ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

文字の大きさ
71 / 143
第9話:総攻撃

Bパート(1)

しおりを挟む
 火星タコを追い払ったアルテローゼレイフだが、

『レイチェルが誘拐されただと!』

 ディビットから、驚愕の事実を知らされることになった。

『どうして船からレイチェルが誘拐されるのだ。周りは海だぞ。それとも、革命軍は空でも飛んで逃げたとでも言うのか!』

 レイフは、レイチェルが巡視船から誘拐されたという非常識な出来事に、驚くというより怒ってしまった。

『レイフ、済まない、まさかマーズ海運会社の連中があんなモノ・・・・・まで持っているとは思っていなかったんだ』

 通信に出たディビットは、ずぶ濡れの状態で謝ってきた。背後のマイケルやクリストファーも同様にずぶ濡れであり、艦橋は水浸しだった。

『(どうして皆濡れているのだ? 火星タコに海水でも掛けられたのか? …いや今はそんな事はどうでも良い) あんなモノとは何なのだ? レイチェルはそれに掠われたのか?』

『あんなモノとは、潜水艦のことだ。しかも巡視船の海中探知機では補足できないほどのステルス性能を持つ、とんでもないモノだ。マーズ海運は、火星の海に潜水艦を隠していたんだ』

 ディビットは、そう言って、革命軍に出し抜かれたのが悔しいのかコンソールに拳を叩きつけていた。

『(潜水艦とは…なるほど、海に潜る船のことか。この世界の者達は変なモノを作るのだな)とにかく、その潜水艦がどこに向かったか分からないのか、今ならまだ追いつけるかもしれん』

 レイフは、アルテローゼのデータベースから潜水艦を検索し、その概要を理解した。潜水艦は以外と早く、四十ノット以上を出す物もいるらしいが、マリンフォームの最高速度は六十ノットである。逃げた方向さえ間違えなければ、十分追いつけるのだ・

「そうだよ、グズグズしていたら金髪ドリルがさらわれちゃうよ」

 アイラも、追いかけるのに賛成であると主張する。

『えーっと、ちょっと待てよ、監視カメラの画像から判断すると、まっすぐ北に向かっているな』

 ディビットは、左舷のカメラ画像から潜水艦が向かった方向から予想進路を地図マップに表示した。潜水艦は、北上して火星の極冠にある北極洋を目指していた。

『なるほど、北に向かってオリンポスに向かうつもりか。よし、今から追いかけるぞ。アイラ、スティック操縦桿を握れ』

「了解だよ」

 潜水艦が向かった先が分かれば追いかける航路も算出できる。レイフは直ぐに追いかけることにした。

『ホァンの回収が終わったら、こっちもアルテローゼを追いかけるからな』

『ホァンの回収? よく分からんが、急いでくれよ。では、儂らは行くぞ』

 ディビットの言葉を聞き流し、アルテローゼレイフは推力前回で飛び出た。
 その後ろから、ようやく動き出した巡視船が追いかけてくるが、スピードはアルテローゼレイフの方が圧倒的に早い。巡視船はあっという間に水平線に消えていった。

『潜水艦が出て、十数分の差。必ず追いつける』

「でも、海の中にいるんでしょ。見つけられるの?」

 実際水中にいる潜水艦を見つける手段は、結局海中探知機ソナーを使うしかない。しかし、逃げた潜水艦は巡視船とアルテローゼレイフの海中探知機をかいくぐるステルス性能を持っている。たとえ追いついたとしても海底深く潜まれては見つけ出せない可能性が高い。

『うむ、そこはの力で見つけるぞ』

「あ~い?」

 レイフの「愛」という似付かわしくない言葉に、アイラが何とも言えない顔をする。もし、昔のレイフを知る人間が聞いたら、腹を抱えて笑うか、馬鹿にしているのかと怒るような台詞であった。大体醜男のレイフに愛という言葉は似合わないのだ。

『外野、五月蠅い! とにかくレイチェルを見つけるのは儂の愛の力だ!』

「レイフ、誰と話しているの?」

 アイラが怪訝な顔をするが、レイフはレイチェルを見つけ出すために集中してしまったので、答えることはなかった。

 レイフは、レイチェルを貢げ出すのは愛の力と言っているが、実際はレイチェルの魔力マナパターンを探索することで、見つけだそうとしていた。これは魔力マナ感知ができるアルテローゼレイフにしか、できないことであった。

『(そろそろ潜水艦に追いついたはず。レイチェルの魔力マナパターンを見つけ出すのだ)』

 レイチェルの魔力パターンを、魔力マナ感知の膨大なデータから見つけ出すのは、砂場から一粒の砂を見つけるような作業である。AIであればそんな作業もこなせるだろうが、レイフは元人間である。気の狂うような作業を延々と行えるのは、愛がなければ不可能なことであった。

『(火星タコの波動がおおいな…これも、これも、違う…一体何処にいったんだ)』

 レイフは船の操作をアイラに任せ、魔力マナ感知を続けた。魔力マナパターンを探す処理を延々と繰り返すうちに、レイフはサブシステムに魔力マナパターンのフィルター処理ができることに気がついた。レイフが行う魔力マナ感知のデータを数値化してサブシステムに送り、その中からレイチェルの魔力マナパターンに一致する物を探させるのだ。サブシステムに検索を任せることで、レイフは余裕が出て、魔力マナ検知の反意を一キロ四方から十数キロの範囲に拡大することが可能となった。

『(パターンの一致を発見した…)見つけたぞ!』

 追いかけ始めてから三十分ほど経過したところで、レイフはレイチェルの魔力マナパターンを見つける。

「ここに金髪ドリルがいるのか?」

 レイチェルの位置は、モニターのマップに赤い光点で表示された。それは、四十ノットという速度で進んでいた。

『逃がす物か!』

「追いつくよ~」

 レイフとアイラは、赤い光点が指し示す位置をめがけ、全力でアルテローゼを駆けさせた。

 潜水艦は海面下百メートルの水深で航行してたので、途中からアルテローゼは海中に潜る。水中を進むアルテローゼは、ようやく潜水艦の姿を捕らえることに成功した。

『ようやく追いついた』

「早く金髪ドリルを助けようよ」

『うむ、しかしどうやって助けたら良いのか。捕まえようにもこの深度では変形はできないからな』

「魚雷をぶつけたら上にうかばないかな?」

『今できるのは、それぐらいか。つ! いきなり潜水艦の速度が上がったぞ』

「このままじゃ置いてかれるよ」

「くっ、向こうは更に加速するのか。だが、食い下がってみせる!」

 アルテローゼの存在に気付いたのか、潜水艦はその速度を上げた。マリンフォームの海中の最高速度は四十五ノットに対し、潜水艦は四十ノットから一気に五十ノットに増速する。

「くそ、もっと速度を出せアルテローゼ!」

「ああ、バッテリーが…無くなっちゃうよ」

 レイフはスピードを出そうとするが、火星タコとの戦いから一度もエネルギー補給をしていなかったアルテローゼのバッテリーエネルギーは、既に底を突きかけていた。

『ま、待て。待ってくれ~』

 レイフの叫びがむなしく水中に拡散する。しかし潜水艦は止まることなく、海の彼方に消えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...