社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~

のらしろ

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グラス小隊のお仕事

ピンチの補給路

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 ここしばらくは、信じられないくらい基地は平穏だった。
 基地だけでなく、サクラ自身もこれといった問題を抱えておらず、まったくもって平穏に過ごしていた。
 この基地に到着して以来のバタバタがとりあえず収まり、日常の通常業務以外の仕事は、基地の運営や各部隊の今後の活動を検討するといった緊急性のないものばかりである。
 最も心配していた帝都の皇太子府からの無理難題も、このところ全く聞こえてこず、サクラは、やっと不運から解放され、自身の運勢の向上が感じられる……と至極ご機嫌だった。
 それを見つめるマーガレットやクリリン、はたまたレイラまでもが、これは嵐の前の静けさだと冷ややかに言って憚らない。
 しかし、サクラは全く聞く耳を持っておらず、これこそが平常の状態なのだと、そもそも、たかが旅団しかも実態は連隊並みのマンパワーで、軍団並みの仕事を片づけろという方が異常だと主張する。
 いくら最前線にあるとはいっても、敵はジャングルの向こうにいる。
 どんな手品を使おうともジャングルに軍の展開はできない。
 これは帝国も了承しており、敵に対してたかが1個旅団しか当てていないのがその証拠だとサクラは考えている。
 そもそも、ここには敵のジャングル内での活動を監視する目的で軍を置いている。
 独自で活動できる単位の最少が旅団であって、その長も、たかが大佐である私が務めている。
 それほど戦局に影響があるはずがないのである。
 通常、帝国では旅団長は准将が務めるものであるが、特別の場合に大佐が務めることができるよう最低階級を大佐と規定している。
 しかし、それは、きわめて異例の場合である。
 それには理由がある。
 軍、もしくは軍団規模での作戦行動中に、将官が何らかの理由で全滅した場合、残った兵の指揮は野戦任官によって一時的に昇進させた者に執らせることでしのがなければならないが、将軍職は認証官であり、陛下より直接任命されなければならない。
 そもそも、将軍全員がいなくなるような戦場は、ほとんどの場合負け戦であって、認証手続きなどできはしない。
 野戦任官できる最高位の大佐に任命し、師団ならば旅団に分割し、各々逃げてくるのがふつうである。
 そのための大佐による旅団長である。
 今回のサクラのケースは、極めて異常ではあるが、ジャングル内では軍政も敷く必要がないのであてがわれたのだろうと考えている。
 指揮命令系統から離れた場所で、個別判断のできる最小単位が旅団であるため、サクラが今ここにいる。
 本来ならば、ある程度基地の施設を整えたうえで、配属されるのが当たり前であり、サクラ旅団長の場合は極めて異常だ。
 どこかの誰かによる嫌がらせが多分に入っていると、サクラは警戒していた。
 だから、施設が整い順当に活動している今の状態が普通なのだと、サクラは考えている。
 心の隅で、あの悪夢の再来だけは勘弁してくれと思っているのだが、そのことは気付かない振りをしている。
 それを知ってかレイラなどは、無駄なあがきだと、今後の推移に警戒している。
 そして、実に多くの場合、このような平安を壊すのは何気ない一通の知らせである。
 そして、今回もその知らせをもって、司令部に通信兵が入ってきた。
「旅団長、第3作戦軍司令部から通信が入ってきております」
「第3作戦軍??、また珍しいところから入ってきてるわね。で、何て言ってきているの?」
「はい、第3作戦軍司令部付き補給幕僚が東部正面軍司令部付き補給幕僚と連名で、うちの補給経路に関しての地理情報の開示を要求してきています。通信文はこちらになります」
「どれ、あ、本当だ。レイラ、これ、どう思う?」
「本当に変な話ね。なんで、補給経路の地理情報の開示を要求してくるのかしらね。あなたたちには、何か思うところがあるかしら?」
 マーガレットは首を横に振っていたが、クリリンはハっとして、「旅団長、これ、もしかしたら、うちの補給のからくりがばれたのでは?」
「ん??、どういうこと?」
「うちが直接ドラゴンポートに補給に行っていることがばれたのでは。完全にからくりがばれたのではなくとも、ドラゴンポートまで出向いていることに薄々勘づいたのではと思います」
「あ~、それもそうよね。最近ジャングル方面軍に補給しに行ってないから、勘づいたのかもしれないわね」
「それと、今回の情報の開示請求とはどんな関係があるのよ?」
「だから、ブル、よく聞いてね。最近、東部正面軍が大規模戦闘を始めたのは知っているわね。それに、第3作戦軍の補給ルートの大幅な変更があったばかりじゃないの。もともとドラゴンポートからの補給ルートは貧弱よ。大規模補給には向かないわ。多分、途中の道が限界になっているのじゃないかしら。連中、うちが直接ドラゴンポートに向かっていると踏んで、そのルートも使いたいんじゃないの」
「でも、そこを大規模補給に使われたら今度はうちが使えないわよ」
「一応,要請の形をとっているけれど、これ、無視できないわよ。うちが別のルートを考えなければならないわね」
「もともと、あのジャングル方面軍司令部とドラゴンポートの間のルートは、この大陸に第3作戦軍が上陸したときに開いたルートじゃないの。そんなのうちが開示しなくともちょっと調べればわかるのに、あいつらは本当にうちらに嫌がらせをしたいのかしらね。いいわ、すぐにルート情報をあちらに送って」
 マーガレットが今度は心配そうに「それでは、うちの補給はどうなります?」
「そんなこと、決まっているわ。うちは、こんな時のために大活躍するトラブルメーカーを置いているんじゃないの。あいつらに新たな補給ルートを探させますよ。どうせ、すぐに全く使えなくなるわけじゃないからね。そのくらいの時間は稼げるわ。と、いうことで遊んでいるあいつらをすぐに呼んできて頂戴」
「わかりました」と言って、クリリンは電話を取り、アプリコットに連絡を入れた。
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