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第13話:宇宙の果て
Bパート(5)
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研究所で解析されたガオガオの制御コアだが、違法な産物であり破棄するという話が持ち上がったとき、反対したのはアイラとレイチェルだった。しかし、体が無い状態で制御コアを放置することはガオガオの脳に悪影響がでてしまう。そこで仮の体と言うことでレイフがゴーレムマスターの魔法で作り上げたのが、アイラが乗っている、全長三メートル教の獅子型ロボットであった。
多脚装甲ロボットの残骸から作り出された獅子型ロボットは、戦闘ロボットの装甲を切り裂く爪と噛みきる牙を備え、アイラと一緒であればシールドの魔法も使えることから、ディビット達の護衛に使えるだろうと一緒に打ち上げられたのだ。
そしてその役目を今十分に果たしていた。
『れーざーはあたいが防ぐから、早く中に入ってよ』
アイラとガオガオがシールドの魔法でレーザーを防ぎながら、二人に叫ぶ。
『分かった。ちょっと待ってろ』
『ディビット、急いでくれ』
ディビットは携帯端末を取り出すと、エアロックのハッチの横にあるコネクタに接続する。ハッキングツールを立ち上げるとステーションAIとの接続を行うが、
『接続不能? ハッキングを察知してAIが回路を切りやがった。いや、それなら手動で解除できるぞ。…よし、これでOKだ』
ディビットがパネルをタップすると、エアロックの外側のハッチが閉じていった。アイラは急いでガオガオと共にエアロックの中に入り、そして扉が閉まった。
エアロックに空気が充填されると、内側のハッチが開いた。
「ふぅ、危なかったぜ」
「アイラちゃんがいなかったら、死んでいたな」
ステーションに進入したディビットとケイイチは、ヘルメットのバイザーを開いて汗を拭っていた。
「あたいじゃなくて、ガオガオのおかげだよ。ありがとうねガオガオ」
アイラはガオガオの頭を撫でると、ガオガオは嬉しそうに「ガォ」と小さく鳴いて尻尾をパタパタと振る。
「さて、これからどうするんだ?」
「まずはステーションの管理AIの状態を調べないとな。とにかく情報端末を探してくれ」
「「りょーかい!」」
三人と一匹は通路を進み情報端末を探し始めたが、その様子を監視カメラが見ていたことに気付いてはいなかった。
◇
「ここも駄目か」
通路を進んで見つかった情報端末にディビットは片っ端からアクセスしたが、AIへの接続は全て切られていた。
「この区画の端末は全滅かな」
「AIに接続できれば何とかなると思ったが、できないんじゃ俺でもどうしようもないぞ」
「他の区画に移動するか?」
「いや、他の区画でも一緒だろうな。…素直にコントロールルームに行くしかないだろ」
「そうなるか…」
「問題は、素直にコントロールルームに向かわせてもらえるかだが…」
「何か目玉のお化けみたいな奴がやって来たよ~」
アイラが指さす先を見ると、そこには直径三十センチほどの球形ロボットが数体浮かんでいた。球体の中央にカメラ、下部にスタンガンを装備したそれはステーションのセキュリティを担当するロボット兵器である。武装がスタンガンなのは、ステーション内部を破壊しないためである。
無重力ブロックでエアーを吹き出してピンボールのように動く球体ロボットは、三人に向かってきていた。
「ここからはアクションステージのようだな」
ケイイチはホルスターから拳銃を取り出すと先頭の球形ロボットに狙いを付ける。
「俺は頭脳労働専門なのだが」
ディビットも携帯端末をランドセルにしまうと、拳銃を手にした。
「来るよ~」
球形ロボットの武装であるスタンガンの射程は五メートルほどである。近寄られなければ良いわけだが、問題はその数だった。
「彼奴ら、どれだけいるんだよ」
「ステーション全体で、数千機はいたはずだが…」
「まじかよ」
広大なステーションを警備するために膨大な数のロボットが存在するのは当然である。拳銃で数機を倒したが、次々と数を増やす球形ロボットにディビットとケイイチの顔が引きつる。
「こうなったら…」
「どうするの?」
「逃げるんだよ~」
三人と一匹はロボット達と反対の方向に逃げ出した。球形ロボットはその後を追いかける。
「このままじゃ、直ぐに追いつかれるぞ」
「ああ、だから無重力ブロックを抜け出すんだよ。あの扉に入るんだ」
三人と一匹は、ディビットの指示した扉を開けて飛び込んだ。そこは無重力ブロックから重力ブロックに移動するための通路だった。球形ロボットは無重力ブロック専用のため、ここにはやってこられない。
「一旦重力ブロックに入って、そこからコントロールルームに向かうぞ」
「実は遠回りなのか?」
「仕方ないだろ」
「あたいとガオガオは地面に足が付いた方が好きだな~」
通路を進むと、次第に疑似重力が強くなり最終的には床に足を付けて歩けるようになった。
「ここからは、体力勝負だな」
ケイイチは通路のマップを見て、コントロールルームまでの距離を見て取った。
「だから、俺は頭脳労働専門だって」
