社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~

のらしろ

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建国

地獄の教練  

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 まずは話し合いだ。
 俺は分けられた問題児の集まりでもある年長者のグループに近づいていった。
 集められた連中は面白くなさそうに俺を見ている。
「しばらく君たちの訓練を見るグラスだ。よろしく」
 俺が声を掛けても何も反応は無い。
 ここでの訓練が面白く無いと思っているのがありありと分かる。
「君たちがここでの訓練に思うところがあるのは知っている。君たちの軍での経験がそのように思わせるのだろう」
 ここで連中を見渡すと、さもあらんといった表情だ。
 まあ、だからこそ使えないのだが、それを全く理解していない。
 俺はサカイ大佐から連中の心を折る許可も貰っているし、早速仕込みに入ろう。
「サカイ大佐から聞いたが、君たちはあの訓練施設では全く使えなかったという話だが、思うところがあるかね。そこの君、許可するから思うところを聞かせてくれないか」
 一番手前で、多分ここでのボス格だろうと思われる人に聞いてみた。
 なかなか口を割らなかったが、何もなければそのままあの訓練に入ると言うとやっと先の男が答えた。
「帝国きっての精鋭である花園連隊の兵士と比べれば確かに我らは劣るかもしれませんが、それなら帝国軍人のほとんどが同じです。それを理由に新兵と一緒の訓練とは、我らを貶める行為でしかないと自分は考えます」
「え? 俺は新兵だと聞いたぞ。サカイ大佐が中佐当時にここに配属された新兵だと聞いたが、違ったか」
「たとえ新兵だとしても、あの精鋭である花園に入る素質の有る連中と比べるのが公平でないと思います」
 良いぞ、ますます俺の術中にはまってきた。
 先の男の反論に、ここに集まった連中は一斉に同意を示すかのように騒ぎ出している。
「オーケー、オーケー。分かった分かったよ。君たちの言いたいことは、分かった。精鋭である花園と比べられるのが嫌な訳だな」
「決して嫌というわけでは……」
「しかし、俺の見立てでは、ここジャングルで仕事をするには君たちはいささか技量が不足していると見えるのだが、その辺りどう思う」
「いえ、我々は軍に入ってから既に5年は経過しており、その間に色々な部署を回って来た者たちばかりです。ここのように下士官の少ない部署では我々の中から下士官を見つけられるのではと思う処です。決して我々は技量不足とは思えません」
 能力不足を全く自覚していないとは恐れ入る。
 確かに5年もの経歴があれば能力さえあれば下士官への登用も十分に考えられるが、それは決して彼らではない。
 こんなのに任せては全滅するのが目に見える。
 しかし、ここではっきり自分らは劣っていないと意思表明したことは上出来だ。
「よし分かった。 それならもう一度俺の前でその能力を示してほしい。ただ、君たちだけだと能力比較ができないから花園でない新兵と比べよう。あ、君たちと一緒に来た新兵でなく、俺と一緒の頃に来た新兵で、俺らがここで鍛えた者たちだ。断っておくが、花園の人たちに鍛えられたわけではないぞ。なんちゃって士官の俺が鍛えたものだから安心してほしい。 俺は彼女らと同じ能力、技能、それに体力を必要としているから比べるにはちょうどいい筈だ」
「彼女たち?」
「ああ、俺がここに配属された時に回された、全くの新兵だ。全員が女性だからと言って、問題無いだろう」
 俺は彼らをさらに煽った。
 面白い位に彼らは食いついてきた。
「花園でない新兵なんか我々と比べるのだけでもおかしいと思いますよ。彼女たちが自信を失わないといいですが」
 そこまで言えるだけでも立派だ。
「なら、訓練施設に向かおうか」
 俺は彼らを連れて訓練施設に向かった。
 ここは本当に久しぶりになる。
 俺の知らないうちにどんどん施設が拡充しており、川に浸かった状態からの射撃訓練や、いろんな体勢からの射撃ができるようにまで成っている。
「久しぶりに来たけど、ここってかなり変化していますね」
 俺は訓練を見守っていたサカイ大佐に声を掛けた。
