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第13話:宇宙の果て
Eパート(6)
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船外に出たアルテローゼはレッドノーム号の船首方向に向かって飛んだ。
『ディビットは攻撃されないと言っていたが、はてさて…』
念のために回避行動を取りつつ進むが、第一艦橋の辺りにたどり着いても攻撃されることはなかった。
『あっけない気もするが…まあ、問題なのはこれからだな』
アルテローゼは第一艦橋が有る部分の外壁に降り立つと、左手のキャパシターに電力をチャージし始めた。
『臨界まで、あと5,4,3,2…』
キャパシターは過剰に電力をチャージされたために赤熱化しバリバリと放電し始める。
『1,0!』
アルテローゼは真っ赤になったキャパシターの塊を外壁に向かって投げつけた。ハンマー型のキャパシターの塊は目標地点の外壁に向かって制御コードの尾を引きながら飛んでいった。
『イグニッション!』
レイフは制御コードを通じてキャパシターがショートを起こす。巨大な閃光と火球が発生してアルテローゼのカメラは遮光フィルターによって視界が暗くなる。
そして、遮光フィルターが解除され視界がクリアになると、レッドノーム号の装甲板にはアルテローゼがすっぽりと収まるぐらいの巨大な穴ができていた。
『コストパフォーマンスを考えなければ、良い爆発物なんだがな』
バッテリーとキャパシターは、本来機動兵器を動かすための動力源であり爆発させる物ではない。レイフがやった事はイレギュラーな方法であり、バッテリーとキャパシターのコスト的に割の合わない方法であった。
『おっと、さすがにこれだけ派手に攻撃すれば攻撃されるか』
レッドノーム号のあちこちからレーザー機銃の砲塔が出現し、アルテローゼに向かって照準を付けようとする。アルテローゼはスラスターを全力で噴かすと、爆発によって開いた穴に飛び込んだ。
穴に飛び込むとアルテローゼはレーザー機銃で内部構造を切り裂きながら強引に進んだ。破壊しながら進むとまるで脳みそにケーブルが突き刺さったような形状の物体が見えてきた。それがレッドノーム号の第一艦橋であった。
『これが第一艦橋か。外壁と同じとは言わないが頑丈な内壁で守られているな。手持ちの二発のミサイルでは完全破壊は…無理だな。となれば、機能を停止させるしかないか』
二発の小型のミサイルの破壊力では第一艦橋を完全に破壊することは不可能とレイフは見て取った。そこで破壊することは諦めて機能を停止させることを優先させる。
『この動力伝達ケーブルと通信ケーブルを同時に切断すれば、一時的だが第一艦橋と船体とのリンクが切れるはず…』
アルテローゼはミサイルを第一艦橋とケーブルの接続部に設置すると、第二艦橋のレイチェルとディビットに通信を入れた。
『準備は良いか? 今から十秒後に第一艦橋の機能を一時停止させるぞ!』
『大丈夫ですわ』
『いつでも良いぞ。というか早くやってくれ!』
『おう、分かった。カウントは5で開始するぞ。…5,4,3,2,1,0』
アルテローゼはミサイルに起爆信号を送り、念のためにレーザー機銃でもケーブルを狙い撃った。
『よし、目標クリアだ!』
ミサイルの爆発はレイフの狙い通りにケーブルを切断し、第一艦橋の外殻すらも破壊していた。
『よし、レッドノー号のコントロールは第二艦橋に移ったぞ。レイチェルさん、そのコンソールで外部コントロールに切り替えてください。権限の確認が出たら、火星司令部の制御コードを入れてもらえばOKです』
『ええ、今やってますわ』
『よし、これで軌道を修正できる。…軌道変更開始!』
第二艦橋では、ディビットとレイチェルによってレッドノーム号の軌道が変更が行われていた。
『ふぅ、タイムリミットまで残り一分だったか』
レイフはレッドノーム号の軌道修正に伴うGを感じながら、心の中でため息を付いて出ているはずも無い汗を拭っていた。
『そう言えば、あと一人乗組員が残っているはずだが…。まさか先ほどの爆発に巻き込まれてしまって死んでいるとかは無いだろうな?』
レイフは壊れた外殻から第一艦橋をそっと覗いたが、そこには人影はなかった。
『(逃げた…のか? いや、まて。ここにいないということは、何処かに向かったという事だ。トーゴー大佐の同類と考えると、目的は軌道変更の阻止か!』
レイフはそう考えると、
『ディビット、レイチェル。乗組員が一人、船内の何処かにいる。探し出せるか?』
第二艦橋の二人に、乗組員の探索を依頼した。
『おっ、そう言えばもう一人いたんだったな。何もアクションを起こしてこないから忘れていたぜ』
『レイフ、第一艦橋にはいなかったのですか?』
『第一艦橋はもぬけの殻だ。恐らく船の軌道変更を阻止するために行動しているはずだ。早く見つけ出して取り押さえないと何をするか分からんぞ』
『そりゃ大変だ』
