶反応を示さず、逆に使えれば整備が楽になると、大いに興味を持っているという、整備のためなら何でもやるという技術者魂の持ち主だった。
そのような性格のため、ゴーレムマスターであるレイフと息があい、暇さえあればアルテローゼの整備や改造、そして錬金術について話し合う仲だった。
『水上を移動するなら、水上歩行の魔法を付与すれば良いが、水中で戦うとなれば、今のアルテローゼでは、難しいのではないか?』
「そりゃ、電送系は防水されているといっても、せいぜい十気圧程度までだからな。動いたり攻撃されたりすればあっという間にショートしちまうわ。コクピットも機密は保たれてるが、二十メートルぐらいでGがかかると浸水するだろうな。レイフ、その辺を何とかする魔法とやらはないのかね?」
『水中で動くゴーレムを作る場合は、元々それ用途の素材や構造で設計するから、わざわざ魔法で気密を保つ必要はないんだよ。人間が水中に潜るための水中呼吸や圧力軽減魔法とかはあるんだが…』
「ほう、そんな魔法があるのか。じゃあ、パイロットのお嬢ちゃんには、いざって時それをかければ良いか。これで脱出用の装備がいらないとなると…」
『いや、水圧をなめたらあかん。深度によっては、コクピットが一瞬で圧壊するからな。そうなったら時、一瞬で魔法を掛けるのは無理なんだよ』
「便利そうに見えても、そう上手くは行かないか。…ともかく、この短時間じゃコクピットを水中対に仕上げるのは難しい。やはり、水上で戦闘する仕様で考えるしかないか」
『…相手はクラーケンだとすると、脚を絡みつかせて水中に引きずり込むという攻撃がメインとなると思うと、やっぱり、水中で戦えるようにすべきだな』
「チッ、そうなるのかよ。分かった、手持ちの資材でどれだけできるか分からないが、水中でも耐えられる様に、がんばってみるしかねーな」
『おやっさん、頼みますわ』
おやっさんは、アルテローゼを海上戦用に改装するために、連邦軍がもってきた資材や装備を物色し始めた。
『(装備の方はおやっさんに、任せるとして、こっちは火星タコとの戦いに備えて、戦術を考えておかないとな)』
レイフは、研究所のデータベースに接続すると、火星タコについて調べ始めた。
『(全長二十メートル弱の軟体動物で、脚は十二本と。外見は…ってこれはクラーケンなのか?)』
レイフはデータベースにあった火星タコの写真を見て、驚いた。調査船を襲ったときに撮られたも写真だが、その姿をレイフはよく知っていた。
クラーケンとは、レイフのいた世界でも有名な海の魔獣であった。嵐を起こし船を沈める魔獣クラーケンは、ドラゴンに匹敵する魔獣である。もちろんレイフも何度か討伐に赴いたことがあったが、ドラゴンに匹敵する力と無限の耐久力を持つクラーケンを倒すのは難しく、何とか追い払っただけだった。いやそれでもクラーケンを追い払ったと、勲章をもらえるぐらいの存在なのだ。
『(この世界の軍隊は、そんな魔獣と戦って勝てるのか。…いや、このクラーケン、えらく小さいな。もしかして子供なのか)』
レイフの知っているクラーケンは、全長五十メートルを超える物だった。全長二十メートルで魔法を使えないのであれば、子供なのかもしれないとレイフは考えたのだが。
『(いや、まてよ。そりゃ儂と同じ転生した者がいると判明したわけだが、クラーケンは違うだろ。魔獣が転生とか、そんなわけないだろ)』
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