「ああ、お前が作ったものに、俺らが色々と工夫を施していったんだ。おやっさんの部下たちも面白いように協力的でさ。前にお前のところにいた連中がきちんと自分らの体を使って検査しているから本当によくできているよ」
「え~、あいつら工兵になってもきちんと訓練続けていたんだ」
「ああ、前と変わらないようにとおやっさんから訓練を義務付けられているよ。ああ、そのおかげでここの工兵全員が訓練するようになったかな。どちらにしても良い傾向だと思うよ。して、今日は……」
 俺は顔であいつらの方を示した。
「ああ、早速やるんだ。お手並みを拝見しても良いかな」
「見て気持ちの良いものではありませんが、それでも良ければ。あ、来たようですね」
 アプリコットに頼んで、前に俺のところにいた新兵をシバ大尉から借りて来た。
 俺を見つけた新兵たちは口々に俺に文句を言ってきた。
「隊長のところで面白いことすると聞いたから引き受けたのに、またこれをやるんですか」
「私たち工兵に、何でガチ装備までさせてこれをするんですか。これの実証実験はもう済んでいますよ」
 などなど好き勝手に言ってくる。
「まあまあ、今度来る時にサリーちゃんの焼いたクッキーをお土産に持ってくるから、それでかんべんな」
「え~、今日は無いの」
「ああ、俺も何をやらされるか聞いていなかったしな。それよりも先に先輩たちに自己紹介をしてくれ」
 俺は新兵に自己紹介をしてもらった。
 それを聞いていたあの連中は顔をにやけさせたり、馬鹿にするなと言った感じの表情をしている。
「では、先に君たちが見本を見せてくれ。決して手を抜くなよ。全力でな。手を抜いていたらおやっさんに言いつけるからな」
「ええ。ただでさえガチで重いのに」
「分かりましたよ。その代わりクッキーを忘れないでくださいね」
 そう言い残すと彼女たち全員が走り出して訓練を始めた。
 とにかく慣れたもので、速い者はあっという間に帰ってきた。
 流石に川に入るコースだけはさせていないが、遅い者もそれほど時間を掛けずに帰ってきた。
 それを見ていた連中は信じられないものを見たといった表情に変わる。
「さて、次は君たちの番だ。最初は何も装備しないで良いよ。ここは誰でも最初は装備なしでするんだ。慣れたら装備を増やして訓練していく。あの子たちのようにまで成ればやっとジャングルに出せる。そこまでにはすぐになって欲しい」
「「え?!」」
 彼らは全員が一人の例外も無く顔を引きつらせている。
「ああ、分かっているよ。どんなに精強な兵士でも慣れていないとできないから、そこは大丈夫だ。普通の兵士なら装備なしではできるレベルにある。彼女たちも半分は最初から踏破できたしな。さあ、始めてくれ」
 俺の掛け声で、一人、また一人と諦めた兵士から訓練施設に向かっていく。
 まあ俺の予想通りほとんどの兵士が高壁で挫折した。
 2m強の壁をよじ登る奴だ。
 その後に平均台やらなにやらあるがほとんどが使われずに終わった。
「最初はできなくとも2回目なら大丈夫だろう。あの子たちも4回目で全員が踏破できたぞ。下士官を目指す君らにはそれ以上の成果を望んでいるし、頑張ってほしい」
 その後何度も彼らに挑戦させた。
 徐々に諦め始めるやつも出始めて来る。
 なにせ5年もまともに訓練をしてこなかった連中だ。
 新兵ならがむしゃらに頑張れるのだが、彼らはプライドが邪魔してそれもでき無い。
 舐めた状態ならこうなるのは自明の理だ。
 ここからが勝負だ。
 俺は、前の職場で培ったモンスタークレーマーの真似を始める。
 もうそばで聞いていると気分が悪くなるような罵詈雑言を徐々に始めた。
 最初は嫌味から始めた。
「あれほど大きなことを言っていたのに新兵に劣るとはどういうことかな」
「彼女らは精鋭では無い兵士、いや、兵士ですらないぞ。彼女たちは工兵だからな」
 まあ、テレビで見た海兵隊の訓練のような罵詈雑言になるまでさほどの時間を要しなかった。
 ここまで来れば後はサカイ大佐にも任せられる。
 注意事項として、とにかく彼らの存在から否定することから始めれば言うことを聞くから、その後は訓練させて、ある一定のレベルになったら優しく褒めればいい。
 そうすれば完全に上官に素直に従う兵士の出来上がり。
 これで、俺の役目は一応の目途を見た。


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