プレアデスの伝説 姫たちの建国物語

のらしろ

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第五章 プレアデス領国

第110話 フランの実兄の再訪問

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 翌朝。例によってドタバタで終わった見送りの翌日、俺たちは新たな課題に直面していた。 
 そう――「領内の整備」である。 

「守様、天使族の村づくり、そろそろ本格再開と参りましょう!」 

 ドヤ顔で言い放つのは、腕を組んでやけに自信満々なダーナ。 

「いや、待て待て。迎賓館や港の整備に人手を回してただろ? そっちが片付いてからって言ってたじゃないか」 

「迎賓館は完成しましたし、港ももう船着き場三つ分完成してます! これ以上理由をつけて逃げられませんよ!」 

「逃げてねえ!」 

「準備なら昨日の宴会で整えてくださいましたよね?」 

 横からフランがにこやかに笑ってトドメを刺してきた。 
 おい、宴会と畑仕事の準備は別ジャンルだろ! 
 ともあれ、工事再開。天使族の新村建設に加えて、森を切り開いての農場開拓が始まった。 

*** 

「はぁっ、はぁっ……倒したぞ! これで一本目だ……」 

 俺も久しぶりに体を動かす。 
 チェーンソーを使いながらでも結構体力を使うものだ。 
 汗だくで木を切り倒した瞬間――。 

「守様! 見てください、女神の加護を!」 

 領民の一人がどや顔で言い放つ。 
 女神の加護なんかじゃなく文明の利器だろうに。 
 彼の手には俺と同じチェーンソーが握られている。 
 調子に乗って、どんどん森の木を伐りだしているが、切り株の処理の方が追い付いてこない。

「ちょ、やりすぎだろおおお!?」 

「効率的ではありませんか!」 

「いや、森ごと更地になったら生態系ぶっ壊れるだろ!」 

 ドワーフたちがしきりにブルドーザーやパワーショベルを使い切り株を処理していくが、木の伐採の方がどんどん進むので、心配になって来た。

*** 

 農作業も混沌の極みだった。 
 鍬を持たせたらケリーは軍隊式の行進で畝を踏みつぶすし、エルムは種を蒔くたびに魔法で過剰成長させてトウモロコシが塔のように伸びてしまう。 

「ええい! 俺は農家じゃない! 海上警備官なんだぁああ!」 

 叫んだところで、誰も聞いちゃいない。 
 さらに収穫実習で「トマトは熟してから収穫」と言ったはずなのに、ミーシャは青いトマトを両腕いっぱいに抱えて戻ってきた。 

「にゃっはー! たくさん採れたにゃ!」 

「それ全部まだ青いだろ!」 

「でも酸味がきいて美味しいかもにゃ!」 

 その場でかじって、盛大に顔をしかめるミーシャ。俺は思わず頭を抱えた。 

*** 

 そして海岸では新事業「製塩」も始動。 
 俺が持ち込んだ――いや、神様がコピーした端末で検索した「流下式製塩法」をドワーフたちが再現したのだ。 
 が、ダートン技師長は相変わらず酔っていて、設計図の端に「塩ラーメン希望」と落書きしている。 

「誰だこんな真面目な図面にメニュー書いたやつ!」 

「わしじゃよ……」 

「認めんな!」 

 それでもなんとか小規模実験は成功し、塩ができた。 
 干物作りも始めたところ、猫族たちが大喜びで参加。 

「干物最高! これ噛むと尻尾が止まらにゃい!」 

「おまえら、もうちょっと農作業にも情熱を分けろ!」 

 だが思わぬ副産物として、干物は獣人国との貿易品にまで格上げされてしまった。港の倉庫にはすでに「魚干し場」が常設され、風向き次第で町中が魚臭くなる始末だ。 

*** 

 そんなある日。 
 フランの兄が再びやって来た。 
 前回のあの厄介な連中は同行しておらず、今回は純粋に商売だけのようだ。
 連れてきた移住者も前回とは違い、今回は農夫が多かった。 

「やあ、フランよ。それに守殿」 
 
 植民都市から、いくつかの品を受け取り、こちらからはまだ特産品が無いので、インチキだが、俺の方からワインを用意した。
 
 このワインは、フェリーのサーバーからホース直結で詰め替えるという、誰が見ても怪しい光景だが――味は一級品。 

「む……これは芳醇だ。フランよ、よき商売になるぞ」 

 兄も満足そうに樽を抱え込んでいた。 

*** 

 歓迎会は完成したばかりの迎賓館で盛大に行われた。 
 料理も酒もフェリーからの持ち込みだが、これが意外と「異国情緒がある」と好評。 

「守殿、これはまさしく異世界グルメ……!」 

「いや、異世界から来てるの俺のほうなんだけどな」 

 宴もたけなわ、話題は国際情勢に移る。 

「そういえば、例の祖国解放戦とやらは?」 

「予想通り失敗したらしい」 

 フランの兄の説明では、情報が漏れていたのか、祖国に着く前の会場で帝国の海軍の待ち伏せに会い、せっかく無理してそろえた艦隊は見事に粉砕された。 
 しかも、あの勢いだけ威勢の良かった貴族連中は待ち伏せが分かるとさっさと逃げ帰って来たのだから、何をいわんやだ。 

「だろうな……」 

 結局、失敗したおかげで植民都市も少し落ち着いたようだ。 

 今まで、勢力を持っていた積極攻勢を唱える連中が見事に無様な姿をさらしたことで、一挙に勢力を落とし、今回の艦隊を率いた貴族は街からも逃げて行ったらしい。 
 そのおかげで、現在の植民都市は、フランの兄の見込み通り相手が自滅するまで様子見で落ち着いてきているらしい。 

 兄は「いずれ落ち着いたら招待するから一度訪ねてくれ」とまで言ってくれた。 

 商売の話も進み、定期貿易も決定。 

*** 

 ただし――貿易黒字が続き、金貨ばかりがこちらに溜まることになるはずだ。 

「守様、これは喜ばしいことですわ!」 

「いや、経済のバランスが怖いんだよ! こういうのってインフレとか起きるやつだろ!?」 

「インフレ……?」 

 一同が首を傾げる。異世界に経済学を持ち込むのは、まだ早かったらしい。 
 ちなみに溜まった金貨はドワーフが「金風呂を作るのじゃ!」と提案し、フランに秒で却下された。 

「……わしの夢が」 

「却下です」 

*** 

 宴会の最後。兄が笑いながら言った。 

「妹よ、守殿。おまえたちの国造りは愉快だ。ぜひ今後ともよろしく頼む」 

 そう言い残し、兄はさっぱりと帰っていった。 

 ――そして。 

 残された俺たちは、再び農作業と漁業とドタバタの渦に放り込まれるのであった。 

「守様! 今日の作業は干物の品評会です!」 

「いや、それ作業じゃなくて宴会の口実だろ!?」 

 笑いと混乱と干物の香りに包まれ、異世界開発の日々は今日も続くのだった。 
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