ディビットはその道のりを見てうんざりとした顔をする。普通に歩いても数キロはあるのに、宇宙服を着て重力ブロックを歩くのは重労働なのだ。
「ん、それならみんなガオガオに乗っていけば良いんだよ」
「「なるほど」」
ディビットとケイイチはハモりながら手をポンと叩いた。
こうして、三人を背中に乗せたガオガオは、ステーションの通路を力強く走り出した。
多脚装甲ロボットの残骸から作り出された獅子型ロボットは、戦闘ロボットの装甲を切り裂く爪と噛みきる牙を備え、アイラと一緒であればシールドの魔法も使えることから、ディビット達の護衛に使えるだろうと一緒に打ち上げられたのだ。
そしてその役目を今十分に果たしていた。
『れーざーはあたいが防ぐから、早く中に入ってよ』
アイラとガオガオがシールドの魔法でレーザーを防ぎながら、二人に叫ぶ。
『分かった。ちょっと待ってろ』
『ディビット、急いでくれ』
ディビットは携帯端末を取り出すと、エアロックのハッチの横にあるコネクタに接続する。ハッキングツールを立ち上げるとステーションAIとの接続を行うが、
『接続不能? ハッキングを察知してAIが回路を切りやがった。いや、それなら手動で解除できるぞ。…よし、これでOKだ』
ディビットがパネルをタップすると、エアロックの外側のハッチが閉じていった。アイラは急いでガオガオと共にエアロックの中に入り、そして扉が閉まった。
エアロックに空気が充填されると、内側のハッチが開いた。
「ふぅ、危なかったぜ」
「アイラちゃんがいなかったら、死んでいたな」
ステーションに進入したディビットとケイイチは、ヘルメットのバイザーを開いて汗を拭っていた。
「あたいじゃなくて、ガオガオのおかげだよ。ありがとうねガオガオ」
アイラはガオガオの頭を撫でると、ガオガオは嬉しそうに「ガォ」と小さく鳴いて尻尾をパタパタと振る。
「さて、これからどうするんだ?」
「まずはステーションの管理AIの状態を調べないとな。とにかく情報端末を探してくれ」
「「りょーかい!」」
三人と一匹は通路を進み情報端末を探し始めたが、その様子を監視カメラが見ていたことに気付いてはいなかった。
◇
「ここも駄目か」
通路を進んで見つかった情報端末にディビットは片っ端からアクセスしたが、AIへの接続は全て切られていた。
「この区画の端末は全滅かな」
「AIに接続できれば何とかなると思ったが、できないんじゃ俺でもどうしようもないぞ」
「他の区画に移動するか?」
「いや、他の区画でも一緒だろうな。…素直にコントロールルームに行くしかないだろ」
「そうなるか…」
「問題は、素直にコントロールルームに向かわせてもらえるかだが…」
「何か目玉のお化けみたいな奴がやって来たよ~」
アイラが指さす先を見ると、そこには直径三十センチほどの球形ロボットが数体浮かんでいた。球体の中央にカメラ、下部にスタンガンを装備したそれはステーションのセキュリティを担当するロボット兵器である。武装がスタンガンなのは、ステーション内部を破壊しないためである。
無重力ブロックでエアーを吹き出してピンボールのように動く球体ロボットは、三人に向かってきていた。
「ここからはアクションステージのようだな」
ケイイチはホルスターから拳銃を取り出すと先頭の球形ロボットに狙いを付ける。
「俺は頭脳労働専門なのだが」
ディビットも携帯端末をランドセルにしまうと、拳銃を手にした。
「来るよ~」
球形ロボットの武装であるスタンガンの射程は五メートルほどである。近寄られなければ良いわけだが、問題はその数だった。
「彼奴ら、どれだけいるんだよ」
「ステーション全体で、数千機はいたはずだが…」
「まじかよ」
広大なステーションを警備するために膨大な数のロボットが存在するのは当然である。拳銃で数機を倒したが、次々と数を増やす球形ロボットにディビットとケイイチの顔が引きつる。
「こうなったら…」
「どうするの?」
「逃げるんだよ~」
三人と一匹はロボット達と反対の方向に逃げ出した。球形ロボットはその後を追いかける。
「このままじゃ、直ぐに追いつかれるぞ」
「ああ、だから無重力ブロックを抜け出すんだよ。あの扉に入るんだ」
三人と一匹は、ディビットの指示した扉を開けて飛び込んだ。そこは無重力ブロックから重力ブロックに移動するための通路だった。球形ロボットは無重力ブロック専用のため、ここにはやってこられない。
「一旦重力ブロックに入って、そこからコントロールルームに向かうぞ」
「実は遠回りなのか?」
「仕方ないだろ」
「あたいとガオガオは地面に足が付いた方が好きだな~」
通路を進むと、次第に疑似重力が強くなり最終的には床に足を付けて歩けるようになった。
「ここからは、体力勝負だな」
ケイイチは通路のマップを見て、コントロールルームまでの距離を見て取った。
「だから、俺は頭脳労働専門だって」
ディビットはその道のりを見てうんざりとした顔をする。普通に歩いても数キロはあるのに、宇宙服を着て重力ブロックを歩くのは重労働なのだ。
「ん、それならみんなガオガオに乗っていけば良いんだよ」
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