ディビットは慌てて乗組員の認識票からの位置情報を照合し、船内図に表示する。
『やっこさん、この短時間で、どうやって其処まで行けたんだ?』
ディビットが驚くのも無理はなく、船内図で大男を示す光点はレッドノーム号のメインスラスター部に表示されていたのだった。
『ディビットは攻撃されないと言っていたが、はてさて…』
念のために回避行動を取りつつ進むが、第一艦橋の辺りにたどり着いても攻撃されることはなかった。
『あっけない気もするが…まあ、問題なのはこれからだな』
アルテローゼは第一艦橋が有る部分の外壁に降り立つと、左手のキャパシターに電力をチャージし始めた。
『臨界まで、あと5,4,3,2…』
キャパシターは過剰に電力をチャージされたために赤熱化しバリバリと放電し始める。
『1,0!』
アルテローゼは真っ赤になったキャパシターの塊を外壁に向かって投げつけた。ハンマー型のキャパシターの塊は目標地点の外壁に向かって制御コードの尾を引きながら飛んでいった。
『イグニッション!』
レイフは制御コードを通じてキャパシターがショートを起こす。巨大な閃光と火球が発生してアルテローゼのカメラは遮光フィルターによって視界が暗くなる。
そして、遮光フィルターが解除され視界がクリアになると、レッドノーム号の装甲板にはアルテローゼがすっぽりと収まるぐらいの巨大な穴ができていた。
『コストパフォーマンスを考えなければ、良い爆発物なんだがな』
バッテリーとキャパシターは、本来機動兵器を動かすための動力源であり爆発させる物ではない。レイフがやった事はイレギュラーな方法であり、バッテリーとキャパシターのコスト的に割の合わない方法であった。
『おっと、さすがにこれだけ派手に攻撃すれば攻撃されるか』
レッドノーム号のあちこちからレーザー機銃の砲塔が出現し、アルテローゼに向かって照準を付けようとする。アルテローゼはスラスターを全力で噴かすと、爆発によって開いた穴に飛び込んだ。
穴に飛び込むとアルテローゼはレーザー機銃で内部構造を切り裂きながら強引に進んだ。破壊しながら進むとまるで脳みそにケーブルが突き刺さったような形状の物体が見えてきた。それがレッドノーム号の第一艦橋であった。
『これが第一艦橋か。外壁と同じとは言わないが頑丈な内壁で守られているな。手持ちの二発のミサイルでは完全破壊は…無理だな。となれば、機能を停止させるしかないか』
二発の小型のミサイルの破壊力では第一艦橋を完全に破壊することは不可能とレイフは見て取った。そこで破壊することは諦めて機能を停止させることを優先させる。
『この動力伝達ケーブルと通信ケーブルを同時に切断すれば、一時的だが第一艦橋と船体とのリンクが切れるはず…』
アルテローゼはミサイルを第一艦橋とケーブルの接続部に設置すると、第二艦橋のレイチェルとディビットに通信を入れた。
『準備は良いか? 今から十秒後に第一艦橋の機能を一時停止させるぞ!』
『大丈夫ですわ』
『いつでも良いぞ。というか早くやってくれ!』
『おう、分かった。カウントは5で開始するぞ。…5,4,3,2,1,0』
アルテローゼはミサイルに起爆信号を送り、念のためにレーザー機銃でもケーブルを狙い撃った。
『よし、目標クリアだ!』
ミサイルの爆発はレイフの狙い通りにケーブルを切断し、第一艦橋の外殻すらも破壊していた。
『よし、レッドノー号のコントロールは第二艦橋に移ったぞ。レイチェルさん、そのコンソールで外部コントロールに切り替えてください。権限の確認が出たら、火星司令部の制御コードを入れてもらえばOKです』
『ええ、今やってますわ』
『よし、これで軌道を修正できる。…軌道変更開始!』
第二艦橋では、ディビットとレイチェルによってレッドノーム号の軌道が変更が行われていた。
『ふぅ、タイムリミットまで残り一分だったか』
レイフはレッドノーム号の軌道修正に伴うGを感じながら、心の中でため息を付いて出ているはずも無い汗を拭っていた。
『そう言えば、あと一人乗組員が残っているはずだが…。まさか先ほどの爆発に巻き込まれてしまって死んでいるとかは無いだろうな?』
レイフは壊れた外殻から第一艦橋をそっと覗いたが、そこには人影はなかった。
『(逃げた…のか? いや、まて。ここにいないということは、何処かに向かったという事だ。トーゴー大佐の同類と考えると、目的は軌道変更の阻止か!』
レイフはそう考えると、
『ディビット、レイチェル。乗組員が一人、船内の何処かにいる。探し出せるか?』
第二艦橋の二人に、乗組員の探索を依頼した。
『おっ、そう言えばもう一人いたんだったな。何もアクションを起こしてこないから忘れていたぜ』
『レイフ、第一艦橋にはいなかったのですか?』
『第一艦橋はもぬけの殻だ。恐らく船の軌道変更を阻止するために行動しているはずだ。早く見つけ出して取り押さえないと何をするか分からんぞ』
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