ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

文字の大きさ
117 / 143
第13話:宇宙の果て

Bパート(5)

しおりを挟む
 研究所で解析されたガオガオの制御コアだが、違法な産物であり破棄するという話が持ち上がったとき、反対したのはアイラとレイチェルだった。しかし、体が無い状態で制御コアを放置することはガオガオの脳に悪影響がでてしまう。そこで仮の体と言うことでレイフがゴーレムマスターの魔法で作り上げたのが、アイラが乗っている、全長三メートル教の獅子型ロボットであった。
 多脚装甲ロボットの残骸から作り出された獅子型ロボットそれは、戦闘ロボットの装甲を切り裂く爪と噛みきる牙を備え、アイラと一緒であればシールドの魔法も使えることから、ディビット達の護衛に使えるだろうと一緒に打ち上げられたのだ。
 そしてその役目を今十分に果たしていた。

『れーざーはあたいが防ぐから、早く中に入ってよ』

 アイラとガオガオがシールドの魔法でレーザーを防ぎながら、二人に叫ぶ。

『分かった。ちょっと待ってろ』

『ディビット、急いでくれ』

 ディビットは携帯端末を取り出すと、エアロックのハッチの横にあるコネクタに接続する。ハッキングツールを立ち上げるとステーションAIとの接続を行うが、

『接続不能? ハッキングを察知してAIが回路を切りやがった。いや、それなら手動で解除できるぞ。…よし、これでOKだ』

 ディビットがパネルをタップすると、エアロックの外側のハッチが閉じていった。アイラは急いでガオガオと共にエアロックの中に入り、そして扉が閉まった。

 エアロックに空気が充填されると、内側のハッチが開いた。

「ふぅ、危なかったぜ」

「アイラちゃんがいなかったら、死んでいたな」

 ステーションに進入したディビットとケイイチは、ヘルメットのバイザーを開いて汗を拭っていた。

「あたいじゃなくて、ガオガオのおかげだよ。ありがとうねガオガオ」

 アイラはガオガオの頭を撫でると、ガオガオは嬉しそうに「ガォ」と小さく鳴いて尻尾をパタパタと振る。

「さて、これからどうするんだ?」

「まずはステーションの管理AIの状態を調べないとな。とにかく情報端末を探してくれ」

「「りょーかい!」」

 三人と一匹は通路を進み情報端末を探し始めたが、その様子を監視カメラが見ていたことに気付いてはいなかった。


 ◇


「ここも駄目か」

 通路を進んで見つかった情報端末にディビットは片っ端からアクセスしたが、AIへの接続は全て切られていた。

「この区画の端末は全滅かな」

「AIに接続できれば何とかなると思ったが、できないんじゃ俺でもどうしようもないぞ」

「他の区画に移動するか?」

「いや、他の区画でも一緒だろうな。…素直にコントロールルームに行くしかないだろ」

「そうなるか…」

「問題は、素直にコントロールルームに向かわせてもらえるかだが…」

「何か目玉のお化けみたいな奴がやって来たよ~」

 アイラが指さす先を見ると、そこには直径三十センチほどの球形ロボットが数体浮かんでいた。球体の中央にカメラ、下部にスタンガンを装備したそれはステーションのセキュリティを担当するロボット兵器である。武装がスタンガンなのは、ステーション内部を破壊しないためである。
 無重力ブロックでエアーを吹き出してピンボールのように動く球体ロボットは、三人に向かってきていた。

「ここからはアクションステージのようだな」

 ケイイチはホルスターから拳銃を取り出すと先頭の球形ロボットに狙いを付ける。

「俺は頭脳労働専門なのだが」

 ディビットも携帯端末をランドセルにしまうと、拳銃を手にした。

「来るよ~」

 球形ロボットの武装であるスタンガンの射程は五メートルほどである。近寄られなければ良いわけだが、問題はその数だった。

「彼奴ら、どれだけいるんだよ」

「ステーション全体で、数千機はいたはずだが…」

「まじかよ」

 広大なステーションを警備するために膨大な数のロボットが存在するのは当然である。拳銃で数機を倒したが、次々と数を増やす球形ロボットにディビットとケイイチの顔が引きつる。

「こうなったら…」

「どうするの?」

「逃げるんだよ~」

 三人と一匹はロボット達と反対の方向に逃げ出した。球形ロボットはその後を追いかける。

「このままじゃ、直ぐに追いつかれるぞ」

「ああ、だから無重力ブロックを抜け出すんだよ。あの扉に入るんだ」

 三人と一匹は、ディビットの指示した扉を開けて飛び込んだ。そこは無重力ブロックから重力ブロックに移動するための通路だった。球形ロボットは無重力ブロック専用のため、ここにはやってこられない。

「一旦重力ブロックに入って、そこからコントロールルームに向かうぞ」

「実は遠回りなのか?」

「仕方ないだろ」

「あたいとガオガオは地面に足が付いた方が好きだな~」

 通路を進むと、次第に疑似重力が強くなり最終的にはに足を付けて歩けるようになった。

「ここからは、体力勝負だな」

 ケイイチは通路のマップを見て、コントロールルームまでの距離を見て取った。

「だから、俺は頭脳労働専門だって」

 ディビットはその道のりを見てうんざりとした顔をする。普通に歩いても数キロはあるのに、宇宙服を着て重力ブロックを歩くのは重労働なのだ。

「ん、それならみんなガオガオに乗っていけば良いんだよ」

「「なるほど」」

 ディビットとケイイチはハモりながら手をポンと叩いた。

 こうして、三人を背中に乗せたガオガオは、ステーションの通路を力強く走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ
ファンタジー
かつて世界を滅ぼしかけたセイシュとイシュの争い。 その痕跡は今もなお、荒野の奥深くに眠り続けていた。 少年が掘り起こした“結晶”――それは国を揺るがすほどの力を秘めた禁断の秘宝「火の原石」。 平穏だった村に突如訪れる陰謀と争奪戦。 白竜と少年は未来を掴むのか、それとも再び戦乱の炎を呼び覚ますのか? 本作は、本編と並行して紡がれるもう一つの物語を描く番外編。 それぞれに選ばれし者たちの運命は別々の道を進みながらも、やがて大いなる流れの中で交わり、 世界を再び揺るがす壮大な物語へと収束していく。

処理中です...