9 / 28
イルミネーション
しおりを挟む
「きれい……」
窓の外を見下ろしながら、彼女は呟いた。
眼下では、暗闇の中をいくつもの灯りが瞬いている。
「君の美しさには敵わないさ」
そう言いながら、男は両手に持った二つのグラスの、片方を彼女に手渡した。
グラスにはまるで血のように真っ赤な液体が注がれている。
「ふうん、その言葉、今まで何人の女に向けて言ったのかしら」
彼女は悪戯っぽい微笑みを男に向けた。
「もちろん、今君に向けて言ったのが初めてだよ」
男は彼女の肩に手を回し、耳元に囁きかける。
「ふふふ、冗談よ。あなたがそんなに器用じゃないことは分かってる」
彼女はそう答えると、手にしたグラスを掲げた。
「彼らに」
「そして僕たちふたりの未来に」
彼女と男が手にしたグラスを軽く合わせると、まるで天国の鐘のような音が鳴り響いた。
窓の外、青い星の夜側では、絶え間なく灯りが瞬いている。そのひとつひとつの輝きで、幾百、いや幾千もの命が消えていく……そんな灯りである。
「思いのほか簡単だったわね」
グラスにひと口つけて、彼女は言った。
「ああ、僕らが手を下すまでもなかった」
男は目の前にグラスを掲げ、赤い液体越しにその惑星を眺めながら、
「愚かで下劣な先住生物は、勝手に自ら滅んでくれる。ここを見つけた僕たちの大手柄さ」
と続けた。
「そうね。彼らがひとりもいなくなったら、この美しい地球はわたしたちが使わせてもらいましょう」
移住先の惑星を探し、長い旅を続けてきた二人は、もう一度乾杯してから母星への報告を行った。
〈了〉
窓の外を見下ろしながら、彼女は呟いた。
眼下では、暗闇の中をいくつもの灯りが瞬いている。
「君の美しさには敵わないさ」
そう言いながら、男は両手に持った二つのグラスの、片方を彼女に手渡した。
グラスにはまるで血のように真っ赤な液体が注がれている。
「ふうん、その言葉、今まで何人の女に向けて言ったのかしら」
彼女は悪戯っぽい微笑みを男に向けた。
「もちろん、今君に向けて言ったのが初めてだよ」
男は彼女の肩に手を回し、耳元に囁きかける。
「ふふふ、冗談よ。あなたがそんなに器用じゃないことは分かってる」
彼女はそう答えると、手にしたグラスを掲げた。
「彼らに」
「そして僕たちふたりの未来に」
彼女と男が手にしたグラスを軽く合わせると、まるで天国の鐘のような音が鳴り響いた。
窓の外、青い星の夜側では、絶え間なく灯りが瞬いている。そのひとつひとつの輝きで、幾百、いや幾千もの命が消えていく……そんな灯りである。
「思いのほか簡単だったわね」
グラスにひと口つけて、彼女は言った。
「ああ、僕らが手を下すまでもなかった」
男は目の前にグラスを掲げ、赤い液体越しにその惑星を眺めながら、
「愚かで下劣な先住生物は、勝手に自ら滅んでくれる。ここを見つけた僕たちの大手柄さ」
と続けた。
「そうね。彼らがひとりもいなくなったら、この美しい地球はわたしたちが使わせてもらいましょう」
移住先の惑星を探し、長い旅を続けてきた二人は、もう一度乾杯してから母星への報告を行った。
〈了〉
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる