18 / 38
第三章 産業創造
相良での一泊、そして技術者との出会い
しおりを挟む~相良での一泊、そして技術者との出会い~
さすがに、焼津の屋敷に帰るには距離がある。
俺は近藤に、この近くに宿はないかと尋ねた。
近藤は心得たように頷き、相良に知り合いの家があると答えた。
「相良の芝島様のご自宅に、今夜一晩お宿をお借りすることにしましょう」
移動中、近藤は芝島家について説明してくれた。
「旦那様、相良は街道筋ではありませんので、申し訳ありませんが宿というものがございません。今夜お世話になりますのは、先の男爵、つまり桜様の父親と親交の深かった鍛冶職人の娘婿の家でございます」
によると、その芝島夫妻は相良が栄えていた頃は夫婦で船大工をはじめ、技術的な仕事を何でも引き受けていたらしい。
しかし、相良の町が寂れてからは仕事がなくなり、今は細々と農家をしながら、この先の身の振り方を考えているのだという。
相良の町は、田舎というには相当寂れていた。
活気がなく、店もまばらだ。
話に聞けば、かつて大名だった桜の父親が起こした事業が失敗したこともあり、町全体が不景気の真っただ中にあるという。
(うむむ、これは俺の童貞魔法で何とかしないとな……いや、童貞は関係ないか。でも、この町の不景気、どうにかしてやるぜ!未来の知識チートがあるんだからな!)
移動は川筋の河原などを歩いての移動だったため、未舗装とはいえ道と呼べない場所を歩いての移動は、相当足にきた。
大井川を渡り、峠を越えてきた身には、さらに堪える。
それでも、芝島家への期待と、この町を何とかしたいという気持ちが俺を突き動かした。
かなり寂れた一軒の農家の前に着くと、近藤が家の中に入り、今夜の宿を頼んでくれた。
~芝島ご夫婦との出会い、そして俺の決意~
俺と近藤は、芝島ご夫婦の家へとたどり着いた。
以前は近隣の漁船などを作っていたという芝島夫婦は、奥さんの聡子さんの父親である榊原権蔵さんの娘で、夫婦そろって権蔵さんから技術者としての技量を叩き込まれていたという。
その権蔵さんというのは、桜たちが頼りにしている相良きっての技術者らしい。
話を聞く限り、佐賀藩のお抱え技術者であった田中久重と似たような、何でもこなす万能タイプの技術者らしい。
話を戻して、ご夫婦のことだが、近藤さんが言うには権蔵さんも頼りにするくらいの器用な人材らしいが、昨今の不景気で、ほとんど仕事がないと嘆いていた。
芝島ご夫婦は、突然の訪問者にもかかわらず、快く俺たちを受け入れてくれた。
貧しいながらも精一杯のもてなしをしようとしてくれる、その心遣いが温かかった。
彼らの差し出してくれたのは、普段使いの大きな茶碗に盛られた、炊きたての麦飯と、おそらく畑で採れたばかりだろう、素朴な味噌汁。
そして、小さな皿には、庭で摘んだと思しき山菜の和え物が添えられていた。
豪華な料理ではないが、一品一品に彼らの誠実な人柄と、もてなしの心が滲み出ていた。
俺は、この寂れた町を目の当たりにし、そして芝島ご夫婦のような高い技術を持つ人々が仕事にあぶれている現状を知り、強い衝動に駆られた。
「この地で事業を起こして、このあたりに住む人たちの暮らしを改善したい」
俺の中に、これまでの調査や実験とは異なる、より人間的な感情が芽生えた。
俺は単なる技術者や商社マンとしてではなく、この新世界で、自分にできることをしたいと強く願った。
(よし、決めたぞ!俺は童貞魔法で、この世界を豊かにするんだ!そして、最終的には桜も幸も、みんな俺のものに……いやいや、今は町の復興が先だ!)
一汁一菜の夕食をごちそうになりながらの会話で、俺は事業化への具体的なヒントを得た。
芝島夫婦は、かつて造船に携わっていた経験を熱く語ってくれた。
「いずれは造船業を再開して、船を作りたいんです」
俺は、彼らの情熱に触発され、自身の持つ知識を彼らに伝えた。
「鉄道が日本でも走り始めたようですが、まだまだ物流の要は船だと聞いています。特に、このあたりの河川物流は盛んだそうですね」
芝島夫婦は、俺の言葉に目を輝かせた。
「ええ、まさにその通りでございます。しかし、今の船は帆と櫓が中心でして、遠出はなかなか……」
俺の商社マンとしての勘が冴えた。
これだ!まさにこれだ!俺の『未来知識チート』が活かせる分野は!
「すぐにとはいかないかもしれませんが、エンジンさえ作れれば、ここで作れる船でもエンジンを載せるだけで十分に商売になりそうです」
芝島夫婦の顔に、希望の光が宿る。
俺は、彼らの技術と、俺の知識、そして相良で発見した油を組み合わせれば、この町を、そしてこの国の物流を大きく変えることができると確信した。
(これは、俺の童貞魔法が火を噴くぜ!いや、童貞魔法じゃなくて未来知識チートな!でも、この熱い魂は、きっと童貞魔法がなせる業だ!)
俺の新たな使命が、今、目の前に広がっていた。
焼津への帰還と油の検証、そして「魔法」の証明
翌日、焼津の屋敷に戻ると、すっかり桜と幸は打ち解けていた。
二人の間には、穏やかな友情が芽生えているようだった。
(なんだこれ、俺がいない間に、こんなに仲良くなっちまったのか!?これは『ハーレム百合ルート』確定か!?いや、それも悪くない……!)
俺たちが帰ってくると幸は桜さんと一緒に外まで俺たちを出迎えてくれた。
本当に仲良さそうにしながら、俺に駆け寄って「おかえりなさい、主任」と幸が挨拶をしてきた。
(うん、癒される。その笑顔は、まるで俺の心を直接浄化するかのようだ)
俺は二人に「ただいま」と返しながら、鞄から瓶を取り出して見せた。
「これが、相良の油ですか」
興味津々に桜が聞いてきたので、俺は丁寧に答える。
「はい、昨日私が採取したばかりのものです。匂いを嗅いだだけですが、十分に使えそうですね」
俺の答えに幸が反応する。
「使えるって、どうしてわかるのですか、主任」
「幸か。匂いだよ、匂い。嗅いでみるか」
俺はそう言って、瓶のふたを開けて幸の鼻先に持っていく。
「わ~、臭い」
「そうだよな。ガソリンのようなにおいとも取れるが、とりあえず火でも着けてみるか」
俺は、庭先で採取してきた油を小分けにして、チャッカマンの火を近づける。
「ボ!」
一瞬だが、爆発したような感じで火が付いた。
やはりガソリン成分の匂いがしていたため、ガソリンを多く含んではいるようだ。
俺は火をつける前に用心して少量の油で試したが、それでも周りにいた全員が驚きの声を上げた。
桜の目が、これ以上ないほど大きく見開かれている。
「これは……まさか、本当に燃料に!?」
桜が、興奮と期待が入り混じった声で叫んだ。
近藤も、その様子に目を見張っている。
庭師の後藤田は、まるで奇跡を見たかのように呆然と立ち尽くしていた。
(よし、これで俺の『魔法』が本物だと証明できたな!いや、『童貞魔法』じゃなくて『未来知識チート』だけどな!でも、この興奮は、まさしく魔法に匹敵するぜ!)
1
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる